櫻坂46 田村保乃を支えた平手友梨奈の一言──「僕は嫌だ」と叫んだあの日から、後輩を支え、グループに貢献し続けた8年間

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櫻坂46が10月14日にリリースする、16thシングル『愛MUST BE』。このシングルの活動をもって、二期生・田村保乃がグループを卒業することが、9月15日に発表された。
公式ブログでの卒業発表時、SNSではBuddies(櫻坂46のファンネーム)の悲しみと驚きの声で溢れた。田村の卒業発表の6日前となる9月9日には、同じ二期生で二代目キャプテンの松田里奈がグループ卒業を発表したばかりだった。さらに、9月30日に卒業セレモニーを控える増本綺良が15thシングル、武元唯衣が14thシングル、井上梨名が13thシングルなど、直近の作品で連続して、二期生の卒業が相次いでいる。
そんな櫻坂46において、田村はどんな存在だったのか。美容雑誌『VOCE』のレギュラーモデルを務め、櫻坂46の現役メンバーでは唯一、写真集を2冊刊行。冠番組『そこ曲がったら、櫻坂?』や公式ブログでは「プリンセスとプーさんになりたい」とユーモアたっぷりに語る、天真爛漫を体現したような彼女だが、その裏で、誰よりもプレッシャーに立ち向かい、ある先輩メンバーと共に乗り越えた経験をもとに、メンバーを支える存在だった。
振り返ってみると、田村を含む櫻坂46二期生の始まりは決して順風満帆ではなかった。前身グループ・欅坂46時代の2018年11月29日、田村ら二期生がグループに加入することが発表された。その後、オフィシャルサイトで数人ずつ、メンバーのプロフィールが公開される中、12月4日放送の『うたコン』(NHK総合)には早くも武元と田村、松田の3人が出演し、先輩メンバーと『アンビバレント』を披露した。ちょうどこの日は田村と松田、そして藤吉夏鈴の個人プロフィールが解禁された日でもあった。
二期生3人を加えた、“21”人でのパフォーマンス。「欅」の画数が“21”であり、一期生だけの“21”人で活動していた期間が長かったこともあり、この時のファンの間では様々な意見が飛び交った。当時について田村は、「ファンの方に二期生の存在を受け入れてもらえない時期が長かったことは、私たちも感じていて。自分たちの力でなんとか良い方向に持って行くために、みんなで『頑張ろう』と励まし合っていた記憶があります」と振り返っている(『BUBKA』2022年8月号)。
立ちはだかる壁に正面から立ち向かった二期生。その中でも田村は、後に大きなプレッシャーと向き合うことになる。2019年9月に開催された「欅坂46 LIVE at 東京ドーム 〜ARENA TOUR 2019 FINAL〜」、デビュー4年目にして辿りついた東京ドームの中心で、彼女は欅坂46の“魔曲”『不協和音』で「僕は嫌だ」と叫んだ。
2017年の『紅白歌合戦』以来、約1年9カ月ぶりにオリジナルセンター・平手友梨奈を中心に据えて披露された4thシングル『不協和音』。この曲を象徴する「僕は嫌だ」と叫ぶシーンは本来、平手が2回、長濱ねるが1回担当していた。しかし東京ドーム公演前に長濱がグループを卒業。その空席を託されたのが田村だった。
『BRODY』(2020年2月号)で田村は、「3回あるうち1回目と3回目、(平手)友梨奈ちゃんの『僕は嫌だ』とその間にある私の『僕は嫌だ』は、どう違うんだろうって。スタッフさんからも『田村が感情を強く出せば、平手もそれを越えようとして、いいものになる』って言われて、わかってるけど、自分にそれができるのか……。」と、当時のプレッシャーを赤裸々に語っている。欅坂46を愛しているからこその強烈な不安が、田村にはあった。
そんな彼女を救ったのが、先輩の平手だった。同期からは「田村はひとりで抱え込むタイプ」と言われ、田村本人も「人に相談することはない」と語るなか、東京ドームのリハーサルで限界を迎えた彼女は、平手の「何かあったらいつでも連絡してね」という言葉を頼った。平手の「わかるよ」という一言に背中を押された田村は、無我夢中に踊り、叫んだ。「踊っている最中は、この曲に限らずライブを通してほとんど記憶がないんです」と語る田村の叫びに、東京ドームに集まった欅坂46ファンは歓声で応えた。あの時、あの場所で、彼女に批判の声を向ける者は誰一人いなかった。
