2023-09-04 18:00

田村潔司「解析UWF」第12回…前田日明が主宰するリングスに移籍

1997年1月22日、日本武道館で開催されたメガバトルトーナメント決勝での田村潔司vsヴォルク・ハン
1997年1月22日、日本武道館で開催されたメガバトルトーナメント決勝での田村潔司vsヴォルク・ハン
写真提供=平工幸雄

1996年、リングスに緊急移籍を決めた田村潔司。デビュー戦となるディック・フライ戦に勝利しデビューを飾った田村であったが、そんなリングスで田村を待ち受けていたのは今までのUWFのスタイルとは全く異なる海外勢の進撃だった。リングス前田日明が受け継いだ猪木イズムに思いを馳せる世紀末。

1996年6月、ボクは5年間在籍したUWFインターナショナル(Uインター)を離れ、前田日明さんが主宰するリングスに移籍した。

Uインター時代、じつはリングスの試合を観る機会はあまりなかった。リングスはUWF系で唯一WOWOWの月一回放送があったけれど、うちは当時WOWOWに契約していなかったのでテレビでも観る機会がなく。藤原組やパンクラスは、新生UWF時代に近い存在だった船木さん、鈴木みのるさん、冨宅(飛駈)たちがいたのでカッキー(垣原賢人)と一緒に何度か会場まで観に行ったけれど、リングスはそういった“知り合い”がいなかったので、専らプロレス専門誌を通じて情報を仕入れる程度。

だから、リングスがどんな試合をしているのか詳しくは知らず、Uインターとそれほど変わらないだろうと思っていたのだけれど、いざ、実際に試合をしてみると、Uインターとリングスは同じU系ではあるけれど、似て非なるものだと感じた。

いちばんの大きな違いは「プロレス」をベースにしているかどうかの違いではないかと思う。Uインターは新生UWFの多くの日本人選手がそのまま参加していたし、外国人選手も従来のプロレスを経験している人がほとんどだった。だからゲーリー・オブライトにしてもダン・スバーンにしても、もちろんベイダーにしても、プロレスとはなんぞや、プロとはなんぞやが分かっている人たちが、UWFの格闘技スタイルのルールで闘っているのがUインターのリング。

一方でリングスは、前田さんがたったひとりで始めたので、プロレス経験者は前田さんただひとり。日本人選手はリングスでデビューした数人で、その他は、オランダ、ロシア、グルジア(ジョージア)といった国のキックボクサーやサンボ、コマンドサンボ、柔道、レスリングなど、さまざまなジャンルの格闘家たちだった。

つまり同じUの格闘スタイルをやっていながら、プロレス(プロフェッショナルレスリング)をベースとしたUインターと、世界各国さまざまな格闘家が集まったリングスとでは、アプローチのベクトルがまったく逆なのだ。

その違いは「興行論」に現れる。通常、プロレスでもっとも大事なのは、興行を成功させること。だから時には自己犠牲が必要にもなってくる。メインイベンターにはメインイベンターの役割があり、中堅には中堅の、前座には前座の役割がある。それぞれが役割をまっとうし、メインイベントに向かって興行を盛り上げていき、最後は実力もカリスマ性も兼ね揃えたメインイベンターがしっかりと締めて、観客を満足させて帰らせる。髙田さんという絶対的なエースを中心に、Uインターはそれができていたと思う。そういった意味でUインターは、選手それぞれが自分の役割をはたしてひとつの興行を作り上げる「団体」だった。

一方でリングスは「団体」という感覚は希薄で、みんなで共有する「場」という感覚だ。興行を成功させるためにそれぞれが役割をはたすというより、その場で誰が輝くかを競っていた印象がある。しかも、さまざまな国から選手が集まっているので、選手個人のエゴだけでなく、時には国と国とのメンツをかけて感情がぶつかり合うので、何か常に殺伐としていた。

Uインターにはしっかりとした「格」があった。その格によって、選手それぞれ別の役割がある。ただし、その格は自分の実力次第で上げていくこともできるし、下がってしまうこともある。大相撲の「番付」に似ているかもしれない。

