『証言TIF~アイドル戦国時代とはなんだったのか~』第4回:元風男塾・喜屋武ちあき×虎南有香、男装アイドルの先駆けが語る生き残り方「差別化を図っていく中で、男装がおもしろいんじゃないかって」

2010年、品川ステラボールで第1回が開催され、今ではアイドルシーンに欠かせない一大興行にまで成長した『TOKYO IDOL FESTIVAL』(通称TIF)。そのムーブメントの渦中にいたアイドルたちの証言をもとに、TIFがアイドルシーンに与えた影響について迫っていこうと思う今連載の第4回に登場するのは、当時のシーンで確実に異彩を放っていたグループ「風男塾」(元「腐男塾」)から喜屋武ちあきと虎南有香。男装アイドルの先駆けとなった彼女たちにとっての“戦国時代”を語った『BUBKA11月号』のインタビューを一部抜粋してお届けする。
男装アイドル黎明期
──2010年のTIFをきっかけにアイドル戦国時代前後のことを語っていただくという企画になります。
虎南有香:大変申し訳ないんですけど……つい昨日、取材のために振り返っていたら、じつは別の仕事で赤園虎次郎が初回のTIFに出てないことが判明して。記憶を辿ってたら、なぜか自分も出た気になってました(笑)。
喜屋武ちあき:何回も参加させていただいて記憶が混ざっちゃうんだよね。
虎南有香:でも、ステラボールのあの坂を一緒に駆け抜けたよね、みたいなことは記憶にあるんですよ。だからほかの仕事の合間に一瞬来たのかどうか。その記憶も曖昧で。
喜屋武ちあき:あの坂道を駆け降りる経験はそんなにないはずだよ。もうだいぶ前のことなので、もはや誰も正しい記憶を持っていないという前提で進めていただけると助かります(笑)。2010年のTIFの記憶で言うと、当時は中野腐女シスターズと腐男塾が同時に活動していて、“風”じゃなくてまだ“腐”の表記でした。初めに豪華な紹介VTRが流れて、『フーフー724』という自己紹介ソングでステージに出ていった記憶があります。
虎南有香:風男塾は当時、事務所がバラバラで、それぞれがほかのお仕事がある状態での活動だったので、誰かがいないという状況が多々あったんですよね。
──そもそもの出発点は、ライブ中心の活動をしていくわけではなかったんですよね?
虎南有香:アイドルグループとして歌を歌っていくという集まりではなかったです。私は中野腐女子シスターズの番組が始まった後に入ったので 、厳密に言うと初期メンではないんですけど、もともといたメンバーはオタクを集めてバラエティ番組をやると言われて集まっているんですよ。
喜屋武ちあき:最初は『はなわレコード“中野腐女子シスターズ”』というはなわさんのバラエティ番組からスタートして、オタクの子が集められたんです。最初は10人くらいいたんですが数ヶ月で4人になって、そこに虎南ちゃんとスザンヌが入ってきて、この形でCDデビューを目指しますと言われました。
虎南有香:ちょうどAKBさんが秋葉原の劇場で奮闘している時期で、じゃあこちらはサブカルの地である中野を拠点にしましょうというというのが始まりでした。
喜屋武ちあき:でも、番組自体はちょっとふざけてた印象だよね。
虎南有香:はなわさんが芸人なのでコントが中心でした。誰もゴリゴリにライブをしていく未来は描いてなかった。
喜屋武ちあき:歌やダンスの未経験者が多くて、私なんかは自信がなさすぎて最初はステージに立つのが苦痛でした(笑)。沼袋SANCTUARYで『腐女らNight Live』という公開収録イベントをやっていた時代、お客さんは20人もいなかったと思うんですが、目を見ることができないのでお客さんの少し上の柱を凝視して歌ってました。
虎南有香:オリジナル曲もないからアニソンを歌ったりとかね。
喜屋武ちあき:虎南ちゃんはもともとユニット活動をしていたので歌もダンスも上手で。貴重な存在なのでありがたかったです。
虎南有香:最初のお客さんはメンバーのグラビアのお仕事のファンの方も多かったから、お互いぎこちない時期があったよね。
喜屋武ちあき:その場にいるほぼ全員、ライブでのノリ方がわからなかったんだよね(笑)。公開収録でもコントをやって、歌は最後のほうに何曲かという感じでした。
虎南有香:でも、楽曲が作れるはなわさんの番組ということもあって、スタッフさんとしてはちゃんと音楽をやっていくビジョンがあったんだと思います。
喜屋武ちあき:『腐女らNight Live』はその後、渋谷のduoやO‐EASTなどでもやるようになっていきました。
──ほどなくして腐男塾がスタートし、中野腐女シスターズと並行して活動していくことになります。
虎南有香:最初はコントの一環で男装グループ(中野腐男子ブラザーズ。寸劇『腐ぞろいの林檎たち外伝 中野腐男子学園腐男塾』内のグループとして誕生)をやり始めたんですよね。その流れで、定期ライブでちょっと歌ってみようかとなって。実は自分たちも男の子がメインになると思ってやっていませんでした。ファンの方もはじめは、たまにやる茶番かな?くらいに考えていたと思います。
喜屋武ちあき:ただ、やっていくうちに男装おもしろいじゃん!という空気が漂いはじめて、女子より男子の出番が増えていきました。
虎南有香:もしかしたらアイドルシーンが盛り上がっていくにつれて、自分たちの色が必要になってきたのかな。どのグループもコンセプトをしっかり持っていたじゃないですか。そこで差別化を図っていくというところで男装がおもしろいんじゃないかとなったんですよね。
──群雄割拠の時代において差別化を図った結果だったんですね。いまでこそいろんな形のアイドルグループがありますが、自分は当時、見方がわからなかったんです。
虎南 そうだと思います!
