「SASUKEアイドル予選会」特別インタビュー|番組プロデューサーが明かす、「SASUKE×アイドル」の化学反応

(提供写真)
単なるスポーツイベントにとどまらず、いまやテレビ業界のキャスティングをも動かす“登竜門”になりつつある「SASUKEアイドル予選会」。立ち上げ人であるプロデューサー・竹中優介氏が、誕生の舞台裏から本イベントの未来像について語る。
今までにないアイドル現場
――SASUKEアイドル予選会も3回目を迎えましたが、そもそもどのようにして始まったんですか?
竹中優介(以下、竹中):僕とアイドルのドキュメンタリーを作っているディレクターがいまして、彼が『SASUKE』のディレクターでもあるんです。その彼から、「アイドルでオーディションロケみたいな企画はできないか」と相談がありました。彼のイメージは『SASUKE』のトライアウトだったんです。緑山で腕立てを一斉にやったりして、勝ち残った参加者が『SASUKE』への出場権を得る、と。それがトライアウトですね。そこで僕は、「それをやるなら、ファンの人の前でやろう」とアレンジを提案しました。僕は、AKB48グループの運動会の制作をしていたことがあったので、アイドルがファンの人の熱量によって奇跡を起こせることを体感していたんですね。そこで、『SASUKE』チームと僕らのイベント制作チームがコラボして2024年に生まれたのが、SASUKEアイドル予選会です。
――今回の反響はいかがでしたか?
竹中:1、2回目の反響も大きかったですし、生配信を解禁した3回目はもっと大きかったですね。それに、予選会の数日後に放送された『オールスター感謝祭』で昨年の予選会に出場してくれた坂下真心(NMB48)さんが赤坂5丁目ミニマラソンで優勝したように、予選会がメディア業界のキャスティングの登竜門のような役割になってきました。これは僕らとしても予想外の出来事でした。他局のスタッフに聞くと、予選会を見て、その番組のキャスティングが動いたりしているようなんです。『SASUKE』総合演出の乾(雅人)とも話すんですけど、予選会って『SASUKE』を盛り上げてくれる仲間を発掘したいというのがそもそもの前提なんですね。ただ運動ができる人を集めたスポーツ大会ではないんです。僕たちは原石に出会いたい。それでいうと、岩本理瑚(僕が見たかった青空)さんと出会えたのは、現時点で最大の奇跡でした。
――第1回の予選会では総合6位に終わったものの敢闘賞を獲得し、本戦に出場しました。
竹中:みんなが釘付けになりましたからね。予選会が終わった瞬間、番組スタッフからの提案で「あの子を引っ張ろう」となりました。それは、彼女の運動神経がいいだけじゃなくて、ひた向きさ、ドラマ性、そういったこと込みでした。
――彼女は他局の番組にも呼ばれるようになりましたね。
竹中:テレビ的な言い方になってしまいますが、彼女には“撮れ高”があるんです。成功しても失敗しても。『SASUKE』というコンテンツをあれだけ体現できるのはすごいことです。でも、それは他のアイドルにだって可能性はあります。僕がアイドルさんと仕事をしていて感じるのは、全員に光が当たるわけではないということです。そこで以前企画したのが「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」であり、乃木坂46のアンダーのドキュメンタリーです。別の側面からきっかけを掴む場になってほしいんです。岩本さんがきっかけを掴んで、羽ばたいてくれたのは本当に嬉しいことですね。
――今回の予選会の人選はどのように決まりましたか?
竹中:今回は新たな挑戦として、あえて初挑戦の新しいアイドルの割合を増やしました。同じメンバーばかり集めていると、同じような戦いになってしまいますから、意図的に3分の2は新顔にしました。入れなかった方には申し訳なく思っています。坂下さんなんか特にそうですね。
――そんな中、今年も12人が出場しました。
竹中:去年の2位の2人(清司麗菜=NGT48、大信田美月=≒JOY)はまず呼びたいと思っていました。そして、白石まゆみ(SWEET STEADY)さんや風見和香(私立恵比寿中学)さんはグループとしての活躍度が高いこともありお声がけしました。あとは、いろんな事務所さんに呼びかけて、「新しい人を発掘したいです」と提案させていただきました。
――売り込みもあるんじゃないですか?
竹中:あります。Pixel Ribbonの葉山雫さん、22/7の南伊織さんはそうでした。これまでと違う色味のグループが出たらどうなるかを試してみたかった。fav meの川岸瑠那さんは、「事務所の社長に出場を直談判している」という噂を聞きまして、それでこちらからお願いしました。キャスティングの顔ぶれを見てファンの方には、「なんであの子が出てないんだ」と疑問に感じることもあると思うんですけど、スケジュールがNGだったりするケースなども多いので、それぞれに事情があることもご理解ください。
――今年の覇者は清司さんでしたが、大会全体をどうご覧になりましたか?
