乃木坂46 矢久保美緒、卒業までの愛に満ちた7年間━━遠くから「同じ制服」を夢見るだけでなく、坂道を登りきって迎える最高の「笑える日」

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10月21日、乃木坂46・4期生の矢久保美緒がグループ卒業を発表した。
卒業発表のブログで彼女は「アイドルが大好きで、乃木坂46が大好きでした。まさか自分が乃木坂46を名乗る日が来るなんて思ってもいませんでした。加入が決まった時の喜びは一生忘れないと思います」と綴っていた。筆者はこの文章を読んだ時、4期生曲の『4番目の光』を思い出した。
『4番目の光』の冒頭はこんな歌詞から始まる。「遠くから憧れていた/その清楚で凛々しい先輩の姿/坂道のあの高校と/同じ制服を着たい/その夢が叶った」。彼女はこの歌詞の通り、乃木坂46を誰よりも愛したメンバーだった。選抜経験はなかった。苦しみ、悩んだ時もあったかもしれない。それでも彼女は自分なりの光り方を見つけてきた。本稿では、そんな彼女が光り輝いた瞬間を振り返りたい。
矢久保は加入前のオーディション時から光っていた。乃木坂46・欅坂46・けやき坂46による3坂道合同オーディションで行われたSHOWROOM審査では、顔出しが任意の中、声だけで登場した彼女は、配信中ずっと「ごめんなさい」「すみません」と、何かにつけて謝っていたことから「謝罪ちゃん」と呼ばれ、話題になっていた。同期の賀喜遥香もそれを知っており、「SHOWROOM審査の時に、矢久保は謝り倒すキャラから“謝罪ちゃん”って呼ばれてて。それがめっちゃ好きで」という理由から、4期生の公式LINEスタンプのデザインを賀喜が担当した際、16人全員の特徴を表したスタンプで矢久保には「すみません」のメッセージが書かれていた。ファンだけでなく、メンバーからも親しまれた愛称だった。
加入後の矢久保は、自他共に認める乃木坂46愛が光っていた。憧れのメンバーは1期生の松村沙友理。『乃木坂工事中』の初登場時には、その松村と中田花奈が矢久保のプレゼンを担当していた。他のメンバーが特技などで自己アピールする中、矢久保は『おいでシャンプー』の間奏にある「ナカダカナシカ」、松村と生田絵梨花のデュエット曲『からあげ姉妹』の「焼きそばパン! ライスカレー!~」というコールを全力で披露。他のメンバーと比べて異色の光り方だったのを今でも覚えている。
もう一つ、『乃木坂工事中』での矢久保の光っていた瞬間として、同期の遠藤さくらへの愛を伝える場面を挙げたい。遠藤からも「私の一番のファンだと思う」と言われていた矢久保だったが、5期生の一ノ瀬美空や、同期から林瑠奈などのライバルが出現。『乃木坂工事中』で遠藤が「誰が一番か?」という質問に答えられずにいると、これまでのラブアピールぶりを知っている番組MCのバナナマン・設楽統から「矢久保の愛が足りないんだよ!」「こんなに迷わせてる、ってことはお前の愛が足りないんだよ!」と檄を飛ばされ、スタジオが笑いに包まれる場面もあった。そんな設楽はこの矢久保の遠藤へのラブアピールを面白がっており、メンバーが1対1で褒め合って笑った方が負けの「褒めっこグランプリ」企画で生まれた、矢久保の「さくちゃ~ん♡」という一言や、設楽が「矢久保は宮崎駿作品だから」と例えるほど、遠藤に愛を伝えるときのコミカルな動きを気に入っていた。同企画では、エキシビションとしてバナナマンによる褒め合い対決が行われたが、そこで設楽は「ヒムちゃん♡ヒムちゃん♡」とセリフをオマージュし、さらに矢久保の動きを完璧に再現。日村勇紀もその姿に爆笑していた。この企画で矢久保はMVPを獲得。決して多くはない番組出演だったが、彼女は爪痕を残していた。
