2025-10-25 11:30

令和に蘇る「たま」のDNA━━「音楽深化論」で注目を集めた“令和のたま”こと古山菜の花がオリジナルたま・石川浩司と相対す!

古山菜の花
(編集部撮影)

もののけがいるところで

──たまは全員がシンガーソングライティングをしていたし、そこで切磋琢磨していたというか。

古山:私は「音大出たけど飯食えません」っていうWEBラジオをやってて、そこで一緒にやってる仲間(あべれん/NEO‐Kaishin)や、バンド「Aho‐Electronics」のメンバーはいるんですけど、弾き語りのライブは月1、2本ぐらいしかやってないし、その方向に人脈がないんですよね。場数自体がそんなに踏めてない。ただ「音楽深化論」に出て以降、いっぱいライブのお誘いを頂くようになったので、これからそういうシーンの中で、自分の中で切磋琢磨できるような人をもっと見つけられたらいいなって思いました。

石川:いろんな人やイベントに誘われることになると思うけど、「これ、ちょっと違うかな……」と感じても、一度は出てみた方がいいですよ。ダメだったら二度目はやめとけばいいだけだから。とりあえず、オファーがあったら、若いうちは色々やっといた方がいいんじゃないかと思いますね。ひょんなところで、全く想像もしていなかったような繋がりが生まれることもあるから。ちなみに、組んでるバンド(「Aho‐Electronics」)は音楽的に全然違う系統なんですか?

古山:全然違いますね。その区別は一応自分の中ではつけるようにしてて、バンドはバンド、古山菜の花は古山菜の花、という意識はありますね。やっぱりバンドは集合体なんで、バンドにはバンド向けの内容を提示するし、ソロを始めたことで、自分のやりたいことは、自分でやればいいや、と。

石川:例えば、僕はたまをやってるときから知久くんたちとパスカルズっていう楽団をやってて。たまはシンガーソングライターの集団だったから、コーラスや歌ものを重視したバンドだったけど、パスカルズは基本的にはインストバンドで、器楽演奏を中心にした全く別のアプローチだったり。いまも僕はソロに加えて、バンドを7、8個ぐらいやっています。そういう意味では、八方美人じゃないけど、面白そうだったら、とにかく色んなことをやってみるんですけど、古山さんはどうですか?

古山:私はそれが苦手なタイプで、マルチタスクができない人間。ソロとバンドで完全に分けて考えるだけで精一杯になっているので、これ以上はプロジェクトを増やせないのかなって思ってますね。

石川:たまの柳原(陽一郎)もそうだったんですよね。たまをやりながらも、他のメンバーはみんなソロとかもやってたんだけど、柳原は1つに絞ってしかできないんで、じゃあちょっとソロで頑張るということで、たまを脱退したんですよ。別に喧嘩別れしたわけじゃなくて、「じゃあ、ソロで頑張ってね」と。たまはそれぞれのメンバーが作詞作曲を手掛けた曲でも、その印税を4等分してたんだけど、「さよなら人類」だけは、その餞別じゃないけど、柳原にその印税がいくようになってて。

──やっぱり人それぞれのやり方があるわけですね。

石川:だから自分が一番やりたいことをやるのがいいですよ。

古山:でも、石川さんは音楽もそうだし、本を書かれたり、ホームページ(石川浩司のひとりでアッハッハー)もご自分で運営されてますよね。私、石川さんのホームページがすっごい好きで。

石川:ええっ⁉ そうなの?

古山:飽きないんですよ、見てて。ああいった形でホームページを作ろうと思ったきっかけはなんだったんですか?

石川:パソコンやネットが普及し始めた頃は、チャットが面白かったんだけども、いろんな人が来ると、同じような質問に毎日答えなくちゃならない状況にもなってしまって。それで、定番の話題や回答をコーナー分けしていったら、どんどんコンテンツが増えていってしまって。結果、1999年から26年間ほぼ毎日更新してます。

古山:たまの解散前からですよね。

石川:何のお金にもなんないし、もはや狂ってるんです(笑)。でも、それをやってる時間が、自分にとって充実している時なんですよね。

古山:その企画力というか、考えることの幅広さが、すごいなって思います。たまの「どこでもツアー」は、お寺でライブをしたりもしてたじゃないですか。

石川:ホールライブが多いと、いまどこにいるかが分からなくなるんですよね。ホールは作りが似てるし、入るのも裏口からだから、場所ごとの独自性がないし、会場に刺激がない。それで普段とは違うところでライブをしようというところから始まったのが、「どこでもツアー」で。お寺、能楽堂、教会、幼稚園……色々やりましたね。

