2025-05-14 18:30

【追悼・永島勝司】週刊ゴング元編集長・金沢克彦が語る「“伝説の仕掛け人”の暗躍と北朝鮮」(前編)

「週刊ゴング」元編集長の金沢克彦
撮影/編集部

今年2月、新日本プロレスの取締役を務めた永島勝司が亡くなった。“平成の仕掛け人”としてアントニオ猪木とともに新日の一時代を築いた永島の訃報を受け、BUBKAでは「週刊ゴング」元編集長で、新日本プロレス担当記者の金沢克彦にロングインタビューを敢行。猪木の片腕として活躍した永島勝司の裏話を秘話たっぷりでお届けする。

幻の北方領土計画

――今回はプロレス界で“平成の仕掛け人”と呼ばれた、元・新日本プロレスの取締役・渉外企画宣伝部長で、伝説のズンドコ団体WJプロレスの専務取締役でもあった“永島オヤジ”こと永島勝司さんの追悼企画なんですよ。

金沢克彦(以下、金沢):BUBKAで永島さんの企画をやるっていうのがすごいですね(笑)。

――でも、長州力ー永島勝司体制だった90年代の新日本やWJの話は、BUBKAでプロレス記事を読む読者には、まさに「ど真ん中」だと思いますから(笑)。そしてもちろん、当時『週刊ゴング』の新日本担当記者で、99年から編集長になった金沢さんとも関わりが深いわけですよね。

金沢:でも僕がゴングに入る前、86年に『週刊ファイト』の新人記者になった時、永島さんはちょうどプロレスから離れてたんですよ。もう東スポを辞めていて、Jリーグ正式発足前のプロサッカーに関わってて。

――永島さんって、サッカーに関わってたんですか!?

金沢:そうなんですよ。だから当時の読売クラブの選手ですかね。多摩川グランドで新日本との合同練習みたいなのを仕掛けていて、僕はそれを取材しているんです。その時、「この人が元・東スポの永島さんか」と思った憶えがありますから。

――そうだったんですね。

金沢:それで永島さんは、東スポ記者時代から猪木さんとウマが合ったこともあって88年に新日本に入社して、89年からは長州さんが現場を仕切り始めたんですけど、その辺りからすでに長州さんの右腕的存在でした。そして猪木さんとの関係も続いていたので、新日本のオーナーである猪木さんと社長の坂口征二さん、現場監督の長州さんの間を行き来する緩衝材のような役割をはたしていた気がしますね。

――金沢さんがゴングの新日本担当になったのはいつからですか?

金沢:ファイトからゴングに移って91年早々ですね。その時、前任の新日本担当記者から引き継ぎのような形で、京王プラザホテルで永島さんを紹介されて。その時の印象は「これは面倒くさいオヤジだな」っていうのが雰囲気で伝わってきたんですよ(笑)。

――一筋縄じゃいかないタヌキ親父だぞ、と(笑)。

金沢:でも、この人を攻略しないことには記事になるようなネタはつかめないわけですよ。長州さんは先々の仕掛けやアングル的なことを記者に教えるなんてことはまずないですから。それで僕は永島さんに食い込んでいって、早々にスクープとして表紙を取ったのが「新日本の北方領土進出」だったんです。

―― 新日本の北方領土進出なんて計画があったんですか!?

金沢:じつは北朝鮮より先に北方領土で猪木さんが「平和の祭典」を開催するという計画があったんです。当時、新日本はロシアとのパイプがあったじゃないですか?

―― サルマン・ハシミコフらソ連のレスラーが新日本に参戦したり、89年の大晦日にはモスクワで大会を開催してましたもんね。

金沢:そうなんですよ。その流れで北方領土でのプロレスが計画されていて、それが僕が永島ラインから取った最初のスクープだったんです。で、ゴングの表紙でドカンと猪木さんの写真を載せて、中の記事では新日本の主力プラス、外国人でバンバン・ビガロ他トップどころが参戦するとかね。そしてプロレスの試合だけじゃなく食の祭典や日本文化の紹介なんかもやるっていう北方領土での「平和の祭典」の全体的な計画も載せて、スクープだったんですけど、結局ポシャっちゃったという。

――誤報というわけではなく、実際に進んでいた話だけど結果的に実現しなかった、と。

金沢:だから結果的に実現はしませんでしたけど、表紙やトップ記事になるスクープを早い段階で取れたので、「なんとかこの人を攻略できたな」という手応えはありましたね。

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