2023-06-04 20:00

すべての球団は消耗品である「#8 1992年の土橋日本ハム編」byプロ野球死亡遊戯

すべての球団は消耗品であるbyプロ野球死亡遊戯
すべての球団は消耗品であるbyプロ野球死亡遊戯

勝っても、負けても、いつの時代もプロ野球球団はファンに猛スピードで消費されていく。黄金時代、暗黒期、泥沼から抜け出せない低迷期。ファンは、そして僕たちはいい時も悪いときもそんな刹那の瞬間に快楽を求めているのかもしれない。

“土橋の兄ちゃん”現場復帰

大相撲“どすこい”シリーズ、若貴人気にがぶり寄り!!

「L.L BROTHERS ダンス甲子園ニューヨーク大会」を特集する雑誌『エルティーン』91年11月号の表紙には、若貴フィーバーに思いっきり便乗した見出しが躍っている。この平成3年の春場所、東前頭13枚目の貴花田は破竹の11連勝で、12日目の小錦戦は怒涛の瞬間テレビ視聴率52.8%を記録。五月場所の初日には、大横綱・千代の富士を寄り切り、18歳9カ月の史上最年少金星を挙げた。九月場所でも、お兄ちゃんの若花田が旭富士から初金星。「親父は相撲好きでね。身体も大きかったし、とにかく強かった。だから、ボクも物心ついた時から大の相撲ファン。うん、あのまま行けば力士になっていたかもしれん。いや冗談じゃなくて」なんて唐突に謎の体力自慢をかます元近鉄のビッグワンこと鈴木啓示……は置いといて、未曾有の大相撲ブームは、若貴兄弟がオールスター戦の始球式を務めたプロ野球にも直撃する。

91年秋に日本ハムの新監督に就任した土橋正幸は、「元気、ヤル気、負けん気」を合い言葉に平成球界に宣戦布告。「相撲の世界は、日常生活から実力主義。いまのプロ野球の選手は恵まれ過ぎで、甘えにつながっている」と3年連続Bクラスのチームに喝を入れ、コーチや若手選手を玉ノ井部屋の稽古場見学へ派遣した。秋季キャンプではベンチと守備位置の往復は高校野球並みの全力疾走を義務づけ、練習の最後に全員で相撲のシコ踏みを取り入れた。みんなでシコふんじゃった……っていきなり香ばしいズンドコ臭を漂わせつつ、土橋日本ハムは船出する。

当時、東京ドームを本拠地にしていた日本ハムファイターズを率いる江戸っ子監督は、浅草生まれの浅草育ち、悪そうなヤツはだいたい友達。実家の魚屋を手伝いながら、浅草ロック座の草野球チームで投げ、21歳のとき「面白そうだな」と長靴を履いたまま東映フライヤーズの入団テストへ向かう異端の野球人生を歩んだ。20勝以上を5度、61年には30勝を挙げ、無類の喧嘩の強さでも知られた駒沢の暴れん坊右腕は、あの張本勲が死にたいくらいに憧れた“土橋の兄ちゃん”でもある。

86年のヤクルト監督以来、6年ぶりの現場復帰だったが、56歳になってもストロングスタイルを崩さず、92年正月明けのコーチ会議で「闘志なき者に勝利なし」と吼え、「あれは見てても、みっともない。たいしたことなければ使わせない」なんて死球時の痛み止めコールドスプレーの使用をバッサリ。戦う集団への意識改革は順調かと思いきや、鴨川キャンプ初日に大雪に見舞われ、翌2日は震度5の地震。

沖縄に移動しての二次キャンプも、瞬間最大20メートルの嵐でエアテントが破壊される哀しみのアクシデントラッシュ。出だしから悪い予感しかしない新シーズン、3月1日のオリックスとのオープン戦で初勝利を挙げ、「負けるよりはいいだろう」と上機嫌だった土橋監督だが、13日のダイエー戦で完封負けを喫すると怒りを露わにベンチから飛び出し、バスに乗り込もうとするも25年ぶりの平和台球場で出口を間違え、「誰も教えてくれないものな」とマジ絶望。選手会長の白井一幸が故障離脱するさらなる逆風の中、開幕戦でベテラン柴田保光が王者西武相手に意地の完投勝利を飾り、ウイニングボールを差し出された土橋監督は「いいのか? 記念にもらっとくよ。家に大切にしまっておく」と大喜び。

