2023-09-03 18:00

呂布カルマ×R-指定、ラッパーにとってMCバトルとは?(後編)

呂布カルマとR-指定
呂布カルマとR-指定

R-指定とゆかりのあるアーティストをお招きしてお送りする『新・Rの異常な愛情』。前号に引き続き登場するのは呂布カルマ。近年「イケてるヒップホップ」とは別物として語られがちなMCバトルに関する問題から、ラップスターを目指す若手が台頭するルートの変化について、ラップで叶えたい野望などをR-指定と語ります!

MCバトル舐められすぎ問題

――Rくんは『UMB』での3連覇以降は、『フリースタイルダンジョン』以外のバトルからは基本的には卒業しましたね。

R-指定 そうっすね。『FSL』でのT-Pablowとのバトルも、エキシビションという形だったし、優勝を決めるようなバトルには出てないですね。

――そして呂布くんはバトルに出場しつづけ、現在は常勝王者として君臨していますが、現在のバトルのモチベーションは?

呂布カルマ こんなこと言うと元も子もないんですけど「呼ばれるから出てる」だし、「断るほどバトルに出るのが嫌じゃない」ということですね。もうバトルに関しては、勝ち負けじゃないところまできてるんですよ、自分としても。勝ったとしても負けたとしても、僕のMCバトルでの評価はこれ以上は上がりも下がりもしないし、相手に対して「殺す!」とも思わないし、何を言われて「エグられた」とも感じない。その意味でも、半分遊びに行く……というと語弊があるけど、プレッシャーなくバトルに関われてますね。面白いバトルがひとつでも残せればなという感覚です。

――爪痕は残すというか。

呂布カルマ いや、爪痕ほど大げさなものでもないですね。前みたいに「このバトルに!」みたいな気持ちはないし、バトルのギャラは生活の糧にはなりますけど、今は別の仕事もあるし。だから、本当に誘われてるから参戦してる感じですね。それに、例えば若手が俺に勝ったら――手を抜いたりあえて負けようとは全く思わないけど――そこで名を上げられる訳だし、そういう意味でも「バトルへの恩返し」……というと格好つけすぎですけど、そういうイメージですね。

R-指定 相手をいなしてる感じですもんね。相手がガッときたら、それをどういなすかで、みんなも喜ぶというか。

呂布カルマ 「俺はMCバトルで主役にはなられへんな」っていうのは、結構痛感してることで。僕は主役タイプじゃないんですよね、どう考えても。なのでえげつない数の準優勝を獲ってる。「戦極」なんて8大会連続ぐらいで準優勝(とベスト4)してんねんで。えぐない?なんのお約束なん?って(笑)。

R-指定 ハハハ!

呂布カルマ でも、だったら魅力的な脇役になれればいいかなと。

R-指定 とはいえ「MCバトルシーンの主役」ではあると思いますよ。

呂布カルマ 象徴みたいな意味ではね。

R-指定 そして象徴だからこそ、その象徴を誰が倒すかみたいなことが大事になるんやないかなって。

呂布カルマ それこそRが『UMB』で3連覇してた時期とかもそうやん。誰がRを倒すかみたいな。

――その意味でも、10年代前半の象徴としてのR-指定、10年代後半から現在までの象徴としての呂布カルマという部分はあるでしょうね。

呂布カルマ 自分としてはもうMCバトルの「内」では戦ってないし、それよりもMCバトルを「外」にどう見せるかの方が意識が強いかもしれない。正直、僕自身MCバトルシーンをずっと舐めてたし、「バトルMCの音源なんか聞けるかい」みたいな気持ちでいた時期も、長らくあったんですよね。

――それこそMC松島くんが“B.M.K.D(バトルMCは曲がださい)”という曲をリリースしていましたが、なぜかそういうイメージを持つ人も少なくなかったし、呂布くんもそう感じていたと。

呂布カルマ でも、いつからか「MCバトルといえば呂布カルマ」みたいに言われるようになって、「いや、バトルに出てるラッパーの音源がダサいって言われるとしたら、俺もそこに入るやん、それはちょっと許されへんな」と。だからこそ外側に「MCバトルを舐めさせない」ようにしないとな、とは思ってますね。

R-指定 今は揶揄する対象が、バトルMCの音源じゃなくて、バトルに行ってるお客さんになってることが多くないですか?

