2022-04-05 11:00

なんてったってキヨハラ第20回「最後の対決」

そんなライバルを横目にエース道を突き進んだのが巨人の背番号18だ。桑田真澄はまさに投手として絶頂期を迎えていた。マウンド上でなにやらつぶやく“念仏投球”は、ピンチの時にはわざと長くボールに語りかけ打者をイラつかせる熟練の域に到達し、雑誌『現代』では「僕は映画が好きだから、マウンド上で毎試合、自分の映画を作るんです。自分は監督であり主役なんです」なんつってファンだというジャッキー・チェン譲りの映画論も披露。あの落合博満をして「桑田はプロ根性が座っている」といわしめ、以前は「アーチストのように繊細すぎるところがある」と18番を評した長嶋監督も「今年の桑田はひと味違いますよ。去年までと比べて、連敗を止める何か“パワー”を感じますね。マウンドでのあの形相、あれは迫力がありますよ」なんて絶賛した。移籍1年目の落合が緊急ミーティングで「おまえら、何を慌てているんだ。まだそんな時期じゃないよ。どっしり構えて試合をやろうぜ。オレが中日にいた時、おまえらが一番怖かったんだから」とナインを鼓舞するも、貧打に悩まされたチームは残り5試合で中日に並ばれ、最終戦に敵地での同率優勝決定戦へ。

その決戦前夜、名古屋の宿舎で桑田は長嶋監督の部屋に呼び出され、「明日は痺れるところで行く」とどこで投げるかまったく意味不明な指示を出されたあげく、さらに電話が鳴り「ああ、ケンちゃん!」なんて会話を始めるミスター。受話器を置くと、ハイテンションでエースにこう問いかける。「ケンちゃんだよ、ケンちゃん! 判るだろ?」と。いやケンちゃんって誰やねん。洗濯屋のケンちゃん……のわけがないだろう。それでも「志村……けんさんですか?」なんつって1秒も笑えないマスミギャグを絞り出す18番。するとミスターは驚いたようにかぶりを振り、「ケンちゃんって言ったら高倉の健ちゃんだろう!」とシャウトした。そんな平成球史に残る“ケンちゃん問答”を経て、桑田は翌日の“10・8決戦”で槙原寛己、斎藤雅樹との三本柱リレーのラストを託され胴上げ投手になるわけだ。

――記事の続きは、発売中の「BUBKA5月号」で!

中溝康隆=なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)|1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。主な著書に『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『ボス、俺を使ってくれないか?』(白泉社)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)、『令和の巨人軍』『現役引退―プロ野球名選手「最後の1年」』(新潮新書)などがある。

BUBKA (ブブカ) 2022年 5月号
▼Amazonで購入

BUBKA 2022年 5月号増刊 =LOVE 佐々木舞香Ver.
▼Amazonで購入

Twitterでシェア

MAGAZINE&BOOKS

BUBKA2025年5月号

BUBKA 2025年5月号

BUBKA RANKING17:30更新

  1. シンガーソングライター吉澤嘉代子「『日記』は、(小林)歌穂ちゃんに宛てた手紙をプレゼントしようと思って書いたんです」<私立恵比寿中学の音楽のすべて>
  2. 選抜の噛ませ犬じゃない!乃木坂46最新アンダーライブ極私的過剰考察「私、アンダーメンバーの味方です」
  3. 船木誠勝「ガチンコでやれば八百長って言われなくなる 単純にそう思ってましたね」【UWF】
  4. 「ひらがなけやき」から日向坂46へ、約10年のルーツが詰まった「ひな誕祭」にOG大集結!長濱ねるの「心残り」を晴らした横浜の空
  5. 乃木坂46、3期生の絆「今が一番の思い出」過去から現在そして未来へ
  6. ヒャダイン的サ道探求記「狂い焚きサウナロード」本八幡レインボーで見えた虹の架け橋
  7. 吉田豪「What’s 豪ing on」Vol.7 ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)、届ける努力を惜しまなければきっと届く
  8. 宮戸優光「前田さんとの関係が、第三者の焚きつけのようなかたちで壊されてしまったのは、悲しいことですよ」【UWF】
  9. なんてったってキヨハラ第20回「最後の対決」
  10. 天龍源一郎がレジェンドレスラーについて語る!ミスタープロレス交龍録 第47回「高山善廣」
  1. 乃木坂46中西アルノ、情感豊かなグラビアショット!創刊10周年記念『BRODY10月号』表紙を飾る
  2. 「やっぱライブでしょ!」中西アルノのアイドル哲学むなしく赤字&倒産……乃木坂46の「血統と伝統」を背負うエース級プレイヤーもプロデュース業にはスイッチできず
  3. 『Kohmi EXPO 2025』開催記念、広瀬香美×フィロソフィーのダンス・奥津マリリ&日向ハルインタビュー|“ロマンスの神様”のSNS投稿をきっかけに、共演するまでに至った二組による愛と尊敬の音楽トーク
  4. 日向坂46芸人のレインボー・ジャンボたかお、「伝説のOG」齊藤京子に猛アタックするも、スイッチの押し間違いで撃沈!「月」と「虹」が踊れずじまいのMidnightに
  5. 人気アイドルが猛暑も吹き飛ぶ清涼感ある浴衣姿を披露「カワイ過ぎ!」「日本の宝」「似合ってます」
  6. 乃木坂46 13th YEAR BIRTHDAY LIVE、中西アルノ「今のこの乃木坂が絶対最強!」
  7. ラフ×ラフ吉村萌南、活動休止を報告「またみんなと活動できることを楽しみに頑張ってきます」
  8. 【櫻坂46・5th TOUR 2025 “Addiction”】 松田里奈「日本中のみんなが、知らない人がいないくらい大きなグループになりたいです」
  9. 乃木坂46中西アルノ、満身創痍のバスラ翌日に焼肉屋で同期の労いサプライズを受けて涙の“塩”カルビ!? 夢は「後輩と松屋で優雅に朝定食」
  10. 櫻坂46藤吉夏鈴が提案する企画内容に一同騒然…森田ひかる「イヤですよね~(笑)」

関連記事