2026-08-06 18:30

『証言TIF~アイドル戦国時代とはなんだったのか~』第11回:私立恵比寿中学・真山りか×安本彩花「TIFで10年ぶりのキョンシーメイクをしたら、場を完全に引かせてしまって。時代が変わったんだなって」

写真左から、真山りかと安本彩花

7月31日から8月2日の三日間、東京のお台場・青海周辺エリアにて、「TOKYO IDOL FESTIVAL 2026」(通称TIF)が開催された。

2010年に第1回が行われ、今ではアイドルシーンに欠かせない一大興行にまで成長したTIF。そのムーブメントの渦中にいたアイドルたちの証言をもとに、TIFがアイドルシーンに与えた影響について迫っていく本連載の最終回に登場するのは、私立恵比寿中学の真山りかと安本彩花。15年以上この業界の変遷を見て、今もステージに立ち続ける彼女たちにとって、“アイドル戦国時代”とはなんだったのか? 2人のインタビューを一部抜粋してお届けします。

戦国時代のド真ん中

──初回のTIFに出ている貴重な現役アイドルのおふたりに色々なお話をうかがわせていただければと思っています。

真山りか(以下、真山):私の記憶はおぼろげですが……。

──取材したみなさんもそう言ってますので(笑)。もう16年前のことですし。

真山:品川ですよね? 2010年は私たちがまだメジャーデビューする前で、たしかオリジナルが『えびぞりダイアモンド!!』の1曲しかなかった時期でした。

──当時のTIFをどんなふうに感じたか覚えてますか?

真山:あのTIFでももクロちゃんがバーンと行った記憶があるんですよ。いまはサーキット形式のイベントが渋谷とか下北でよく開催されているイメージがあるんですけど、あの頃はそういうのがほとんどなくて、あの規模のアイドルフェスティバルが開催されたのは初めてくらいのことでしたよね。

安本彩花(以下、安本):たしかにそうかも。

真山:私たちからしたら自我が芽生えたての時期で、ようやく状況を把握できるようなったくらいではあったんですけど、こんなに人が集まるんだとびっくりした記憶はあります。当時はAKB48さんがちょうどブレイクしていて、諸先輩方のおかげでこういうことができるんだと感じていた……のかな?

安本:自分たちの憧れるような有名なアイドルがたくさんいて、あの人に会えた! という感覚で見てました。

真山:いまみたいにライブアイドル、地上アイドルみたいに分かれていたわけではなかった気がするんですよ。合同でライブしますというイベントのときは、えびちゅうはみなさんに可愛がっていただいく部類だったので、同期とかそういう感覚は皆無で、お姉さまに会えて嬉しいという気持ちでした。

安本:お姉さんたちが赤ん坊に話しかけるみたいな感じだった気がする。

真山:「いくつなの〜?」みたいなね。

──年齢が近い東京女子流もまさに近いことを言ってました。

真山:そうなんですね。私たち、女子流ちゃんたちと年が近いと思ってなかったよね?

安本:ももクロちゃんと仲良しなイメージがあったから大先輩のような感覚でした。

──初期の頃は誰もが先輩に見えていたんですね。

真山:特に私たちは人見知りグループだったので。スターダストの仲間がいてもえびちゅうだけで固まるようなタイプなので、外部イベントとなったらずっとドキドキしてました。

安本:アイドルちゃんたちってフェスのときに交流するじゃないですか。楽屋で違う衣装のお姉さん同士が話している光景を横で見て、これはどういう状況なんだろう? と思ってました。自分らはしたことがなかったので不思議だったし、私たちはこの中には入れてもらえないだろうなぁ、みたいに思ってました。

真山:2010年で言うと、TIFの前に辞めた奏音という出席番号1番の子が観に来てくれてて。奏音のお母さんがしっかりされていて、楽屋の私たちの態度をちゃんと叱ってくれるタイプの人だったんです。たしか、さ学(さくら学院)ちゃんと一緒の楽屋だったんですけど、私たちはめっちゃお菓子を食べるんですね。で、そのゴミを捨てないから、奏音のお母さんに怒られた記憶があります(笑)。そのくらい子供だったので、ほかのアイドルさんと交流なんてできる感じではなかったと思います。

──マネージャーではなく元メンバーのリアル保護者に注意されるという(笑)。

真山:当時はまだ藤井さんひとりしかいなかったんですよね。あとは長くお世話になっている振り付けの續いくえ先生が面倒を見てくれてました。

──ステージはどうだったか覚えてますか?

