2025-05-14 18:30

【追悼・永島勝司】週刊ゴング元編集長・金沢克彦が語る「“伝説の仕掛け人”の暗躍と北朝鮮」(前編)

「週刊ゴング」元編集長の金沢克彦
撮影/編集部

金正日との密談

――それで長州ー永島ラインという一癖も二癖もあるところに入っていけた、と。そして北方領土でのプロレスは実現しなかったけれど、実際に新日本というか猪木さんが実現させたのが、95年に行われた北朝鮮での「平和の祭典」だったわけですよね。

金沢:そうですね。永島さんはあれをやるために、猪木さんと一緒に何度も北朝鮮に行ったみたいですよ。そこはもう猪木さんとガッチリでした。一方で、現場監督の長州さんは「(猪木)会長が勝手にやってること」みたいな感じで、ハッキリ言えば「いい迷惑だ」という感じだったと思うんですよ。あの開催費用は全部新日本からの持ち出しですからね。あれで莫大な借金を背負って、同年の新日本vsUWFインターナショナルの対抗戦の収益で全部返したので。

――猪木さんからしたら、借金とか関係なく歴史に残ることを行うことが重要だったんでしょうね。

金沢:普通なら実現不可能なことですからね。だから北朝鮮に関しては永島さんからも面白い話をたくさん聞きましたよ。たとえばあの時期の北朝鮮って、94年に金日成が亡くなって金正日が事実上の最高指導者になっていたけれど、まだ喪に服していて金正日はまったく表に出ていなかったんですよ。そんな状況下で何度も交渉のために北朝鮮を訪れて、猪木さんと永島さんが金日成の記念館みたいなとこに招かれた時、猪木さんだけ「別の部屋に来ていただけませんか」と言われて奥の部屋に入っていったらしいんです。それで猪木さんがしばらくしたら戻ってきたんですけど、「何話したの?」って聞いても猪木さんは何も言わなかったと。永島さんが言うには、おそらくそこで猪木さんは金正日と会ったんだろうと。でも、会ったことは多分口止めされていた。

――状況からすると、おそらくそうだろうと。

金沢:北朝鮮による拉致被害者問題が叫ばれるようになったのはその数年後で、当時の小泉純一郎首相が訪朝したのは02年なので猪木さんが「平和の祭典」をやった7年もあと。だから、よくこじ開けたと思いますよね。あれは猪木さんの力と、やっぱり力道山という存在あってのことでしょう。母国の英雄ですからね。

――「平和の祭典」では、金沢さんも平壌まで取材に行かれたんですよね?

金沢:行きました。貴重な経験をさせてもらいましたよ。

――滞在中、北朝鮮に監視されてるような感じはあったんですか?

金沢:モロにありましたね。選手も我々マスコミも平壌の高麗ホテルっていう一番いいホテルだったんですよ。小泉元首相が金正日と会談した場所もそこですから。

――じゃあ、ホントに平壌の最高級ホテルですね。

金沢:一番いいホテルではありましたけど、部屋の中は全部盗聴されてましたね。

――盗聴はどうして気付いたんですか?

金沢:「平和の祭典」は2日間ありましたけど、大谷晋二郎が初日のフライング・スコーピオ戦で鼻骨骨折して病院に行ったんですよ。鼻骨骨折を治す時って鼻の穴に鉄の棒を突っ込まれてかなりキツいらしいんですけど、とくに北朝鮮の病院だから大谷選手も警戒して、本当はその日の晩は入院するはずが強引にホテルに戻ってきたんです。それで相部屋の永田(裕志)選手に「いやあ、酷い目に遭ったよ。あんなに痛い治療初めてだった」とか愚痴ったら即、部屋に電話がかかってきて「何かあの病院の治療で問題がありましたか?」って言われたらしいんです。

――うわー、なんで知ってるんだと(笑)。

金沢:それで盗聴されてるんだとわかって、たとえ部屋の中であっても不用意なことは言えなくなりましたね。あとは必ず1グループ一人、北朝鮮人のガイド役が付くんですよ。その人たちはもちろん日本語が話せて、僕ら外国人は勝手に一人で外出しちゃいけないって言われました。

取材・文=堀江ガンツ

金沢克彦プロフィール

1961年北海道生まれ。青山学院大学卒業後、1986年新大阪新聞社に入社、「週刊ファイト」記者となる。1989年、日本スポーツ出版社に入社し「週刊ゴング」編集部入り。新日本プロレス担当記者として頭角を現し、1999年「週刊ゴング」編集長に就任。2005年に同社を退社後は、プロレス番組の解説や各種媒体への寄稿などで活躍。著書に『子殺し 猪木と新日本プロレスの10年戦争』(宝島SUGOI文庫)、『元・新日本プロレス』(宝島社)ほか。

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