古山:私もライブハウスが多いんですが、かしこまってしまったりするんですよ。メタラーの巣窟みたいなライブハウスに行くと、結構緊張しちゃって(笑)。だからお寺とかすごいいいなって思って。

石川:お寺は独特の鳴りがあって、それもまた気持ちよかったですね。

古山:「もののけはいないよ」のMVを、近所にあるうちのおじいちゃんの菩提寺で撮りたいと思って打診したけど、ダメだったんですよ(笑)。

石川:もののけで商売してるんだから、もののけはいないよって言っちゃダメだったのかな(笑)。

古山:それで自分でスマホ立てて、自分のおばあちゃん家の押し入れに入って録ったんですよ。それにアニメも加えて。おばあちゃん家、お化けが出るからいいか、って(笑)。

──それもなかなか聞き逃がせない話題ですが(笑)。古山さんがたまでフェイバリットな曲は?

古山:たくさんあるし、それぞれのメンバーで全然テイストが違うから選ぶのは難しいんですが、石川さんの曲だと、「汽車には誰も乗っていない」がすごい好きです。

石川:あ、ほんと? 嬉しい。

古山:あのEPはたまの中でも結構テイストが違ったりするじゃないですか。たまって「第何期」みたいな感じで、時期や作品によって、サウンドが結構変わったりすると思うんですね。『パルテノン銀座通り』も、それ以前のたまと全然違ったりとか。『きゃべつ』とか『ひるね』とか『さんだる』も感じが違うし。ああいうのが、聴いててすごく楽しいんですよね。

石川:人間ずっと同じの方がむしろ不自然ですよね。それなりに趣味や興味も変わるから。だから、たまもその時に一番面白いと思ってることをやってるだけだったと思う。でも、こっちは4人メンバーがいたし、それぞれが曲を作ってたから、バリエーションや方向性が変わるのは当然で。でも古山さんは1人でやってるから、よりすごいですよ。

古山:恐縮です……。たまのアルバムって通して聴いても、やっぱり全く飽きないっていうのは、本当にすごいなって思ってて。それも好きになった理由だし、魅力ですね。

──古山さんは将来的に、たまや有頂天、人生(後の電気グルーヴ)、筋肉少女帯などがリリースしていた「ナゴムレコード」のようなレーベルを作りたいとのことですが。

古山:それは一つの夢としてありますね。それをちゃんと目標にしたらいいのかな?と思い始めて。私はナゴムが色んなアーティストをリリースしていた時代には、まだ種すら生まれてなかったんですが(笑)、これだけアーティストや伝説が残るってことは、音楽シーンに影響を与えてきたと思うので、そういう活動もしてみたいなって。

取材・文=高木“JET”晋一郎

──インタビューの続きはこちらから!「ラブホが創作の源」

石川浩司(写真左)と古山菜の花(写真右)
(編集部撮影)
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石川浩司プロフィール

1961年7月3日、東京生まれ。1990年バンド「たま」で『さよなら人類/らんちう』でデビューし、レコード大賞新人賞受賞、紅白にも出場。現在はソロでギター弾き語りの他、ガラクタパーカッションで「パスカルズ」、「ホルモン鉄道」など多数のバンドを兼任。エッセイストとして『「たま」という船に乗っていた』などの著作もある。俳優として映画、舞台などにも出演のほか、西荻窪のアートショップ「ニヒル牛」のプロデューサーでもある。

古山菜の花プロフィール

2000年11月24日、千葉県生まれ。両親の影響で幼少期からピアノ、ギターを始め作曲に勤しみ小学校時代にはピロティでのストリートライブを敢行。大学入学後に手書きアニメーション、セルフレコーディングを主軸としたスタイルで作品制作を始め、今年8月にはYouTube番組「音楽深化論」で披露したパフォーマンスが”令和のたま”として一躍話題になった。また、バンド「Aho-Electronics」やラジオ番組「音大出たけど飯食えません」制作などの活動も行う。大学卒業後から続けるラブホテルの清掃アルバイトの内容を綴ったnoteの執筆も行っている。

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