安本:『かえして!ニーソックス』をやったような記憶があります。私たちが立たせていただいたのは一番下のステージだったっけ?

真山:そもそもステージがそんなになかったよね。

──ライブ会場はステラボールが「メインステージ」、グランドプリンスホテル新高輪の宴会場が「ホールステージ」、品川よしもとプリンスシアターが「セカンドステージ」でした。

安本:宴会場でやった記憶があります(※私立恵比寿中学の出演は初日がホールステージ、2日目がセカンドステージ)。うちらの人数が多すぎて、うまくステージに立てなかったんですよね。すぐそばに照明があって、手を伸ばすと「熱っ!」みたいな。

──当時は12人でやってましたからね。『えびぞりダイアモンド!!』を初披露したのがTIFだったようです。

安本:そうだそうだ。じゃあ、すごく大事な日なのに本番直前までお菓子を食べてたんだね(笑)。

真山:いや、終わってからだと思う。ライブの後に安心してもりもり食べたんだよ。

安本:そうだっけ? ライブ前にめっちゃ萎えた気がするよ。

真山:そう? 当時はずっと怒られてたからもうわからない(笑)。

安本:いつも必ず誰かが泣きそうになってて、校長に切り替えなさいって言われてたよね。

真山:懐かしい。切り替えなさいはよく言われた!

安本:本番のために意識を切り替えるというのがわからなかったよね。

真山:本番がどうとかもわかってなかったかも。気づいたらステージで踊ってて、気づいたら家に帰ってました(笑)。

──2010年から11年にかけて一気にアイドルシーンが花開き、TIFの会場がお台場に移るわけですが、盛り上がっていく状況を肌で感じることはありましたか?

安本:小学校のときは、アイドルが好きって言うとちょっといじられるみたいな空気があったんですけど、自分がアイドル始めた1、2年くらいでAKBさんとももクロちゃんがすごいブレイクして、みんながトレカとかブロマイドを学校に持ってきて、私は誰々が好きとか、私はももクロ派みたいに言うのが始まったんですよね。当初は自分がアイドルになったのを学校のみんなに知られることをずっと恐れて密かに生きていたんですけど、私の直属のお姉ちゃんを応援しているクラスメイトがちらほらいることを知って、これなら言っちゃおうかなって思えたんですよね。ほかのアイドルさんが大人気になっていくことで、自分の自信にもなったというか、アイドルをやるというのは素晴らしいことなのかもしれないと思えたのがその時代です。男の子が密かに応援しているイメージだったのがかなり変わったんだなというのを間近で体験しました。

──真山さんはいかがでしょうか。

真山:当時は無我夢中だったのでそんなに感じてなかったんですけど、いまのASOBISYSTEMのアイドルちゃんたちとか、とき宣(超ときめき♡宣伝部)の勢いを見ると、かつて自分たちが体験していたようなことをしてたりするんですよね。いま振り返ると、自分はいい時代の波に乗れたんだなと思います。アイドルが駅や街の広告にいたり、お菓子のパッケージになるとかは、自分が子供だったときはモーニング娘。さんくらいで、それ以降は彩花が言ったようになんとなく恥ずかしいものというイメージになったと思うんです。その流れが変わったのは、あの時代からだなと思います。

カマしたもん勝ち

──リリース量も一気に勢いづくのがTIF以降で、『えびぞりダイアモンド!!』の次作の『チャイム!/どしゃぶりリグレット』からは3カ月に1枚くらいのペースでCDを出していきました。

真山:そうそう! 最近のえびちゅうはあまりシングルを出してないんですけど、あの当時は1年中レコーディングしてたんですよ。やってもやっても歌わないといけないので、毎日喉を枯らしていて。それがあったからもう枯れなくなりました(笑)。