「『思ったことを言える親友ができたらいいね』ってずっと言われてきたんですよ。東京ドーム以降、友梨奈ちゃんがそういう存在になりつつあるのかな」━━平手にそうついて語る田村は、その平手がグループを離れた後、櫻坂46のメンバーとして再びスタートを切った。改名直後の櫻坂46では、フォーメーションの1、2列目のメンバーを固定し、3列目のメンバーを曲ごとに入れ替える「櫻エイト」という制度が取り入れられた。1stシングル『Nobody’s fault』と2ndシングル『BAN』、それぞれの表題曲と収録曲でセンターを務めたのは、後に複数回表題曲センターを経験する二期生の森田ひかる、藤吉と山﨑天の3人。そのセンターの両脇を一期生の小林由依と渡邉理佐が固め、2列目には初代キャプテンの菅井友香と一期生の小池美波、藤吉・森田・山﨑のうちセンターではない2人が並ぶ中、最後の1人として名を連ねたのは田村だった。
一期生とセンター経験者、そして田村━━この8人を中心に歩み始めた櫻坂46。2020年10月の改名当時はコロナ禍真っ只中であり、思うように活動できる機会は少なかった。欅坂46との違いを模索する日々のなか、改名直後には『Nobody’s fault』で『NHK紅白歌合戦』に出演したものの、まだ櫻坂46としてのグループ像は固まっていなかった。そんな状況で迎えた2021年10月、3rdシングル『流れ弾』がリリースされ、そのセンターを務めたのは田村だった。
当時、前身の欅坂46で平手が8作連続、改名後の櫻坂46で森田が2作連続と、表題曲のセンターを続ける流れがあるなか、フォーメーションの中心に抜擢された田村。『BUBKA』(2022年8月号)では、「グループにとってターニングポイントとなる楽曲で責任のあるポジションに立たせていただいて」と本人も語るほど、グループの歩みに一石を投じた『流れ弾』で2021年末の『NHK紅白歌合戦』にも出演。前年の出演理由に“改名”というインパクトが僅かながらでもあったとすれば、『流れ弾』での出演は彼女たちの確かな実力で勝ち取ったものだったと言えるだろう。
3rd Single
— 櫻坂46 (@sakurazaka46) June 7, 2024
「流れ弾」
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2021年10月に『流れ弾』でグループの歴史を変えた後、2026年の現在に至るまで、田村は表題曲センターを務めていない。しかし櫻坂46の歴史を振り返るとき、田村の功績はセンター以外の場所にこそあった。9thシングル『自業自得』の山下瞳月、12thシングル『Make or Break』の的野美青、そして田村にとって最後の参加楽曲となる16thシングル『愛MUST BE』の谷口愛季━━三期生3人が初センターを務めた楽曲において、センターのすぐ隣、いわゆる「センター横」には田村がいた。
かつては小林や渡邉が務めた「センター横」。全16シングル中、二期生から見て後輩となる三期生がセンターを務めたのは5曲あり、田村はそのうち3度、「センター横」に立った。彼女に与えられた役割は、センターとして“引っ張る”のではなく、センターを“支える”ことだったのだろう。
特に『愛MUST BE』のセンターを務める谷口は以前、ラジオ番組『川島明 そもそもの話』に出演した際、こんなエピソードを明かしている。「脳がキャパオーバーしてしまって。あと数秒で涙が出てしまう、みたいな状態で、保乃さんが気づいてくださって。『大丈夫?』って」「番組の収録終わりに『今日頑張ったね、おつかれさま』って言ってくださって。その瞬間に涙が溢れてしまって。人に弱音を吐いても大丈夫なんだ、というのが分かって。そこから甘えられるようになりました」と、田村に救われた瞬間を話していた。かつて田村が先輩・平手から具体的なアドバイスではなく、「わかるよ」というシンプルな一言で救われたように、田村もまた谷口に「今日頑張ったね。おつかれさま」という何気ない言葉をかけ、先輩として後輩を救っていた。
そんな谷口のセンター曲で、センターの隣で、櫻坂46としての活動を終える田村保乃。欅坂46の二期生として加入し、時には心無い意見に触れ、また自らの立場や役割に思い悩むこともあった。そんな苦難を先輩とともに乗り越え、後輩に寄り添い、グループに貢献してきた彼女は、櫻坂46の“やさしさ”の象徴として最後まで支え続ける。
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