2025-05-22 18:00

【吉田豪インタビュー】渡辺俊美、頑張らないこそ築けたキャリア

渡辺俊美
渡辺俊美
撮影/河西遼

俺もザッパでいいな

――TOKYO No.1 SOUL SETを始める流れも、言っちゃ悪いですけど適当というか。

渡辺 適当ですよね。こうなると思わなかったですから。遊んでたっていうか。(川辺)ヒロシ(注20)くんとかBIKKE(注21)とか、いまでもあんまり変わってない感じがありますし。ずっとヒモ状態というか。なるべく働かないで金もらうっていう。最高だよねって思う(笑)。

――ダハハハハ! そんなスタイル(笑)。

渡辺 うん、頑張らない。

――それは空気感に出ますよね。

渡辺 うん。なんで頑張ってないんだろうって。そういうのいまでも感じるときありますけどね。だから好きなんでしょうけど。

――ちょっと調べたら、バンドに入ることになったきっかけが東京セックスピストルズ(注22)のドラマーが▲▲▲で捕まったかなんかで。

渡辺 そうそうそう、来なかったんですよ。ヒカル(注23)が僕のシャムズをラママかなんかで観てて。「俊美さん、叩けんじゃん」とか言われて。そのときNIGO(注24)がいたからNIGOに「おまえドラム叩けんじゃん」って言ったら、「いや、僕ブルーハーツしか叩けません」って(笑)。「そうか、じゃあピストルズやるか」って、それでやったんです。

――そしたら当日の会場で一番うまいぐらいにドラムをやれて、こいついいじゃん、と。

渡辺 そうそうそう(笑)。そのときSOUL SETのドラゴン(注25)&BIKKEもいて、「あ、音楽的なことちゃんとできるんだ」みたいな。

――でもドラムのポジションはないしと思ったら、いろいろ楽器ができるらしい、と。

渡辺 そうなんです。それまで楽器は持ってなかったんだけど、パーカッションだったらクラブだからイケるかな、みたいな。そのうちギターも入ったほうがカッコよくね?みたいな。ちょっとUK的な、トラックに合わせて弾くのもいいなって勝手な想像で勝手に持ってって、勝手に入ってたっていう。

――メンバーが驚いたという(笑)。

渡辺 そうそうそう。「何やってんの?」みたいな。だから最初は盛り上げ役だったけど、それがどんどん楽器とか持ち始めて。

――何をやってるかわからない役だった人が、なんとなくミュージシャン然として。

渡辺 そうなんですよ。周りにもけっこう言われて。いまでも言われるんだけど、お店の店員だった人間が同じステージでギター弾いて歌ってる、みたいな。いっちゃん(LOW IQ 01、注26)とかにもよく言われるんだけど、勝手にそういうふうになっていったんですよ。

――気がついたらちゃんと活動してる感じになっていって。アー写を撮られたとき、初めて「あれ? これは……もう後戻りできない」みたいになったって聞きましたけど。

渡辺 そうそう、ヤバいなって。

――それくらい自覚がなかったんですね。

渡辺 まったくないですね。たまたま地方にドラゴン&BIKKEで呼ばれて、イベントをひと晩やらなきゃいけない、と。そのときドラゴンはDJやってなかったんですよ。ヒロシくんしかいなかったんで。俺がいれば、俺はハウスもヒップホップもDJできたんで、「俊美くん連れてけばひと晩できるね」って話になったんです。そこからですよね。

――なんとなく便利屋的に連れて行かれて。

渡辺 そうです。ライブのとき、たまたまそのクラブの隣が楽器屋さんだったんで、子供用のドラムセット買ってライブに参加したり。そういうところから始まってますね。

――それでまさかこのキャリアになるとは。

渡辺 ハハハハハ! 自分でも不思議です。

――どのくらい活動したときにミュージシャンとしての自覚が芽生えたんですか?

渡辺 『ギターマガジン』に載ったときですかね。専門誌に載っちゃった。そのときのインタビューいまだに覚えてるんですけど、ちょうど横山健(注27)くんと俺と佐藤タイジ(注28)と、若手のギタリスト特集で。俺、レコーディングでぜんぜんギター弾いてなかったんですよ。

――そうなんですか!