安本:まやさんは枯らしてたね。レコーディングの次の日にライブがあったりして、ずっと歌ってた。

真山:リリイベも1日3まわしとか余裕でやってたからね。で、その次の日はレコーディングして、という。メジャーシーンにいたわけでもないのに、とにかくずっと忙しかったです。

──リリイベ1日3まわしとか年に4枚のシングルリリースとかを聞くと、これぞアイドル戦国時代だなと思います。

安本:たしかに。『もっと走れっ!!』だったかな? CDを出した直後ではなかったけど、たまたまその日に売っていたCDが『もっと走れっ!!』で、みんなが買ってくれるから次の日のチャートに乗っちゃったということがありました(笑)。当時はそのすごさがあまりわかってなかったけど、いまだったらそういうことをやろうとしてもできないですよね。

真山:いまはCDの時代じゃないから余計にそう思うよね。平成のアイドルってカマすことを一番に考えてたと思います。私たちは2011年のTIFに白塗りしてキョンシーメイクで出ましたし、あとはキャッツメイクでステージに出たりもしてたんですよ。とにかくカマして、場を盛り上げた者勝ちみたいな頭の悪い思想に取り憑かれてました(笑)。

安本:いいものを見せようぜというよりも目立ったものが勝利。

真山:あれはスターダストが持ち込んだ悪いところだと思います(笑)。それこそ女子流ちゃんとかずっとかっこよかったもん。ぱすぽ☆さんは王道アイドルだったし、スパガちゃんは可愛いし、アイドリング!!!さんはトークがすごいし。

安本:そういうの、羨ましかったもん。ストレートに勝負に挑んでるのがよかった。

──カマすことが受け入れられる土壌がありましたよね。実際にウケていたかどうかは別かもしれませんが(笑)。

真山:ですよね! 『ゆび祭り』(『第一回ゆび祭り〜アイドル臨時総会〜』)が12年でしたっけ? 私たちはオープニングアクトで1曲歌わせてもらったんですけど、『放課後ゲタ箱ロッケンロールMX』を披露するためだけにリムジンで武道館に乗り付けて、V系のメイクをして出たんですけど、会場はしらけてましたから。

安本:懐かしい! 身内のなかでは最高だぜってなってくれてたけど、あれはしらけてた(笑)。

真山:そのことが明確になったのが、2021年に出たTIFで10年ぶりのキョンシーメイクをしたときです。カマす癖がまだ抜けてなくて、当時新メンバーだった桜木(心菜)、小久保(柚乃)、風見(和香)の対外的にはほぼ初披露のタイミングで勝負所だったんですけど、キョンシーメイクで出たら、場を完全に引かせてしまいました(笑)。

安本:しかも真夏だからみんな汗でドロドロで、メイクが崩れてしまって。ちょっと悲鳴聞こえたもん(笑)。

真山:あそこで時代が変わったんだなってようやくちゃんと気づけました。いい機会でした。

取材・文/南波一海

━━まだまだ続くインタビューは『BUBKA6月号』コラムパックをチェック!「真山:それで一時期はずっと白塗りをやっていたんですよね。メジャーになってからのCDのジャケットだって3枚目の『梅』までちゃんと顔を出してなかったですし。その『梅』すらスクラッチで削って顔が出てくるパターンでした(笑)」

真山りかプロフィール

まやま・りか 1996年12月16日生まれ、東京都出身。出席番号3番。2009年「私立恵比寿中学」初期メンバーとしてデビュー。最年長としてグループを牽引する精神的支柱としてメンバーをまとめあげる。Podcastにて毎週日曜20時より「幼馴染なふたり」配信中。

安本彩花プロフィール

やすもと・あやか 1998年6月27日生まれ、東京都出身。出席番号5番。2009年「みにちあ☆ベアーズ」のメンバーとしてデビュー。その後同年10月に私立恵比寿中学に転入。抜群の歌唱力でグループのみならずソロでも活躍の場を広げている。ソロプロジェクト“NecoMe”名義のコラボレーション新曲『SWIPE KANAN KIRI』が絶賛配信中。

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