2025-03-03 18:30

神取忍×玉袋筋太郎「幻の長与千種戦」の真相とは!?

玉袋筋太郎と神取忍の対談を開催
玉袋筋太郎と神取忍の対談を開催
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書籍『玉袋筋太郎の極悪全女列伝』の発売を記念して、玉袋筋太郎と神取忍の対談を開催。還暦を迎えてなお、勢いのままに活躍を続ける神取が『極悪女王』のその後を振り返り、血気とスリルに包まれた一時代の熱狂を語りました。

拉致事件の真相

――デビュー前から「ダンプは片手で10秒で倒せる」とか言ってましたもんね(笑)。

神取忍 それでいきなりヒール扱いだから(笑)。

玉袋筋太郎 “極悪女王”より、もっと悪いヒールじゃねえかって(笑)。でも、ドラマの中でも「本物が出てきた」っていう雰囲気が出てたよね。それまではベビーフェイスに対するヒールだったのが、全女全体を敵に回す外敵が現れたっていうかさ。

――そんな神取さんが、結局いちばん長く女子プロレスをやってるっていうのも不思議ですよね(笑)。

玉袋筋太郎 そうなんだよ。誰よりも女子プロレスが好きだったんじゃねえかって(笑)。

神取忍 本当はそうなのよ(笑)。

玉袋筋太郎 武藤敬司も引退したことだし、「プロレスLOVE」を名乗ったほうがいい(笑)。

神取忍 だからね、当時はみんな「プロレスが大好きです」って入ってきた。それはもちろんいいんだけど、「中には入ってから変わる人間もいるんだぜ」ってことを教えてあげたいよね。私の場合、外から見ているときにはわからなかったけど、中に入ってみてからプロレスの深さってもんがわかった。だから30年も40年もやってるわけだから。何事も実際に入ってみないとわからないのよ。だから、とにかく興味のあるものは入れよ、って言いたいね。

玉袋筋太郎 ジャパン女子に入門した時、全女のことはどう見ていたんですか?

神取忍 私の場合、ライバル視するとかそういうんじゃなくて、「もう1個団体があるんだったら闘えばいいじゃん」っていう素人的な考えだった。

玉袋筋太郎 それが実現したら、ファンとしてはいちばん面白いんだけどね。業界的なしがらみはもちろんあるんだろうけど、神取さんは「やっちまえばいいじゃねえか」っていう。

神取忍 無知だったらこそ言えたのかもしれないけど。いま考えたらまだ1年目の新人で、よくやってたよね。

玉袋筋太郎 青いというか、怖いもの知らずというか。当時は怖いものなんかなかったんじゃないですか?

神取忍 なかったかもしれない。でも、当時も今も怪談とかお化けは嫌い(笑)。

玉袋筋太郎 ダハハハハ! 怖いもの知らずだけど、お化けは怖い(笑)。

神取忍 それはずっと変わらないね(笑)。

玉袋筋太郎 神取忍攻略法は、お化け屋敷の中に特設リングを作ればいいんだな。

神取忍 それだったら絶対もうアウトだね(笑)。

玉袋筋太郎 怖いもの知らずの神取忍が唯一怖いのがお化けっていうのが最高だよ(笑)。でも、プロレスの世界に入っていろんな怖い目にもあってるわけじゃないですか。興行関係の怖い人にさらわれたり。

神取忍 いや、あれはさらわれたんじゃなくて、さらわれ「そう」になったの。さらわれる一歩手前(笑)。

玉袋筋太郎 拉致監禁未遂(笑)。普通、女子プロレスラーで「触られた」っていう人はいるけど、「さらわれそうになった」人はなかなかいないよ。あれはジャッキーさんとの“セメントマッチ”の時でしたっけ?

神取忍 そう。ジャッキーさんと試合した時って、ジャッキーさんの後援会長の主催興行だったの。で、当時の興行関係者って、ちょっとそっち方面の人もいたでしょ?