それに対して格がない世界がリングス。言い方は悪いけれど、“サル山”に似ていた。サル山にもボス猿から下っ端まで序列が存在するけれど、それは誰かが決めたわけではなく、力でわからせて、力で従わせなきゃいけない世界。

だからボクはUインターでは最後の頃、何度かメインイベントを任されていたので、エースの髙田さんが横綱だとしたら、大関ぐらいの番付になっていたと思う。でも、Uインター時代の番付はリングスでは通用しない。自分がその地位になるためには、力で従わせなければいけない。そう痛感させられたのが、リングス移籍第2戦目のウィリー・ピータース戦(96年7月16日、大阪府立体育会館)だった。

取材・文=堀江ガンツ

――まだまだ続くインタビューは、発売中の「BUBKA10月号コラムパック」で!

田村潔司=たむら・きよし|1969年12月17日生まれ、岡山県出身。1988年に第2次UWFに入団。翌年の鈴木実(現・みのる)戦でデビュー。その後UWFインターナショナルに移籍し、95年にはK-1のリングに上がり、パトリック・スミスと対戦。96年にはリングスに移籍し、02年にはPRIDEに参戦するなど、総合格闘技で活躍した「孤高の天才」。現在は新団体GLEATのエクゼクティブディレクターを務めている。

BUBKA(ブブカ) コラムパック 2023年10月号 [雑誌] Kindle版
Amazonで購入

Twitterでシェア

MAGAZINE&BOOKS

BUBKA2025年5月号

BUBKA 2025年5月号

BUBKA RANKING11:30更新

  1. SKE48荒井優希、3度目の防衛成功「ここで満足せずにもっと高みを目指す」
  2. SKE48荒井優希、シングルで初のベルト獲得「何回もぺちゃんこになっちゃった」
  3. SKE48荒井優希「プロレス界でももっと1番を狙っていけるように」渡辺未詩とのタッグで勝利を収める
  4. 浅田真央「愛を忘れないように指導していきたい」コーチとして今後の夢も語る
  5. すべての球団は消耗品である「#10 1981年の近藤中日編」byプロ野球死亡遊戯
  6. 武藤敬司、プロレスの神様に愛されて
  7. SKE48荒井優希、山下実優選手とのシングルマッチ!試合に集中しメンバーの存在は「すっかり忘れていました」
  8. すべての球団は消耗品である「#15 1958年の加藤近鉄編」byプロ野球死亡遊戯
  9. 田村潔司「解析UWF」第11回…Uの復権を信じ進む若き戦士たちの覚悟
  10. 『SASUKEアイドル予選会2025』開催決定!公式YouTubeで出場者発表へ
  1. 乃木坂46池田瑛紗、異次元のスタイルに「細すぎ&ビジュ最高!」「本当に実在するのか……」の声
  2. 日向坂46松田好花、彼女感溢れるショットに「かわいすぎて、もう…」「冬のこのちゃん最高」と反響続々
  3. 卒業迫る乃木坂46 久保史緒里、透明感あふれるグラビアショット
  4. AKB48花田藍衣「指原莉乃さんと仲良くなりました!」意外な特技も明かす
  5. =LOVEツアーファイナル公演、来年横浜スタジアムで開催決定
  6. AKB48佐藤綺星、1st写真集発売決定「楽しくて夢のような時間を過ごせた」水着やランジェリー撮影にも挑戦
  7. 志田音々、溺愛する妹・志田こはくとのほのぼのエピソードを披露「妹の“残り香”が…」
  8. 日向坂46 松田好花を襲った悲劇!「ビリビリビリってなって、パァーンってなって、バーンってなってミチーッ!」肉じゃがを作ろうと思っただけなのに━━
  9. 櫻坂46・浅井恋乃未『週プレ』登場…力強い視線が印象的
  10. 乃木坂46梅澤美波、“強さ、やさしさ、美しさ”あふれるグラビアショット

関連記事