2022-07-25 19:00

清原和博が野球人としてもっとも輝いていた時代を読む~プロ野球死亡遊戯があえて“令和の夏”に書きたかった話(著/中溝康隆)

7月21日発売『キヨハラに会いたくて 限りなく透明に近いライオンズブルー』(白夜書房)より
7月21日発売『キヨハラに会いたくて 限りなく透明に近いライオンズブルー』(白夜書房)より

やっぱり、清原和博の魅力は明るくやんちゃな弟気質とアイドル性だと思うんだよ。86年の開幕第2戦目にプロ初アーチを放つと、走りながらジャンプして右手でVサインを作り掲げて大喜び。かと思えばドラフトで巨人に指名されず涙、2年目の日本シリーズで巨人を倒す寸前にまた涙。飾りじゃないのよ涙はなんつって、これほど笑顔と涙が似合うプロ野球選手は見たことがない。しかめっ面の番長になる前のそんな痩身で八重歯のキヨマーが大好きだった。

だから何かと世界中で気が滅入るニュースが多い今こそ、明るく元気でクレイジーな「ライオンズの清原和博」を徹底的に書きたくなったんだ。逮捕前後のこと、追われるように去った巨人時代のこと、そして桑田真澄との“KKコンビ”で甲子園を沸かせたPL学園時代のこと。それらはよくメディアで取り上げられるが、意外なことに1986年から1996年の10年間(11シーズン)在籍した、若獅子時代のキヨマーは昭和と平成の狭間に埋もれている気がする。野茂英雄やイチローが出現する前、集客に苦戦する各球場にファンを呼び、世の中の注目をパ・リーグに向けさせた功労者は、間違いなく最強西武の4番バッターだ。

80年代後半、ブラウン管の向こう側にいる背番号3は切ないくらいにキラキラしていた。当時のテレビ埼玉では夕方5時から全日本プロレス再放送、6時から西武戦中継が始まる。親父はまだ仕事から帰っていないし、兄や姉は部活で遅い。その時間だけは小学生の自分がテレビを独占できた。ワクワクしながら青くる背番号3を眺めていると、台所からは母ちゃんが作る夕食の香りが漂ってくる。やった今夜はハンバーグだ。あっキヨマーがまたホームラン打ったぞ。うぉーなんて綺麗な放物線なんだろう。世界のすべてがクリアで、澄んでいた。

ちきしょう、泣きそうだ。俺は王将の餃子と洗体エステでなんとか生き長らえる40代のおっさんになったが、あの風景は輝ける少年時代の象徴のような風景として心のずっと奥の方に刻まれている。変則ギア付きのチャリンコで気の向くままに走り続け、草野球のゴムボールをみんなで追いかけ、駄菓子屋前の自販機で同じクラスの美少女アヤちゃんに一口貰ったファンタの青リンゴ味が異様に美味くて、それ以来青リンゴゼリー系の匂いを嗅ぐ度に小学五年生の夏に戻っちまう。

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