乃木坂46“魂”のアンダーライブ特集番外編|アンダラに注入された”違う成分”とは? 全メンバー取材から見えた変化を考える

12月19日~21日の3日間、乃木坂46が日本武道館で「40thSGアンダーライブ」を開催する。『BUBKA』では「“魂”のアンダーライブ特集」と題し、武道館のステージに立つ14名にインタビューを敢行。それぞれが抱える思いを言葉にしてもらった。今回は番外編として、本特集のメンバーインタビューを担当した、ライターの犬飼華による「アンダラの現在地について」をお届け。今回の取材で浮かび上がった変化とは何だったのか。今だからこそ見つめ直したい、アンダーライブの意義━━。
怒号と情念
今月は乃木坂46 アンダーライブの大特集を組んだ。30 ページ以上にわたる大作である。
今、なぜアンダラに着目したのか?
問題はそこである。少々長くなるが、その理由について説明したほうがいいと思われるので、しばし付き合ってほしい。
アンダーライブは2014年から始まった。4月に「楽天カード×乃木坂46 アンダースペシャルライブ」として幕張メッセで開催されたのが1回目で、その翌月に「アンダースペシャルライブ」として東京・渋谷と名古屋で行われ、その後、ナンバーシリーズ化していった。渋谷のキャパは1000人強。現在とは隔世の感がある。私は2階席から目撃していた。
階下を見ると、すさまじいまでの熱狂がそこにはあった。明らかに全体ライブとは違うものがあった。声援の質が違うのだ。
以来、アンダーライブは回を重ねる。会場はアリーナで行われることもあるし、ツアー形式のこともある。すっかりひとつのブランドになった。
私はそのほとんどを観覧させてもらってきた。会場はほとんどが関東だが、ある年は宮崎県まで追いかけたこともある。もちろん自腹だ。
その間、本誌では何度かアンダー特集を組んできた。アンダーには人を放っておかせない魅力がある。人を惹きつける強烈な磁力がある。
アンダラの特徴のひとつは、多くのメンバーが指摘するように、客席からの熱にある。ほとんど怒号のような声援を送る観客を何人も近くの席で見てきた。感極まって泣いているファンもいた。そこには人間の情念が渦巻いていた。それは、自分の推しを応援する気持ちが源泉となっている。
もうひとつの特徴は、ステージから発せられる雰囲気だ。それは、全体ライブから感じられるものとは質が違う。
客席からは「誰が何と言おうと、俺はお前を応援している」という念が入ったコールを送り、ステージからは「今、ここで踊っている私を見てほしい」という気持ちを送り返す。それを交換し合う場所がアンダラだった。
アンダラが始まってから10 年以上が経過した。いつからだろう。私は客席からのコールの質が変わってきたと感じていた。「念」が弱まり、違う成分が入ってきているのではないか。そう聞こえるようになった。いや、それ自体が悪いわけではない。歳月は人を変える。ましてやアンダラは毎回構成メンバーが変わるのだから当然だ。だったら、どのように変わったのか。その理由は何なのか。それを探りたかったのだ。長くなったが、これが今回特集を組んだ理由だ。
誰も置いていかない
メンバーは全員取材した。分業制だったので、私がすべて取材したわけではないが、今回担当した中で、もっとも心に残ったのは林瑠奈の言葉だった。それは、「私たちの4年間でアンダーライブは変わっていった気がするんです」というものだ。隣にいた矢久保美緒も同調した。観ている側が感じていることを、やはりメンバーも感じていたのかとわかった瞬間だった。
以前のアンダラは、アンダーにいる自身の境遇が強調されていた。それに対してファンはコールで背中を押す。そんな図式だった。
TBSの竹中優介プロデューサーも指摘しているように、その構図は変化した。現在のアンダラはその要素は薄くなり、どちらかというと、個々がいかに成長していくか、ステージでどう輝くかにシフトしていったように見える。
たとえば、多くのメンバーが座長を経験することは、そのメンバーにとって多くの学びを得られる、貴重な機会となっている。
39 thの金川紗耶、40 thの五百城茉央もそうだ。「選抜とは違う境遇に身を置き、その真ん中に立った時、あなたはどうしますか?」ということが問われているように思う。その壁をクリアすることで人間的な成長を促していると思われる。その成長は、アイドルとしての成長にもつながっている。