玉袋筋太郎 あの時代はそうですよね。

神取忍 それで、社長の大好きなジャッキーさんがあんな感じでやられちゃたんで、「ふざけんなこの野郎!」ってなったんだよね。

玉袋筋太郎 そういう状況でやっちゃう神取さんがすごいよ(笑)。

神取忍 それで試合後、「おまえ、こっちこい!」って控室とは別の部屋に連れて行かれたんだけど、その人たちが一瞬いなくなった時、ジャパン女子のスタッフが「こっちです」って呼んでくれて、すぐに車を出してくれて、そのまま会場を後にすることができたの。

玉袋筋太郎 命からがら脱出だよ(笑)。

神取忍 あと30秒遅かったらヤバかったね。どうなってたんだろう。

玉袋筋太郎 やっべえ。その後はどこかに身を隠したんですか?

神取忍 どうだったかな? 身を隠したことは何回かあるから(笑)。

玉袋筋太郎 何回もあるのがすごいよ(笑)。

神取忍 あの時はジャッキーさんがケガをして、その後の試合も出られなくなって欠場の挨拶をしているから、とにかくお前も謝れって。何度かそういう話し合いがあったんだけど、当時は私もすごく生意気だったから、「はい、すいませんでしたー」みたいな(笑)。

玉袋筋太郎 それは火に油を注いでるよ!(笑) でも、自分は悪いことしたわけじゃないっていう気持ちもあったわけですか。

神取忍 そうなの。だって、あの試合が「やるか、やられるか」みたいな試合になったのは、事前にお互い了承済みで、会社も認めた上でのことだったから。会社を無視して個人的な感情だけでやったのなら言われても仕方がないけど。

幻の長与千種戦

玉袋筋太郎 ジャッキーさんとはお互い正々堂々とケンカして、会社もそれを認めていた、と。

神取忍 そう。会社も「それでお互いがスッキリするならやればいい」ってことだったから。その結果、最後のアームロックでジャッキーさんがヒジか何かをケガして、ジャッキーさんに対して申し訳なかったけど、それは試合の中のことだから。自分が一方的に悪いように言われるのが納得いかなくて。その後も面倒なことがいろいろあったんで、もう嫌になってアメリカに逃げちゃったのよ。嫌なことがありすぎて、プロレス自体「もう、や~めた」って感じになってたんだけど、そんな時に作家の井田(真木子)さんがなんだかんだで電話くれて、いろいろ言ってくれたの。

――『プロレス少女伝説』を書いた井田真木子さんが。

玉袋筋太郎 あれ、大宅賞獲ったんだよな。名著だよ!

神取忍 帰国したあとも、井田さんが『デラックスプロレス』っていう雑誌で、取材にかこつけていろんな話をしてくれて、うまく引き止めてくれたの。だから、私は井田さんに救われた。井田さんがいなかったら、私はとっくに辞めてたと思う。

玉袋筋太郎 いい話だよ!

神取忍 だからある意味、命の恩人みたいなところがある。

玉袋筋太郎 プロレスラー神取忍の選手生命を文字通り救ってくれたわけですもんね。

神取忍 そうそう。で、井田さんとの対話の中で、「女子プロレスは対抗戦をやらないと、このまま廃れていく」みたいな話になって。それで、長与千種戦っていうのが、持ち上がったんだよね。

玉袋筋太郎 井田さんを中心として、『デラックス・プロレス』誌上で神取さんと長与さんの往復書簡みたいになったわけですよね。

神取忍 そんなこともあったよね。自分はもともと全日本女子っていう盛り上がってる団体があるんだから、新しい団体はそこに乗っかって、対抗戦でやればいいじゃんって思ってたし。長与は長与で、何か新しい刺激的なことをやりたがっていたような話だったと思うんだけど。

玉袋筋太郎 でも、お互いの会社には反対されたわけでしょ?

神取忍 そうなんだよね。こっちからしたらジャッキーさんの件もあるし、会社には嫌気がさしてたから、フリー宣言して「全女に行く」って言ったんだけど、世の中そんなに甘くなかった。大人の社会で契約が残ってるだとか、ああでもないこうでもないって話になって。全女のほうも「向こうの団体の許可をもらってこい」みたいな感じで。

玉袋筋太郎 まあ、そうなりますよね。

――でも、実力行使で全女の大田区体育館に乗り込んだことがありましたよね?

