2024-12-04 12:00

敗因は「飛ばないボール」? 問題だらけだったプレミア12を振り返る 青味噌のみそみそダイアリー #5

ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12「SUPER ROUND」「FINAL」が行われた東京ドーム
ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12「SUPER ROUND」「FINAL」が行われた東京ドーム

決勝戦、台湾相手に0-4。井端弘和監督率いる侍ジャパンが臨んだ2024年のプレミア12は、たいへん悔しい結末となりました。わずか4安打しか記録することができず、なす術がないまま敗退。決勝ラウンドを有利な国内で行い、優勝候補筆頭とされていた日本にとって屈辱的と言ってもいい結果となってしまいました。ただ、本大会を通じて日本代表は決勝まで無敗、国際大会は27連勝中で、最後に運悪く負けを喫したまででチームの運営や方針に大きな問題はなかったのではないか? と感じた方もいたかもしれません。しかし私は今大会全体を通して、決勝での敗戦よりもそこに辿り着くまでの過程に問題があり、最後の最後に結果として表れてしまったのではないかと考えています。井端JAPANの問題点、日本野球の問題点、今後のレベルアップを図っていく上で必要なことはいったい何か。采配面、戦術面、意識の問題などさまざまな観点から考えていきましょう。

選出時点でセカンドが一人

まずは選出面から。プレミア12はMLBのロースター(登録選手)に入っている選手の出場は不可であったため、国内でプレーする選手のみの選出となるのですが、今大会はとにかく辞退者が多発したのです。「疲労面を考慮して」「まだ取り組まなければいけないことがある」事情としては当然分かるのですが、故障以外での辞退も多く、大会への参加意識があまり感じられませんでした。WBCなど、トップクラスのメジャーリーガーが出場する大会もある中、プレミア12の参加を難しいと捉えてしまうチームや選手がいることは否定できません。正直、自分も野球の世界最強を決められる大会とは言えないと思います。ただその中でも必要なやり繰りはできたはずだと考えていて、巨人・吉川尚輝のコンディション面での辞退があったとはいえ、本職セカンドが大会で一度もセカンドを守らなかった牧秀悟1人だった点、純粋に打撃成績が芳しくなかった選手が多かった点など、可能な範疇でまだまだ改善の余地があったと思います。

「9番坂倉」「6番牧」の問題点

続いては采配・戦術面。多くの野球ファンが疑問に感じたところで、海外メディアからもその旨の記事がいくつか見られた「打順」が最たる例です。

大会を通して最も打順の回らない9番の坂倉将吾がチーム最高出塁率。最も打順の多く回る1番でほぼ全試合固定されていた桑原将志の不調。この両者はシーズンの打撃成績でも坂倉が上回り、井端監督をはじめとした代表首脳陣が「捕手の負担を考慮」しての9番打者だったとしても変えるべきだったと考えています。

1番の桑原に関しては日本シリーズでの活躍から「我慢」というワードもありましたが、やはりサンプルの多いシーズントータルの成績が重要であるし、そういった部分が軽視されていたのではないでしょうか。

そして最も疑問の声が多かったのは「6番・牧秀悟」。間違いなく大会前からチームの主軸・主砲と考えているファンが多かったと思いますが、今大会はほぼ6番スタメンで固定されていました。代表首脳陣は「6番は満塁で回りやすい」「チャンスで回りやすい」とコメントしていましたが、それに関しては前を打つ打者が優秀だったからと言うほかないこと。

確かに今大会の牧は大会通してやや低調だったので結果的に6番起用は妥当だったとの意見もあると思います。しかし実力を評価した上で最初から6番での起用であったため、やはり考え方に問題があり、実際にバッター牧が打席に立った時に、今大会1番を担っていた桑原がランナーにいた回数は0回。ならば打順を繰り上げて、全体として回ってくる打席数を増やせばいいのではないか?となるのが普通の考えではないでしょうか。実際、台湾との決勝戦で相手の主軸で今大会MVPだった3番陳傑憲には5打席回ってきていますが、6番の牧に回った打席はわずか3打席だったのです。

井端ドラゴンズも見据えての期待と不安

他にも今季サード守備がNPBで傑出していた栗原陵矢を終盤の守備において一塁にしてまで、サードで本職ではない紅林弘太郎を起用。シーズンでは回跨ぎをこなしたことのない投手のイニング跨ぎ。アメリカ相手に快投を見せていた髙橋宏斗は4回で降ろし、決勝で戸郷翔征に多く球数を投げさせていたこと。第二先発の起用法や、投手の左右に固執してしまっていた点。ざっと考えただけでこれだけ挙げられます。いくらスーパーラウンド(ベスト4)から鈴木翔天の離脱があったとは言え、その中でのやり繰りに改善点があったのは事実と言っていいでしょう。井端弘和監督は中日ドラゴンズのレジェンドプレーヤーでもあり、将来的なドラゴンズの監督就任なども噂されています。ここは一つドラゴンズファンとして、今回の大会を機に采配をアップデートして、WBCそしてNPBでの監督業に臨んでほしいと考えています。

台湾チームの優位性

最後にリーグのレベルやプレミア12に向けた意識について考えていきましょう。まず、今回優勝した台湾と日本の差について。リーグレベルの高さ、これまでの大会の実績、また選手の総年俸などを踏まえても日本に優位性があったと考えていいと思います。ですが、細かい部分の突き詰め方や取り組み方は台湾に分があったのではないかと考えているのです。

台湾は映像編集やデータ分析を行うシステムを開発し、代表アナリストがそのデータを分析したものを、コーチや選手とディスカッションするなど対策に対策を練りました。データ的時点とプレーヤー的視点を融合する上での工夫も施すなど、リーグ全体で見られるデータも限られているNPBと比較しても、先進的な策略が見られたのではないかと考えています。

さらに50万円払ってまで決勝戦の先発を変更する本気度も表れた作戦も見事でした。また、NPBは選手の辞退が相次いだと前述しましたが、CPBL(台湾のプロ野球リーグ)は台湾人選手のみならず国内の主力級の助っ人も何人も大会に出場するなどたいへん精力的でした。

「飛ばないボール」の弊害はここにも

アメリカや中南米の代表はMLBのロースター内に入っている選手が出ないからこそベストに近い布陣で臨むのは不可能。それだけに国内に大きなリーグを持つアジア圏の国の取り組み方や選出の差が如実に表れたのではないでしょうか。だからこそ、台湾のリーグ全体での取り組み方をリスペクトすべきだし、今大会を意義あるものにしていくためには今後のNPBの意識改革が重要だと考えています。

一つ例を挙げるなら、今大会の累計本塁打数を見てもリーグ全体の打低の見直しが必要ではないでしょうか。NPBほど世界全体で見てもホームランの出ないリーグはありません。投手の適切な実力も飛ばないボールでは図れないし、フライヒッターの良さは消えてしまいます。環境面やデータ面などを見直して、今のレベルに満足せずにリーグ全体を運営していくべき契機となる大会が今回のプレミア12だったのではないでしょうか。

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