令和に蘇る「たま」のDNA━━「音楽深化論」で注目を集めた“令和のたま”こと古山菜の花がオリジナルたま・石川浩司と相対す!

(編集部撮影)
音楽オーディションYouTube番組「音楽深化論」の優勝で大きな注目を集めるシンガーソングライターの古山菜の花。中でもオリジナル曲『もののけはいないよ』は、独特のメロディ進行と歌詞、そしてパフォーマンスで見せた「変顔」が強烈なインパクトを残し、DJ KOOやBoseが大絶賛。「令和のたま」というキャッチフレーズも含め、SNSでバズを起こした。今回はその「たま」のメンバーであり、現在も様々なバンドで活躍し、たま時代を振り返った『「たま」という船に乗っていた』も漫画化されるなど、マルチな活躍を見せる石川浩司を迎え、「令和のたま」と「オリジナルたま」で、対談して頂きました!
「らんちう」が課題曲
──まず、古山さんがたまを知ったきっかけは?
古山菜の花:私はいま25歳なんですが……。
石川浩司:俺たちがデビューしたのはもう35年前だから、マイナス10歳だ(笑)。
古山:生まれて3年後(2003年)に解散なさったので、リアルタイムの活動は見ていないんですよ。
石川:こんな新しい天才が出てきちゃったから、慌てて解散したんですよ(笑)。
──未来の古山さんを予見して(笑)。
古山:畏れ多いです(笑)。母親がイカ天(「三宅裕司のいかすバンド天国」)世代で、ナゴムレコードから出ていた、たまの『でんご』『しおしお』、メジャーデビュー作の『さんだる』なんかを持ってたんですね。それを私が小学校3年生ぐらいのときの、ドライブのときに聴いたのがキッカケですね。もう「何これ⁉」って感動して。
石川:おお〜。そんなちっちゃい時から聴いてくれてたんですか。若い人がたまを知るキッカケは、親からの線とYouTubeの2パターンが多いですね。小学生ぐらいの古山さんが「さよなら人類」をギターで弾き語ってる動画がYouTubeにありますよね。後ろでドラムを叩いてるのはお父さん?
古山:そうです。父親がバンドをやってたのと、私自身ちっちゃい頃から歌を歌うことが好きで。敬老会で田端義夫さんや美空ひばりさんを歌ったりしてましたね。
石川:へえ。それは面白い。
古山:で、小学生でたまに出会って、同級生が嵐を聴いてるなかで、私は「たま帳」って自由帳を作って、たまをイメージしたイラストを書いたりしておりました(笑)。それからずっとファンで、「地球レコード」からリリースされてる、いまも売ってるたまの音源は買い集めて、廃盤のCDや本は神保町とか中野ブロードウェイで収集して。家の本棚にはそういうものを集めた「たまのコーナー」を作ってます。そこから繋がって原マスミさん、友部正人さん、さねよしいさこさんとかも聴き始めて。他にもゆらゆら帝国、マキシマム ザ ホルモン、ヴィジュアル系、アイドル……本当に色々聴きましたね。
──作曲を始められたのは?
古山:小学校ぐらいの時ですね。なんとなくギターを弾いて歌ってたのが、自分で作りたくなって作ってみて。大学生の時にDTMでの曲作りを学んでから、自分でレコーディングしたり。
──もう小学校の時から歌詞も自分で書いたんですか?
古山:そうですね。
石川:すごい!
──そして「音楽深化論」で優勝されましたが、出場のキッカケは?
古山:自分の活動がちょっとでも知ってもらえたらいいな、という気持ちでしたね。ライブの動員が1人いればいい方だったので、5、6人増えてくれたらいいな、という気持ちで。だから優勝できるとも、話題になるとも全然思ってなかったんですよ。
石川:僕らがイカ天に出た時もそんな感じでした。たまは東京ではそこそこお客さんが入るようになってきたんだけど、地方ツアーが弱かったんですね。まだネットもないし、チラシじゃイメージしか伝えられない。でもテレビだったらこういう音楽やってるとはっきりわかるから、それが全国にテレビで流れれば、地方ツアーがやりやすくなるかな、ぐらいの気持ちで。だから、まさかその後メジャーデビューすることになるなんて、出た時は全く思っていなかった。だって、もし商業的に売れようと思ったり、イカ天チャンプになろうと思って出るなら、1週目は「らんちう」じゃなくて、「さよなら人類」をやりますよ(笑)。
