2023-04-04 11:07

すべての球団は消耗品である「#6 1990年の田淵ダイエー編」byプロ野球死亡遊戯

すべての球団は消耗品であるbyプロ野球死亡遊戯
すべての球団は消耗品であるbyプロ野球死亡遊戯

勝っても、負けても、いつの時代もプロ野球球団はファンに猛スピードで消費されていく。黄金時代、暗黒期、泥沼から抜け出せない低迷期。ファンは、そして僕たちはいい時も悪いときもそんな刹那の瞬間に快楽を求めているのかもしれない。

閉店間際のアクション野球

お脚がよろしいようで。

89年秋、田中美奈子はミニスカートと美脚で「学園祭の女王」と呼ばれ、東大五月祭では、W浅野(巨人の浅野翔吾ではなく浅野温子とゆう子)、今井美樹らを退けて“恋人にしたい女性”ナンバーワンに輝いた。当時の『週刊ポスト』では「美奈子チャンの“美脚”は、ミニ大好き女子大生で結成されている“女子大生ミニミニ党”から党首に選出された」と緊迫の現場リポートが掲載されている。

同じ頃、ホテル「セントラーザ博多」には、テレビカメラ8台と200人以上の報道陣が集結した。ダイエーの中内㓛オーナー自ら出馬し、「カネは出すが口は出さん」と口説き落とし、契約金1億円、年俸7000万円という破格の好条件で田淵幸一の監督招聘に成功したのだ。

「目指すは面白く楽しいアクション野球」

凄い、過去に就任会見でここまで一発でこりゃあダメだなと分かっちゃうキャッチフレーズがあっただろうか。「スーパーは閉店間際が勝負。野球も同じだと思う」ってなんだかよく分からない抱負を口にする43歳の青年監督タブチ君。ドラフト会議では、1巡目で野茂英雄の抽選を外すと、果敢に巨人を熱望していた甲子園のアイドル元木大介に1位指名で特攻する。「ボクは門前払いにあっても、元木君と直接会って話してみたいんだ。目と目を合わせてね」なんて燃えるも、まったく相手にされず(ついでに2位の金沢健一も右肩痛で満足に投げられず)、就任1年目からドラ1不在で戦うことを余儀なくされた。それでも、89年1月に270人乗りのボーイング767をチャーターして、選手・関係者が福岡入りというド派手な演出から始まった新生ホークスは決してめげず、まあなんとかなるさダダーンボヨヨンボヨヨンとみんな明るくガバガバだったバブル好景気の落とし子、それが田淵ダイエーだった。

90年春は見栄優先のハワイ・キャンプから、「1・2軍の入れ替えが活発にできるから」という理由で国内の沖縄に変更。雨対策にポーンと5000万円のエアテントを建設する大盤振る舞いを見せるも、前年33本塁打の助っ人アップショーが「ナンデ、ダイエーはハワイからオキナワにキャンプ地を変えたんだ!」なんて激怒。あんた家族連れでバカンスしたかっただけじゃねえか……と周囲は呆気にとられた。それでも田淵フィーバーは凄まじく、キャンプインからわずか2日間で芸能人や評論家との対談申し込みなどが22件も殺到。頼みの助っ人バナザードが左足ふくらはぎの肉離れで離脱するも、激励会で壇上の田淵監督は「実はウチの選手には独身でハンサムな選手がいっぱいいます。独身女性の方で、ぜひ野球選手のお嫁さんになりたい方は私にひと声かけて下さい」と恋の仲人宣言。担当記者は「投手陣の不調で開幕投手のメドも立っていないのに、あんな気楽なことを言ってる場合かなあ」なんて驚いたが、その不安は的中して田淵ダイエーは90年シーズンの開幕から凄まじい勢いで負けまくった。

開幕戦が雨で流れ、仕切り直しの9日は終盤に4点差をつけ乱打戦を制したかと思いきや、リリーフが5失点の逆転負け。そこから引き分けを挟む4連敗で開幕6試合目に西武からようやく初勝利。「5点差あれば、一応ホッとするけれど、4点差じゃあ危ないんだよ」と田淵監督も愚痴る投壊ぶりで、4月21日には中西邦之投手コーチの休養を発表。事実上の解任である。

開幕から9試合消化したその時点で、チーム防御率6.24と毎日炎上状態だった。だが、このテコ入れ人事当日のオリックス戦で15失点、次のロッテ戦でも10失点とさらに事態は泥沼化。宿舎で午前3時までスタッフを集めてミーティングをやる努力も虚しく空回り。タブチ人気で平和台球場の客入りは上々で、「ワケが分からんお祭り野球」と報じられる中、4月は3勝12敗1分けと傷だらけの船出だ。

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中溝康隆=なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)|1979年、埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。ベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)など著書多数。『プロ野球新世紀末ブルース平成プロ野球死亡遊戯』(ちくま文庫)が好評発売中!

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