2025-05-22 18:30

【工藤めぐみインタビュー】長与に憧れ、ジャガーに習い、ダンプ松本に叱られて――辛く厳しかった時代の追憶

工藤めぐみ
工藤めぐみ
(写真提供=平工幸雄)

ダンプに湿布で失敗

――何か間違いがあると、あとで先輩の呼び出し指導があるんですよね?

工藤 そういう時は同期全員が寮に呼ばれて、朝方まで先輩にいろいろと注意を受けるんです。

――それは全女用語でなんて言うんでしたっけ?

工藤 「集合」です。

――恐怖の「集合」(笑)。

工藤 試合後、「寮に帰ってから集合あるからね」って言われると、もう帰りのバスの中がどんよりしちゃって。バスが寮に着かないでほしいと思ってましたね(笑)。

――「集合」をかけるのは1コ上の先輩なんですか?

工藤 その時によって違うんですけども、学生の部活動と一緒で、やっぱり一コ上の先輩が教育係として直接の指導をしていく感じです。

――新人がちゃんとしてないと、その1コ上の先輩がさらに上の先輩に怒られるわけですね。

工藤 だからホントに怖かったです(笑)。

――しかも、1コ上は北斗さんたちゴリゴリの世代ですもんね。

工藤 そうなんです。同期の中で私と前田薫が最初に巡業に行ったんですね。その時、巡業での一日の振る舞いとかリング作りとか一通り教わって、「寮に帰ったら他の同期に教えるんだよ」って言われるんです。しかも「次に他の同期ができなかったら、ちゃんと教えなかったあんたたちのせいだからね」って。

――同期の分の責任まで負わされる(笑)。

工藤 なので夜、前田薫と一緒に一生懸命「こうしてこうでこうだよ」って他の同期に教えたんですけど、口で言うだけじゃできないんですよね。それが原因で「集合」がかかって、「工藤、前田、前に出な」って言われて、みんながいる中で二人で前に出たんですよ。その時は、足がブルブルブルブル震えちゃって。そしたら前田があまりの恐怖で具合が悪くなっちゃって部屋に戻されて、私一人が残されたんで、あれが一番怖かった「集合」体験ですね。「かっちん、行かないで!」って(笑)。

──公開処刑ですもんね。

工藤 でも、私に限ってはまだ殴られるとかではなかったので、そこだけは本当に不幸中の幸いでした。

――でも、暴力なしでそこまで恐怖を味わわせるというのもすごいですね。

工藤 本当に。「並びな」って言われた瞬間、もう心臓バクバクで。心臓がドックンドックンとなるのが自分でわかるくらい怖かったです。

――巡業中はそんな先輩方と四六時中一緒なわけですよね。

工藤 だからこそ同期の絆が生まれましたね。みんなで励まし合いながら「がんばろうね、がんばろうね」っていう感じで。当時の生活の中で一番のよろこびは、朝方出発のバスに乗る際、先輩に「おはようございます!」って言った時、「おはよう」って言ってもらえた時が最高で。その日1日ハッピーに思えるくらいうれしいことでした(笑)。

――逆に言うと、それぐらいシカトされる確率の方が高いという(笑)。

工藤 そうなんです。みんな聞こえてないように平然と通りすぎるので、たった一言の「おはよう」がめちゃくちゃ嬉しくて(笑)。

――工藤さんの新人時代、まだダンプ松本さんもクラッシュ・ギャルズもいたと思いますけど。そういった雲の上の先輩方との思い出はありますか?

工藤 私はけっこうダンプさんを怒らせたことがあるんですよ。失敗談がありすぎて、どれをチョイスしていいかわからないくらい。

──例えば、一つ挙げると?