そんな矢久保が最も光っていたのはアンダーライブだった。彼女は「28thSGアンダーライブ」から参加。当時は1~3期生の先輩に追いつくのに必死だったことから、初めてのアンダーライブ前に彼女は「振り付けや立ち位置を間違えちゃうじゃないか とか 曲や歌詞を上手に伝えられるかなとか。何より、わたしがいることでアンダーライブの質を下げてしまうんじゃないかと不安です」とブログで綴っていた。彼女は乃木坂46が好きだからこそ、憧れのステージに立つプレッシャーと戦っていた。「28thSGアンダーライブ」が開催された2021年10月から、アンダーライブと全体ライブの両ステージを経験する内に彼女は成長。フォーメーションに入る楽曲も増え、ライブ中のMCパートを任せられることも増えた。2024年10月~11月に行われた「36thSGアンダーライブ」では『雲になればいい』を披露。1期生の生田絵梨花、衛藤美彩、桜井玲香という歌唱力に定評があった3人の曲を「歌が苦手」と公言する彼女が自ら選曲したことに、成長と確かな自信が現れていた。
そんな彼女の中で育まれた光にメンバーは気づいていた。『BRODY』(2022年12月発売号)のインタビューでは、梅澤美波が矢久保について言及している。梅澤は、同年8月にリリースされた30thシングル『好きというのはロックだぜ!』以降、アンダーメンバーに1・2期生がいなくなったことを振られると、梅澤は「いまのアンダーメンバーはみんな燃えてるじゃないですか。矢久保ちゃんなんて本当に熱い」と語っていた。どんなに多忙でもアンダーライブを必ず観に行く梅澤だからこそ、矢久保の熱意に気づき期待を寄せていた。
もう一人、矢久保への期待を口にしたメンバーに3期生の向井葉月がいた。2024年12月31日、奇しくも矢久保の活動最終日のちょうど1年前にグループを卒業した彼女は、矢久保と同じように乃木坂46を愛し、そしてアンダーライブを愛したメンバーだった。「アンダーメンバーは悲しいところじゃない」と、誰よりもアンダーへの思いを口にしてきた向井は、最後の参加となった「36thSGアンダーライブ」の密着ドキュメンタリーにて、「今後のアンダーライブを担うのは誰だと思いますか?」という質問に、「矢久保です。矢久保は乃木坂への思いが本当に人一倍強い子なので。これからもずっと前へ前へ進んでいってくれる子だなって思ってます」という言葉を残していた。その後、乃木坂46の中で脈々と受け継がれ、数々のドラマを生んできたアンダーライブを、矢久保はその小さな背中で担うことになった。彼女はアンダー楽曲の中でも中心に立つことは少なかった。むしろ2、3列目にいることの方が多かった。それでも彼女に期待が寄せられていたことは、彼女が誰よりもアンダーライブを愛し、真剣に取り組んでいたからであろう。
最後に矢久保の冠企画で、彼女が公認サポーターを務める公式ゲームアプリ「乃木坂的フラクタル」の配信番組『矢久保の部屋』での一幕を紹介したい。『矢久保の部屋』では毎回メンバーが登場して、矢久保と1対1でトークを展開する番組だ。1期生・樋口日奈が登場した回では、樋口から「笑える日が来るまで(乃木坂46に)いた方が良い」というメッセージを送られていた。
卒業発表のブログで矢久保は「ここまでの道のりは、決して平坦ではありませんでした。悩んで、苦しんで、涙が止まらない夜もありました」と綴っている。乃木坂46が好きで加入した彼女は、グループ内での自分の存在意義に悩み、光り方が見つからない時があったかもしれない。しかし、彼女の中ではほんの僅かだったかもしれない光は、たしかに乃木坂46というグループを照らしていた。矢久保美緒は乃木坂46に必要な存在だった。彼女の約7年間を顧みれば、疑いようのないことだと筆者は確信している。樋口が送った「笑える日が来るまでいた方がいい」。この言葉の通り、乃木坂46・矢久保美緒が、誰よりも前に、誰よりも笑顔で立つことを願ってやまない。
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— 乃木坂46 (@nogizaka46) October 21, 2025
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