2024-03-04 06:00

【プロ野球】“勝ち続けた男”星野仙一『1997年の星野中日』

中日ドラゴンズ星野仙一監督(当時)
中日ドラゴンズ星野仙一監督(当時)

笑いと屈辱に満ちた暗黒期にスポットをあてたライター・中溝康隆氏によるプロ野球コラム。今回は、1997年の“星野中日”を特集する。

「鉄拳制裁星野」

かつて球場の外野席には、そんな横断幕が誇らしげに掲げられていた。っていや絶対ダメでしょ。応援団自ら指揮官の鉄拳アピールをかましちゃうって、令和なら即炎上して監督解任案件だからね。まさに「重罪判決」……は懐かしの、ほしのあきイメージDVDのタイトルだ。初めての監督就任時にサンドバックを発注して、選手に致命的な怪我をさせない殴り方を研究した拳がうなる彼の名は、星野仙一。

昭和の中日のエースを張り、巨人のV10を阻止した通算146勝右腕。「何が起こるかわからん世の中。ならば、スタート地点から、とにかく必死で走れ。走って走って走り抜け。途中でバテたらどうする? その時はその時のこっちゃ。オレはこの無計画性こそ、人生マラソンの真骨頂だと思う」と自著『男の人生にリリーフはない』で書き綴り、マジで無計画に監督になったら大失敗した元近鉄のビッグワンこと鈴木啓示と同じ1947年生まれだが、早生まれのため学年は星野が1つ上。現役引退後はNHK『サンデー・スポーツ・スペシャル』のスポーツキャスターを務め、CMや講演引っ張りだこで年間3億円以上を稼ぎ出し、女性週刊誌では「不倫したい男No.1」に選ばれたミスタードラゴンズだ。

仙ちゃんは指揮を執った中日、阪神、楽天とすべての球団でリーグ優勝を経験した、“勝ち続けた男”でもある。そんな闘将・星野が中日時代の就任直後にロッテから落合博満をトレードで獲得して、88年にはリーグ優勝を飾ったことは有名だが、一度だけ最下位に沈んだことはあまり知られていない。

1997(平成9)年シーズンの出来事である。前年、5年ぶりに監督復帰すると、最終盤までライバル巨人と優勝争いをしながら、ナゴヤ球場の歴史に幕を閉じる10月6日の最終戦で惜敗して、目の前で長嶋監督の胴上げを見せつけられた。現役時代からドラフトで自分を指名しなかった憎きジャイアンツ戦に投げる前は、「普通なら登板2日前からの禁欲でいいのに、巨人戦前は最低3日間は女体を遠ざけることにしていた」(星野仙一の巨人軍と面白く戦う本/文藝春秋)という謎のルーティンを己に課していた指揮官が、2位の屈辱を胸にナゴヤドーム開場元年の97年シーズンに臨む。戦前のアングルとしては完璧だった。

だが、97年は波乱の幕開けとなる。1月31日に最愛の扶沙子夫人を白血病で亡くしたのだ。星野が明大2年時に出会い一目惚れ。運輸省の局長の娘で慶応大学のマドンナと呼ばれ、プロ入り1年目の冬に結婚して以来、星野を支えていたのはひとつ年上の姉さん女房だった。告別式で「やんちゃな私を、あの手この手でなだめすかしたり、考えると、今日まで扶沙子の掌の上で一生懸命がんばったような気がします」と初めて人前で涙を流す闘将の姿。だが、心配した“親分”こと大沢啓二がキャンプ地を訪ねると、いつもの調子で「清原なんて去年はまったく名前が出なかったのにジャイアンツに入ったとたん、清原、清原でしょう。もうチャンチャラおかしいと思ってるんですよ」とFAで西武から清原和博を獲得した宿敵に牙を剥く戦闘モードを強調してみせた。スローガンは前年に続き、「ハード・プレー・ハード」でグラウンドに一歩出たら戦争だと吼える血気盛んな50歳。現役時代は巨人戦に打たれると翌日に即リベンジしたくて、「投げさせっ! 投げさんと、もう帰ってしまうぞ。もう投げんぞ!」なんて自チームの投手コーチを脅迫しちゃう狂犬ぶりは健在である。