工藤 パッと思い浮かんだのは、みんなで練習している時にダンプさんが道場に来られて、何か用事を頼まれたんですよ。その時、練習を抜けていいのかどうかの判断に迷ってなかなか行かなかったら、「おまえ、ふざけんじゃねえよ! 先輩が呼んでんのに来れねえのかよ!」って怒られて。ダンプさんが道場のドアを蹴飛ばしたらガラスがバリバリバリッて全部割れちゃって、ダンプさんが高いガラス代を会社に弁償しなきゃいけなくなったんです。

――工藤さんに対して怒ったおかげで弁償。それは恐ろしい(笑)。

工藤 それでダンプさんが会社の人に上の事務所に呼ばれたんで、私は謝りに行こうとしたんですよ。そしたらちょうどダンプさんが降りてくる時で、私はそのまま上にあがって行ったら、「てめえは先輩が降りてくんのに道空けねえのかよ、コノヤロー!」って、また突き飛ばされそうになるぐらい怒られて。それからはしばらく口をきいてもらえなかったんです。

――しくじりを重ねてしまって(笑)。

工藤 その話には続きがあって、ある日、用事があってダンプさんが寮に来られたんです。私はまたシカトされちゃうなと思って怖かったんですけど、一応挨拶に行って「先日は申し訳ありませんでした」って言ったら、ダンプさんが「もういいから。気にすんな」って言ってくださって。それまでずっと口きいてくれなかったのに「じゃあ、フルーツ牛乳飲みたいから買ってきて。自分のも買ってきていいよ」って、お金わたしてくれたんですよ。もう「やったー!」と思って。ここからが私のバカさ加減なんですけど、「私はいちごミルクの方が好きなんで、私の分はいちごミルクでいいですか?」って聞いちゃったんですよ。そしたら「おまえって本当にバカ野郎だな。そういうことを言うんじゃねえよ!」って、また怒られて(笑)。

――ダンプさんが工藤さんの失敗を許すだけじゃなく、雲の上から下界まで降りてきて優しい言葉をかけてくれたのに、図々しいこと言ってしまって(笑)。

工藤 素直に「ありがとうございます!」ってフルーツ牛乳2本買ってきて飲ませてもらえばいいのに、ホントにダメですよね(笑)。

――工藤さんとダンプさんって世代的にすれ違いかと思ったら、ちゃんと思い出があるんですね。

工藤 でも、一番の思い出はあれですね。巡業中、試合のセコンドに付いてる時、1コ上の先輩から「新人、誰でもいいからダンプさんがバスで呼んでるから行って」って言われて行ったんですよ。そしたらダンプさんに「悪いけど背中に湿布貼ってくれない?」って言われたんで、緊張しながらも貼ってセコンドに戻ったんです。そしたらしばらくしてまた同じ先輩が来て、「ねえ、さっきダンプさんに湿布貼ったのあんたでしょ? 呼んでるよ、バスで」って言われて、「えっ!? 私、何したんだろう…?」と思ったら、ダンプさんに「おまえはよう、湿布貼る時にシート剥がさねえのかよ!」って言われて。私、緊張しすぎてあの透明なフィルムを剥がさず、寝ているダンプさんの背中にペタッて置いただけで出てきちゃったんですよ(笑)。

――ダハハハハ! 貼らずに背中に置いただけ。「なめてんのか」と(笑)。

工藤 ダンプさんが立ち上がったら、湿布が全部落ちちゃって(笑)。その一件から、私は完全にダメなやつみたいになっちゃいましたね。

――いま聞くと、まるでコントみたいで笑えますけど、当時はあまりの恐怖で信じられないミスをしちゃってたってことですよね。

工藤 ホントそうでした。湿布を乗せるだけで手が震えてましたから(笑)。

取材・文/堀江ガンツ

――まだまだ続くインタビューの続きはこちらから

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工藤めぐみ
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(撮影=堀江ガンツ)

工藤めぐみプロフィール

1969年9月20日生まれ。86年、全日本女子プロレスに入門、デビューを果たすも、2年後に退団。その後90年に大仁田厚率いるFMWに参戦し、アイドルレスラーとしてプロレス以外にも写真集やイメージビデオなどの芸能活動も行う一方、FMW女子の看板として凄惨なデスマッチにも果敢に挑戦し、「邪道姫」の異名を取った。現在はプロレス番組の解説や、女子格闘家のプロデュース及びタレントとしての活動を行っている

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