喜屋武ちあき:私たちもわからずやっていたので(笑)。
虎南有香:少しずつ女の子のファンが増えてはいったんですけど、TIFとかのアイドルフェスのなかに自分たちが出ても誰も見に来てくれないんじゃないかという不安はありました。
喜屋武ちあき:TIFが始まった2010年は中野腐女シスターズも活動していた頃だったのでよかったけど、腐男塾だけになっても出てていいの?と。ただ、TIFが毎年開催されて、毎年呼んでいただくなかで、男だからできるノリがあることにも気づいていきました。フィナーレでアイドルが集まるステージがありましたよね。
──一時期は定番になってましたね。
喜屋武ちあき:あのステージは毎年、風男塾みんな張り切っていたと思います(笑)。特に『睡蓮花』を歌うのが楽しかった。
虎南有香:ファンの方と男同士のうぉーみたいな熱いノリを共有できるんですよ。それを考えると中野風女シスターズは当時の10代のアイドルと比べるとちょっと違うかな、というのもあったんだと思います。
──いまでは考えられないですけど、20代になるとおばさんイジリみたいなのもありましたし。
虎南有香:いまの自分が客観的に見ると、風男塾のほうがユニークでおもしろいなと思うんですよね。風男塾のメッセージ性の強い楽曲に共感してくださる男性のファンの方も多かったですし。ただ女性アイドルのフェスでの需要を考えると新しく推し変してくれる人もそんなにいないのではとは思っていて。そういう意味では変に力は入ってなかったですし、みなさんをライバルだと思ってなかったんです。
喜屋武ちあき:なのでそういう現場では女性アイドルの皆さんにキャーって言ってもらえることに燃えてました。
虎南有香:確かに、ファンの方よりアイドルの方たちにモテてたかも(笑)。それで、握手会に来てくれた他のグループのファンの方に「おれの推しにちょっかいかけてよー(笑)」とか「誰々ちゃんと仲良くしてくれてありがとう」とか言ってもらったりしたよね。
喜屋武ちあき:TIFにくるアイドルファンのみなさんが、ありがたいことに男性同士の仲間みたいなていで接してくれたんだよね。
虎南有香:女性アイドルさんが実在する男性が好きというのはやっぱり言いづらいじゃないですか。でも、相手が風男塾なら好きと言えるという(笑)。色々なアイドルさんが名前を挙げてくれていたので、TIFではそういう広がり方もあったのかもしれないです。
──なるほど! シーンにおけるスタンスの確立方法が独自すぎますね(笑)。
喜屋武ちあき:2010年に『アイドルちん』という番組でももクロちゃんとフィーリングカップルみたいなのをやったよね。桃太郎はあーりん(佐々木彩夏)とマッチングした。
虎南有香:あったあった。あーりんはまだ中学生だった気がする。腐男塾は女性を口説く、という企画によく使っていただいてましたね。
取材・文/南波一海
喜屋武ちあきプロフィール
きゃん・ちあき|1984年3月13日生まれ、埼玉県出身。2003年芸能デビュー。アニメなどを愛するオタクタレントとして認知される。「風男塾」では武器屋桃太郎として活動し、卒業後は、司会業やヨガインストラクターなどマルチタレントとして活躍中。
虎南有香プロフィール
こなん・ゆか|1989年7月10日生まれ、北海道出身。2001年に歌手・ティーンモデルとしてデビュー。風男塾の「赤園虎次郎」として活動しながら、NHK教育テレビMCやお天気お姉さん、仮面ライダーフォーゼなど幅広く出演。現在は2児の母としてフリーランスで活動中。