呂布カルマ あー、バトルヘッズね。

――個人的には、「バトルヘッズ」という呼称に揶揄が込められるとしたら、以前は「バトルだけが好きな、音源やヒップホップカルチャーに興味がない層」を意味してたと思うんだけど、今は「バトル会場でワーワー言ってる子ども」みたいな意味合いも含まれるようになってる気がして。

呂布カルマ その中でも、古参のバトルファン

――この言い方は嫌っすけど――が新しいバトルのお客に対して、「にわかが」とか「昔は」と言い出すんですよ。もうそんなん一番聞いてられへん(笑)。

R-指定 うわー。ちょっと見てられないですね(笑)。

呂布カルマ 「もうやめてくれ!」と(笑)。あと「『ラップスタア誕生』から出てきたやつが本流で、MCバトルから出てきたやつは「所詮バトルMCやろ?」みたいな感じが、いまは顕著に生まれてると思う。

R-指定 でも、それも世に出る手段が変わっただけですよね。以前は名前を上げる手段がバトルだったのが、今は『ラップスタア』になったという。

――手法や方法論の違いはあれど、「名前を上げる」という機能性をピックアップすれば変わらないからね。

R-指定 俺の感覚では、以前は若い子らの名を売る手段が「『高校生ラップ選手権』のオーディション行こうぜ」だったのから、いまは「お前、『ラップスタア』に曲出した?応募した?」みたいに変わったんじゃないかなと想像してて。それはコロナの時に外に出る、誰かと向き合うのが難しくなったときに、パソコンに向かって曲を作って、動画上げて、みたいのがよりやりやすくなったのも、影響してるんちゃうかなと。

――社会状況も反映してると。なるほど。

R-指定 審査員として応募数の変化を見てもそう感じるし、オーディションの映像を見ても「これ時代が違うかったらバトルに出たやろうな」とか、もっと言えば「EXILEのオーディションに応募してたやろうな」みたいな子もめっちゃおるんですよね。それこそ、地方のヤンキー的な、地元で目立つ子なんやろうな、みたいな。

呂布カルマ 『SASUKE』のトライアウト受けてるやつとか(笑)。

一同 (笑)。

R-指定 そんぐらい、若い子が世に出る手段の中に「ラップ」が入ってきたんやと思いますね。

呂布カルマ たしかに。それはものすごいラップの地位向上やな。

R-指定 そうなんですよ。若い子が世に出たいと思う時に、お笑い芸人、スポーツ、アイドルみたいな選択肢に、ラッパーが入ってきたんやなと。

呂布カルマ しかもバトルに出るよりちょっと気楽かもな。スマホで動画撮って送るだけでもいいし。バトルやったら誰かと戦うわけやし、練習も友達がおらなあかんし。

R-指定 しかも、バトルはその場でがっつり勝ち負け決まるし、エグられる子はエグられると思うんですよ。

呂布カルマ ハードル高いよな。

R-指定 能力的にも、音源を作る方がなんとかなりそうと思う人もおると思う。それは逆も然りですけど。

呂布カルマ コロナの時期は小箱でのバトルは難しかったから、大規模な大会が中心になっていたし、そこでイベントがかなり淘汰されたり、出るメンツも固定化された部分もあると思うんですよね。

――「興行」になると、格闘技と一緒で強豪選手、スター選手が出ないと成り立たないし、ニューカマーの門戸は狭まってしまう部分もあって。

呂布カルマ 新人が出るとしても、例えば芸人とかアイドルみたいなラップ以外のジャンルから話題性のある人を呼ぶことになる。そうすると全くの新人は登場しにくいし、「バトルなんて色物やんけ」という部分が強まってしまう感じもあって。あと、俺が我慢できひん物言いとしては、「MCバトルなんて流行ってんの日本だけ」とか、腐すニュアンスも含めて「日本独特の文化」と言うやつがいるんですけど、「いや、素晴らしいやん、それ!」って。

R-指定 うんうん。

呂布カルマ なんで日本独自であることが嘲笑の対象になるねん!すごいことやんけ!と思うんですよね。「日本語なんか使ってんの日本人だけやけど大丈夫か?」って言います?(笑)。

R-指定 ふふふ。ホントにそうやし、日本独自の方法論でヒップホップで盛り上がるのはめっちゃ誇らしいんですけどね。全部アメリカをトレースした盛り上がり方しかできへん方がダサいでしょ。

呂布カルマ ほんまやで。でも、いまだにそうやってバカしてるやつもおるから、その感覚は変えていきたいとは思うっすね。やっぱり、MCバトルにいい思いをさして貰ってるから。

R-指定 「流行る」ということは、MCバトルのエンターテインメントとしての質が高いということやし、それはすごいことですよね。

聞き手・構成/ 高木“JET”晋一郎

――まだまだ続く記事は、発売中の「BUBKA10月号コラムパック」で!

呂布カルマ|1983年生まれ。愛知県名古屋市を拠点に活動するラッパーであり、グラビアディガー。JETCITY PEOPLE代表。数多のMCバトルで優れた戦績を記録し、今なお更新中。最新アルバムは『Bekenja』(2021年)。初の書籍『ブレん人』(コスミック出版)が発売中。

R-指定|1991年、大阪府出身。Creepy Nuts、梅田サイファーのMCとして活躍中。バトルMCとしても、2012年からの「UMB」3連覇をはじめ、テレビ朝日『フリースタイルダンジョン』での2代目ラスボスなど、名実ともに「日本一」の実績を誇っている。

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