神取忍 行ったんだけど、あの時はもう弁護士さんに間に入っててもらってて。よくある話なんだけど、「場外フェンスの外からアピールするなら問題ありません。でも、場外フェンスの中に入ったらアウトです」みたいに言われてたのよ。

玉袋筋太郎 場外フェンスの中に入ったらもう契約違反。「またぐなよ!」ってことですね(笑)。

神取忍 そう。場外フェンスの外から言うのなら、お客が野次飛ばしてるのと一緒だから大丈夫ってことだったんだけどね。

玉袋筋太郎 そうなったらそうなったで、悪質な客だってことでつまみ出されたりしてね(笑)。

神取忍 結局、そんなこんなでなかなか話が進まないうちにトーンダウンしていっちゃったんだよね。

玉袋筋太郎 でも、もったいねえな~。あの時、神取忍vs長与千種が実現してたら、相当ヒートしたぜ。見たかったよな~。

――当時は全女経営者の松永兄弟が、神取さんの価値をわかってなかったし、対抗戦がどれだけ盛り上がるかもわかってなかったんでしょうね。だからその6年後くらいに神取vs北斗晶が実現して、あれだけすごい話題になったとき、長与さんがいちばん悔しい思いをしてたんじゃないか、と。

神取忍 あの時は私も「ほらね、対抗戦やれば盛り上がるじゃん」「あの時もやっときゃよかったんじゃん」って言ったから。

玉袋筋太郎 神取忍っていう劇薬を投入すれば、そりゃ盛り上がるよ。「混ぜるな危険」がいちばんおもしろいんだから。

神取忍 私は常にそんな感じなんだよね。

玉袋筋太郎 だから神取さんのプロレスラー人生を聞いてるとね、昔の股旅物を彷彿とさせてくれるんだよ。腕の立つ渡世人が、行く先々で腕を買われて敵を倒していくようなね。普通はどっかの組に草鞋を脱いだりするんだけど、そこには留まらず三度笠を被って一人旅立つようなさ。

神取忍 それでどこまでも行くようなね(笑)。

玉袋筋太郎 その渡世人稼業を続けながら還暦だもんなあ。今後のことはどう考えてますか?

神取忍 還暦っていうのは、暦で言うと人生一回転して、これからまた新たな人生のスタートになるわけじゃない。そこで自分が考えているのは、東京ドームシティホールのイベントタイトルでもあるんだけど、「人生もう一度、これからも真っ向勝負」ってことなんだよね。

玉袋筋太郎 最高だよ! 暦の2回転目も真っ向勝負。この漢っぷりに痺れるんだよな。今の世の中、こんな漢なかなかいないよ!

神取忍 不器用な生き方かもしれないけど、この生き方はもう変えられないからさ(笑)。これからも、これまでどおり真っ向勝負していくしかないよね。

玉袋筋太郎 いやあ、最高。では、『神取忍還暦祭』大成功お祈りしてます!

文・構成=堀江ガンツ

神取忍プロフィール

神取忍=かんどり しのぶ|1964年11月3日、神奈川県生まれ。15歳で柔道を始め、全日本選手権3連覇、世界選手権3位などの実績を持つ。1986年にジャパン女子プロレスに入団し、同年8月17日、ジャッキー佐藤戦でデビュー。その後フリーを経て、風間ルミらとともにLLPWを設立。現在もプロレスラーとして活躍し、LLPW-Xの代表取締役も務めている。

玉袋筋太郎プロフィール

玉袋筋太郎=たまぶくろ すじたろう|1967年6月22日、東京都生まれ。高校卒業後、ビートたけしに弟子入りし、1987年に水道橋博士と「浅草キッド」を結成。テレビ、ラジオなどのメディアや著書の執筆など幅広く活躍中。スナックをこよなく愛し、社団法人全日本スナック連盟会長も務める。

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