また、座長に限った話ではないが、アンダラはソロ、あるいは少人数で歌う場面が多い。それは大人数で歌うのとはわけが違う。マイクを持つ手は震え、時には声も震える。場所はカラオケボックスではない。アリーナクラスの会場だったらなおさらだ。この経験はメンバーをひと皮むけさせる。
こうしてメンバーは個として強くなる。そんな機会が与えられているのは、アンダラが全体ライブよりも少人数だからという側面もある。
だからといって、メンバーは必ずしも個で動いているわけではない。今回の取材で異口同音に語られたのは、周りのメンバーを助ける行動だった。
初めてアンダラに参加するメンバーに周囲は優しく手を差し伸べる。場合によっては声をかけ、食事に誘う。食べることが目的ではない。悩んでいることがあるなら、私が捌け口になるよということだ。
みんな行動を自然にとれるのがアンダーの強みだ。もちろんアンダー以外のメンバーだって同じ気持ちで行動しているはず。誰も置いていかない。この子は今、こんな気持ちでいるはず。だったら、私は何をすべきか。そんなことを想像できるのが乃木坂46だ。その姿は今月のインタビューでも散見されるし、CSで放送されているアンダーのドキュメンタリーからも伝わってくる。
人が変わる瞬間
かくしてアンダラは変容を遂げた。だが、現在の姿が完成形というわけではない。これからもメンバーが変わるたびに変化していくだろう。
最後に、この数年のアンダラでもっとも心が揺さぶられたシーンを書いておきたい。それは今年1月、千葉・幕張イベントホールで行われた37枚目のアンダラだ。
座長は冨里奈央だった。私は彼女をその2カ月前に取材している。
その日はまだ選抜発表から日も経っていなかった。彼女がその事実をどう受け止めているか、まだわからなかった。よって、取材は慎重に行わないといけないと心していた。
撮影が終わり、インタビューが始まった。彼女はまだ答えを出せないでいた。どのように活動したら、選抜に戻れるかということよりも、自身の内側にある壁と闘っているように見えた。
2カ月後に迎えたアンダラ。冨里は1曲目のイントロで登壇すると、これまでに出したことがないであろうほどの大声で叫んだ。「37枚目アンダーライブ、行くぞー!」
活字にすると何の変哲もない言葉に聞こえるかもしれない。しかし、彼女は身をよじらせながら、腹の底から叫んだ。このライブで自分を変えるために、だ。ここはそういう場だと彼女は理解していたのだ。マイクに乗せたのは声ではなく、魂だった。
私はこういう瞬間を観るためにアンダラへ足を運んでいる。アンダラの意義はここにあるのではないか。
人は変わることができる。冨里の叫びは、人が変わる瞬間を生で見せるという贅沢なエンターテインメントだった(そういえば、乃木坂46のドキュメンタリー映画『悲しみの忘れ方』のテーマは「人は変われる」だった)。
しかし、これはエンターテインメントのいち側面に過ぎない。感動を与えることだけがエンタメとは決まっていない。冨里の叫びを感動したと喜んでいるのは私の独りよがりかもしれない。エンタメにはもっと幅があっていい。
今のアンダラはその“幅”に挑戦しているのだろう。今の私たちにできることは何か、と。39 thもそうだったが、その“幅”をメンバーも楽しんでいるように見えるし、観客もそれを受け入れていた。
12月には40 thのアンダラ日本武道館3DAYSが待っている。メンバーはどんなパフォーマンスを繰り広げ、観客にどんなエンタメを届けてくれるのだろうか。
【乃木坂46“魂”のアンダーライブ特集インタビュー】
・五百城茉央が語る”純粋”とは? 「この世界って、いろんな人の言葉を聞くことがあるじゃないですか」
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・TBSテレビプロデューサー・竹中優介「乃木坂46って選抜が一軍、アンダーが二軍なんじゃないです。一軍が2つあるんです」



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