問題児と噂されていた大リーグ通算148本塁打の新助っ人マーシャルも工藤公康から初打席初アーチと結果を残し、上々のスタートを切ったチームは4月18日のウインタースのサヨナラ弾から4連勝を飾り、6年ぶりの単独首位に立つ。若手も積極的に起用し、ルーキーの片岡篤史をスタメン三塁に固定。4年目の鈴木慶裕は4月終了時に打率.455と大ブレイクを果たす。「組織に負けないというか、縛られないところが格好いいですよ。あの生きざまにはあこがれちゃいますよね」と尊敬するスポーツマンに前田日明の名前をあげる格闘プロレス大好きの東京生まれのトップバッターは、まさに土橋暴れん坊野球の申し子。イチロー登場前のパ・リーグで、噂の鈴木と言えば“ハムのヨシヒロ”だった。

――記事の続きは発売中の「BUBKA7月号」で

中溝 康隆=なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)|1979年、埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。ベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)など著書多数。『プロ野球新世紀末ブルース 平成プロ野球死亡遊戯』(ちくま文庫)が好評発売中!

キヨハラに会いたくて 限りなく透明に近いライオンズブルー Kindle版
Amazonで購入

BUBKA(ブブカ) コラムパック 2023年7月号 [雑誌] Kindle版
Amazonで購入

Amazon Kindle
楽天Kobo
Apple Books
紀伊國屋Kinoppy
BOOK☆WALKER
honto
セブンネットショッピング
DMM
ebookjapan
ブックパス
Reader Store
COCORO BOOKS
コミックシーモア
ブックライブ
dブック
ヨドバシ.com

その他、電子書籍サイトにて配信!

桃月なしこ表紙:BUBKA (ブブカ) 2023年 7月号
Amazonで購入
セブンネットショッピングで購入(ポストカード3種からランダム1枚)

桃月なしこ表紙:BUBKA (ブブカ) 2023年 7月号

Twitterでシェア

関連記事

MAGAZINE&BOOKS

BUBKA2025年5月号

BUBKA 2025年5月号

BUBKA RANKING23:30更新

  1. 浅田真央、“指導者”としてスタート「何よりスケートを楽しんでもらいたい」
  2. 浅田真央「愛を忘れないように指導していきたい」コーチとして今後の夢も語る
  3. 【追悼・永島勝司】週刊ゴング元編集長・金沢克彦が語る「“伝説の仕掛け人”の暗躍と北朝鮮」(前編)
  4. SKE48荒井優希&赤井沙希“令和AA砲”がプリンセスタッグ王者のベルト初防衛に成功
  5. イチロー「やっぱり、おいしいね」、セブン‐イレブン『こだわりおむすび』新CMに出演
  6. 未来から来た投げる預言者・桑田真澄~バック・トゥ・ザ・マストラダムス
  7. SKE48荒井優希、伊藤麻希選手のベルトに初挑戦するも完敗
  8. エレガントな装いの乃木坂46池田瑛紗が華を添える「JRA70周年特別展示『世界一までの蹄跡』」9月20日より開催
  9. ブル中野×玉袋筋太郎『極悪女王』の反響を語る「これを見て女子プロレスに興味を持ってくれた人もいたと思う」
  10. SKE48荒井優希&山下実優組がアジャコング&宮本もか組に勝利!!リング上ではSKE48のミニライブも
  1. 北野瑠華、美しいプロポーションが映えるグラビアショット
  2. “ショートカットグラドル”白鳥桃子、はれんち行為のオンパレードで視聴者をロックオン
  3. 身長170cmのクールビューティー美女、“凄艶”ボディーで魅せる最新作
  4. 息遣いまで聞こえる“肉感接写”…カメラが極限まで接近!鈴原りこが魅せるもっちりスタイル
  5. 元SKE48 高畑結希1st写真集より水着カット先行公開!予約会&お渡し会も開催へ
  6. ピュアピュアな新人グラドル、ベテラン顔負けのグラビアショットで鮮烈デビュー
  7. こぼれ落ちる美ボディー…グラドル&アイドルの二刀流ちとせよしの、王道ビーチから大人なムードまで魅せる最新作
  8. 乃木坂46 6期生・瀬戸口心月、愛らしいルックスで表紙を飾る
  9. 妖艶美熟女グラドルが華麗にデビュー!2025年上半期最大のハードグラビアを展開
  10. 清楚系お姉さん新人グラドル・水星あおい、極上のスレンダーボディーを限界露出