古山:私も正直「たまっぽいね」で終わるかと思ってたんですよ。でも、たまが好きなことは伝わるだろうとは思ってたので、それでもいいかなって。
石川:僕も「もののけはいないよ」を見た時、「お、知久(寿焼)くんが出てきた」って(笑)。でも、歌詞や歌声はもちろん、ハーモニカの吹き方、ギターの演奏能力とか、とてもレベルが高くて。西岡恭蔵「プカプカ」のカバー、オリジナルの「ラブホテルで働くということ」を聞いて、すごく幅広いんだ、すごいなと思いましたね。
古山:ありがとうございます。「もののけ〜」は確かに知久さんからインスパイアを受けているんですよね。ギターで見せどころのある、プレイを見てもらえる曲があったら強いなと思ったときに、知久さんのライブを見に行って、「こういう風にやったらかっこいいんだ」と、そのまま研究して。それこそ「らんちう」とか。
石川:知久くんは、未だにどのライブでも絶対「らんちう」をやるからね。
古山:そうですね!
石川:あれは自分の人生の課題曲だって言ってるし、あの曲を歌って、自分のその日の調子を見るんじゃないかな。
──再生回数も含めて、「音楽深化論」の評判は実際に古山さんに届いてきましたか?
古山:私より両親の方がめっちゃずっと見てます(笑)。良いものも悪いものも、もちろん簡単に見れてしまうので、私は途中からは、あんまり見ないようにしました。配信されてから何日か経って、急にグワングワンといろんな声や反響があって、それに結構オロオロしてしまったんですよね。お褒めいただくこともあるし、嫌なコメントとかももちろんあって。そこでどうしたらいいのか、結構パニックになってしまって。そこで「たまはこういう時どうしてたんだろう」って、すごく思って。
──たまもイカ天の出演で、「たま現象」と呼ばれるほど、ブームが起きましたね。
石川:でも、今のようにネットがなかったから、明らかに反対の人からの声はそんなに入ってこなくて。ただ、100個褒められても、1個けなされると、そっちの方がガーンってなっちゃうことはあるよね。
古山:そうなんです。慣れてないのもあって。
石川:なかなかすぐには慣れないだろうけど、うまく流せるようになりますよ。そしてあまりにも極端な人は無視するに限る(笑)。
古山:頑張ります。でも、本当に全部を真摯に受け止めてしまって、「こうした方が」「でもこっちの方が」と言われるとグラグラしてしまって。
石川:いろんな人の趣味に全部合わせるわけにはいかないからね。それよりも「あんなの作ってきた、じゃこっちも負けてらんないよ」みたいな、ライバル的な友人を見つけるのがいいかもしれないですね。たまがそうだったから。

(編集部撮影)

(編集部撮影)
石川浩司プロフィール
1961年7月3日、東京生まれ。1990年バンド「たま」で『さよなら人類/らんちう』でデビューし、レコード大賞新人賞受賞、紅白にも出場。現在はソロでギター弾き語りの他、ガラクタパーカッションで「パスカルズ」、「ホルモン鉄道」など多数のバンドを兼任。エッセイストとして『「たま」という船に乗っていた』などの著作もある。俳優として映画、舞台などにも出演のほか、西荻窪のアートショップ「ニヒル牛」のプロデューサーでもある。
古山菜の花プロフィール
2000年11月24日、千葉県生まれ。両親の影響で幼少期からピアノ、ギターを始め作曲に勤しみ小学校時代にはピロティでのストリートライブを敢行。大学入学後に手書きアニメーション、セルフレコーディングを主軸としたスタイルで作品制作を始め、今年8月にはYouTube番組「音楽深化論」で披露したパフォーマンスが”令和のたま”として一躍話題になった。また、バンド「Aho-Electronics」やラジオ番組「音大出たけど飯食えません」制作などの活動も行う。大学卒業後から続けるラブホテルの清掃アルバイトの内容を綴ったnoteの執筆も行っている。

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