竹中:いろんな競技でいろんな人に見せ場を作ってほしいと考えて、種目を設定しました。でも、予選会では新種目となるスポンジブリッジであそこまで進むとは想定していませんでした。『SASUKE』のスタッフも驚いていましたから。
――清司さんは30枚中24枚、南さんは29枚でした。
竹中:それだけじゃなく、清司さんは苦手な競技を克服してきましたよね。テイルインポッシブルでは最終レースまで残ったのがポイント的に大きかった。その前で負けていたら10ポイント足りずに優勝を逃しているんです。執念で苦手を乗り越えたのでしょう。『SASUKE』スタッフにもその思いは伝わっています。ひた向きに懸けている人ならではの顔をしていましたよね。清司さんってアイドル活動を10年以上している人です。自分の思いや行動で未来を変えられる。そんなことを示したわけで、ベテランのアイドルたちの勇気になったと思います。あるインタビューで彼女はこんなことを語ってくれました。「アイドルの先の夢についても考えないといけない。そのためには元BGT48という肩書以外の武器がほしい。だから『SASUKE』の本戦に出たいんです」って。彼女は「歌唱力No.1決定戦」でも優勝しています(2023年開催のユニット戦)。自分の努力で道を切り開いているところが面白い存在です。そり立つ壁のボタンを押した瞬間のガッツポーズは今大会最高の名場面でした。あれはアスリートが記録を出した時のリアクションですよね。あの瞬間って他のグループのファンの皆さんも一斉に喜んでいるんですよ。あれが『SASUKE』です。みんなで応援するんですよね。そして、応援がアイドルの力になるんです。
――他に印象的だったことは?
竹中:先ほども少し話しましたが、年々アイドルの皆さんの身体能力が上がっていて、調整が難しくなってきたことです。これくらいのスピードやパワーだろうと想定するんですけど、それを超えているんです。『SASUKE』スタッフも「日本のアイドルはすごい」と驚いていました。でも、難しくしすぎると誰もクリアできなくなってしまいます。そのあたりのバランスが難しいところです。そして、女性アイドル界において、この予選会がすごく意味のある場所になってきたなとも感じました。清司さんと同じくらいの熱量を感じたのは大信田さんと風見さんでした。でも、本人が目指していた100%の力を発揮できていないようにも見えました。不完全燃焼だったと思います。ただ、それも『SASUKE』なんです。
――そり立つ壁で苦戦していた白石さんを見た清司さんがアドバイスを送るために駆け寄った場面がありましたが、それもまた『SASUKE』っぽかったです。
竹中:そうですよね。実は、『SASUKE』の選手たちも白石さんを応援していたんです。それは、競技を通して結果が出せない悔しさを知っているからだと思います。それでも諦めず挑戦する姿が『SASUKE』なんです。
――かと思えば、AKB48の秋山由奈さんのように初挑戦で3位になるアイドルもいて。
竹中:そうでしたね。この予選会をきっかけに『SASUKE』にハマってくれたみたいです。アイドル性も魅力的ですし、体力のポテンシャルもあります。適性はあると思いますね。総合的な身体能力が高くて。こうしてSASUKEを愛してくれるアイドルが増えていくことは僕らとしても嬉しい限りです。予選会での姿を見て、『SASUKE』チームのアイドルの見方が大きく変わりました。これだけ真摯に競技に対して取り組むのかという点と、もうひとつは声を枯らして応援するファンの皆さんを目の当たりにして、「アイドルとファンの関係ってすごいね」となっているんです。アイドル文化を知らなかった人たちにとっては新鮮に映ったんですよね。
――最後にお聞きしたいのは、パワーフォースに関してです。今年は拮抗した展開がなく、パワーと持久力ではなく、スピードで決着がついていました。ロープの長さが去年と違ったのではないかという疑問がSNS上でもかなり上がっていました。
竹中:セットを組む際にシミュレーションをしています。それで長さや強度を設定します。僕もそのシミュレーションには参加していますが、今回は僕らの想定が少しずれていました。
――ということは、去年のパワーフォースのセットをそのまま使っているわけではない、と。
竹中:セットは毎回組み直します。そのため現場で組んだ後にスポーツが得意な同世代の女性に毎回シミュレーションしてもらうんですけど、その想定すら超えてきました。僕らが読み切れていなかったですね。難度の設定は毎回悩ましいところでして……。本当に紙一重なんです。ただ、全員が同じ条件で参加しているということはご理解ください。
――来年以降はどうなりそうですか?
竹中:もちろん開催する方向で考えています。今年は会場に1600人、配信で数千人の方が観てくださいました。皆さんが拡散してくださったことで、さらに反響が大きいものになりました。このイベントに伸びしろを感じましたし、『SASUKE』とアイドルという2つの文化をつなぐイベントを続けていきたいと考えています。ファンの皆さんと一緒に育てていくイベントにしましょう。
取材・文/犬飼華
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竹中優介プロフィール
たけなか・ゆうすけ 1977年6月18日生まれ、東京都出身。TBSテレビプロデューサー。これまで『輝く!日本レコード大賞』『アッコにおまかせ!』に携わるほか、SKE48、日向坂46のドキュメンタリー映画を監督。現在は『SASUKE』やCS放送『乃木坂お試し中』『Spicy Sessions』、「エガフェス」や『VIVANT』のファンイベントなどの制作・演出も手掛ける。
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