90年代中盤からいち早くインターネットで自身の情報を発信し、果敢に名古屋の政財界のど真ん中に食い込み、ドーム元年の星野中日を支持する財界人後援会「仙友会」のメンバーは460名にまで膨れ上がった。なんと星野はその一人ひとりと写真を撮り、全員の名前を覚えてみせたという。まさに球界最強のジジイ殺しと恐れられた政治力と行動力だ。雑誌『中部財界』には「静かでやさしすぎる(ファンの目にはこう映る)中日の戦団には星野仙一監督はうってつけでよく似合う。「火の玉」の仁王像でたちはだかる風姿こそ好ましい」と書かれ、仙友会の天野会長からグラウンド上で「もう少し喜怒哀楽を出してもいいのでは」と指摘された。あのファイター星野の姿は、猪木にプロデュースされたタイガー・ジェット・シンのように、周囲から求められる“闘将”を意識的に演じていた面も多々あったのだ

Twitterでシェア

MAGAZINE&BOOKS

BUBKA2025年5月号

BUBKA 2025年5月号

BUBKA RANKING11:30更新

  1. SKE48荒井優希、赤井沙希とのタッグで勝利!プリンセスタッグ選手権ベルトに挑戦
  2. ドジャース大谷翔平が出演する『お~いお茶』新CMが完成!ナレーションにも注目
  3. SKE48荒井優希、伊藤麻希選手のベルトに初挑戦するも完敗
  4. SKE48荒井優希、初対戦のアジャコングに“一斗缶攻撃”も食らい完敗
  5. SKE48荒井優希&赤井沙希“令和AA砲”がプリンセスタッグ王者のベルト初防衛に成功
  6. イチロー「やっぱり、おいしいね」、セブン‐イレブン『こだわりおむすび』新CMに出演
  7. すべての球団は消耗品である「#10 1981年の近藤中日編」byプロ野球死亡遊戯
  8. 天龍源一郎がレジェンドレスラーについて語る!ミスタープロレス交龍録 第47回「高山善廣」
  9. ブル中野×玉袋筋太郎『極悪女王』の反響を語る「これを見て女子プロレスに興味を持ってくれた人もいたと思う」
  10. 神取忍×玉袋筋太郎「幻の長与千種戦」の真相とは!?
  1. 日向坂46の“少年”正源司vs“悪ガキ”大野の「リアル水掛け論」勃発! しょげる正源司の反撃に大野が「オーノー!」
  2. ラフ×ラフが夏を連れてきた! 1,522人が笑った新宿ライブで全国巡業が決定
  3. バカやって笑って、じゃー寝ろ!━━深夜ラジオの醍醐味を描いた舞台『はがきの王様』を『松田好花ANN0』リスナー筆者がバカみたいな文字数で徹底レポ!
  4. AKB48伊藤百花、まゆゆ以来の快挙 2作連続センターへ“いただきももか~”の覚悟
  5. ラフ×ラフ“大喜利選抜”にツッコミが止まらない ゆるくて熱いフリラ第2部の景色
  6. 日向坂46藤嶌果歩、ミニバス少女の面影にキュン ポニテ×ユニフォームで魅せる爽やかへそチラ
  7. AKB48伊藤百花「自己採点20点です…」に先輩3人が笑顔のツッコミ 4人で語る“今のAKB48”
  8. 日向坂46大野愛実、Tシャツ&サロペットからパジャマ、ワンピース姿まで…フレッシュなグラビアショット
  9. 「それぞれの日向坂46」特集インタビュー|“おひさま”芸人レインボーが、「ひな誕祭」で熱狂に足を踏み入れ、『ひなあい』で沼にハマり、そして『見たことない魔物』で号泣するまで
  10. ほほ笑む少女、消えた祖父。紬が迷い込む“静かな恐怖”――『路地裏ホテル』EP4

関連記事