2023-04-04 06:10

田村潔司「解析UWF」第7回…『新日本プロレスvsUWFインターナショナル全面戦争』

1995年10・9東京ドーム、世紀の一戦となった武藤敬司と髙田延彦の試合
1995年10・9東京ドーム、世紀の一戦となった武藤敬司と髙田延彦の試合
写真提供=平工幸雄

2月21日、武藤敬司が約38年にわたる現役生活に幕を下ろした。東京ドームには3万人超の大観衆が集まり、レジェンドの引退に多くのファンが惜しみない声援を送った。そしてかつて同じ東京ドームの地で、武藤と相対したのがUインターのトップであった髙田延彦だ。新日、Uインターの両団体による激闘に多くのプロレスファンが熱狂したあの日の歴史的一戦を、田村はどう見るか。

UWFの歴史を語る上では欠かせない

2月21日に東京ドームで、武藤敬司さんが現役を引退された。ボク自身は武藤さんと関わることはなかったけれど、UWFの歴史を語る上では欠かせない人だと思っている。

1995年の10・9東京ドーム「新日本プロレスvsUWFインターナショナル全面戦争」のメインイベント、「大将戦」として行われた武藤さんと髙田延彦さんの一戦。この試合の結果が、Uインターという団体の運命を決定づけ、その後のUWF系の多くの選手に影響を与えることとなったからだ。

そもそも新日本とUインターの対抗戦の結果がそれだけ大きな影響を与えた要因は、もともと両団体の間には数々の因縁がある犬猿の仲であり、直接対決が実現することなどありえないと思われていたからだったと思う。

91年5月に誕生したUインターは、旗揚げ当初からリングスやプロフェッショナルレスリング藤原組といった他のU系団体以上に新日本を意識していたところがあった。それは団体の舵取りを任されていた宮戸優光さんがUインターをトップの団体にするべく、業界最大手の新日本を仮想敵に設定していたことが大きい。

ボクら若手は、同じプロレス界でもUWFと新日本は“別物”として捉えていたところがあったけれど、会社の運営側としては新日本に追いつけ追い越せという気持ちがあったんだと思う。そのため、いくつかの局面でUインターは新日本に対して対戦を迫っていた。

92年10月、当時WCW(アメリカのメジャー団体)が認定するNWA世界ヘビー級王者となった蝶野正洋さんがプロレス雑誌のインタビューで「髙田さんと闘ってみたい」と発言すると、宮戸さん、安生洋二さん、フロントの鈴木健さんが、Uインターの顧問だったルー・テーズさんとともにマスコミを引き連れて、新日本の事務所に対戦要望書を持ってアポなし訪問した。当時、髙田さんはテーズさんゆかりのチャンピオンベルトを腰に巻くプロレスリング世界ヘビー級王者だったので、蝶野さんの要望通り王者対決をやろうじゃないか、ということだ。

この時は、実際に交渉の席についたものの条件面で物別れに終わり、双方の団体が交渉内容を公開し非難し合い確執だけが残る結果となった。

その後は冷戦状態が続いていたが、1994年に遺恨が再燃する。Uインターが優勝賞金1億円を用意した『プロレスリング・ワールド・トーナメント』(通称・1億円トーナメント)開催をぶち上げ、新日本、全日本、WAR、リングス、パンクラスという主要5団体のエースに対し、事前交渉なしにマスコミに公開のもと参戦招待状を送りトーナメント参戦を迫った際、ほとんどの団体が黙殺か丁重なお断りの返事をしていたのに対し、新日本だけはUインターのやり方を強い口調で非難した。

新日本の現場監督だった長州さんの口から「プロレス界の恥さらしだ。あいつらがくたばったら、墓に糞ぶっかけてやる!」という有名な言葉が飛び出したのもこの時だ。

この長州さんの過激な発言は、団体間の抗争を煽るようなものではなく、いわば“ガチ”の発言。裏を返せば、長州さんにとってもUインターという団体は目の上のたんこぶのようなもので、意識せざるを得ない状況だったと思う。「本当に関わりたくないが、目障りで消えてほしい」そんな感じだったのではないだろうか。

この1億円トーナメントでの一件で、新日本とUインターの亀裂は決定的なものになったように思われた。しかし運命のいたずらか、この1年後、両団体はそれぞれ財政的な問題を抱えたことで急接近することになる。

大きなスポンサーが付いていなかったUインターは、94年12月に安生さんがヒクソン・グレイシーに対しての道場破りに失敗したあたりから観客動員が激減したことで経営難に陥り、新日本も、95年4月28、29日に北朝鮮の平壌で開催した『平和の祭典』で多額の負債を抱えていたため、双方ともに大きな収益が上がるビッグマッチを早急に必要としていた。

それまで険悪な関係だった新日本とUインターが突如として急接近したのは、そんな背に腹はかえられぬ事情があったのだ。

新日本とUインターの団体対抗戦は、95年8月24日、長州さんと髙田さんという両団体代表によるマスコミを前にした電話会談で電撃決定した。

この電話会談の前に両団体が裏でどんな交渉をしていたのか、ボクは交渉の当事者ではないのでわからないが、あれだけリアルにいがみ合っていた新日本とUインターが、ケンカ腰の姿勢のままぶつかり合うのだから、プロレスファンからしたらたまらないものがあったと思う。チケットが瞬時に売り切れ、東京ドームの観客動員新記録となる6万7000人(主催者発表)もの観衆が集まったのもわかる。団体間のリアルな対立、確執を東京ドームでのビッグマッチというエンターテインメントに昇華させたのは、本当にすごいことだと思う。

しかしボクは、その団体対抗戦のメインイベントを務めた、いわば主役であるはずの髙田さんと武藤さんふたりだけがケンカの輪から外れ、蚊帳の外にいたような気がしてならなかった。

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取材・文=堀江ガンツ

田村潔司=たむら・きよし|1969年12月17日生まれ、岡山県出身。1988年に第2次UWFに入団。翌年の鈴木実(現・みのる)戦でデビュー。その後UWFインターナショナルに移籍し。95年にはK-1のリングに上がり、パトリック・スミスと対戦。96年にはリングスに移籍し、02年にはPRIDEに参戦するなど、総合格闘技で活躍した「孤高の天才」。現在は新団体GLEATのエクゼクティブディレクターを務めている。

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