渡辺 うん。全部サンプリングなんで。ライブではギター弾くけど。ふつう、「ギターは何使いました?」とかそういうのあるじゃないですか。「サンプリングなんでギター弾いてません」「え~~~っ!?」みたいな。

――レコーディングの経験がほぼない。

渡辺 そうそうそう(笑)。ひたすらレコード聴いて、サンプリングネタとか探して。だからそういうとき、ヤベえ、ちゃんとやらなきゃと思って。それまでずっとJC(ローランドのギターアンプ)は借りもんだったり、人のSG(ギブソンのギター)とか借りてたんで、ちゃんと勉強しようと思った。

――そのぐらいまではロンナイでどうすればあの位置に行けるかみたいな最初の発想のまま、ゆるゆると活動をしてたんでしょうね。

渡辺 そうそうそう。ギター弾いてマメできるの嫌なんで(笑)。そのマメが潰れるのも嫌なんで。フランク・ザッパ(注29)のインタビュー見たら、ツアー中にマメができてたから、俺もザッパでいいなと思ってたらヒロシくんに「それじゃダメだ!」って言われて。ホントは恥ずかしかったですもん、人前でギター弾くって、江戸屋レコードの頃、3人になってから。それまではずっと遊びだったけど。

――「あれ? ちょっとミュージシャンとしてちゃんとしてきてる」って焦り始めて。

渡辺 クワトロか、どうしよう? ごまかすしかねえなと思って、ずっとごまかしてて。

――そしたら知らないあいだに評価が上がって、雑誌とかに載るようになってきて。

渡辺 そうなんですよ。BIKKEとか評価高いし、ヒロシくんもそうだし、俺はべつに大丈夫だなと思ってたんですけど。でも勉強すればするほど弾きたくなりますよね。それからどんどん楽器やるようになって。ちょうどサンプリングNGの時代になったんで、じゃあ自分である程度、ヒロシくんがサンプリングしたヤツを生で全部やるか、みたいな。それで、ちゃんとミュージシャンになっていったような、そういうところはありますね。

取材・文/吉田豪

吉田豪(左)と渡辺俊美(右)
吉田豪(左)と渡辺俊美(右)
撮影/河西遼

【吉田豪インタビュー】

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渡辺俊美プロフィール

1966年生まれ。福島県出身。90年に結成されたTOKYO No.1 SOUL SETのギター、ヴォーカル、サウンド・プロダクション担当。00年にはソロプロジェクトTHE ZOOT16を経たバンドスタイルの渡辺俊美&THE ZOOT16、10年には山口隆・箭内道彦・松田晋二とともに猪苗代湖ズを結成。22年からは帽子を軸としたハットブランド「HEADS」を手掛けている。

記事注釈

(注20)川辺ヒロシ…67年生まれのDJ、SOUL SETのトラックメイカー。様々なアーティストとのユニットや、プロデュース、リミックス、映画劇伴音楽など多岐にわたって活躍している。 

(注21)BIKKE…68年生まれ。SOUL SETのヴォーカル、作詞を担当。undercurrentの斉藤哲也と、高野寛とともにNathalie Wiseとしても活動。CMナレーションなどの声の仕事も多数。 

(注22)東京セックスピストルズ…アパレルブランド・UNDERCOVERのデザイナーである高橋盾と、BOUNTY HUNTERの岩永ヒカルらによるピストルズのカバーバンド。 

(注23)ヒカル…68年生まれ。95年から始めたブランド・BOUNTY HUNTERの創業者。

(注24)NIGO…70年生まれ。A BATHING APEやHUMAN MADEの創業者。21年からKENZOのアーティスティック・ディレクターに就任。

(注25)ドラゴン…68年生まれ。SOUL SETの初代メンバー。脱退後も音楽以外にもデザイナー、クリエイティブ・ディレクター、大型フェスのプロデューサーなど多才な活動をしている。 

(注26)いっちゃん(LOW IQ 01)…70年生まれ。94年結成のバンド・SUPER STUPIDを経て、99年からソロ活動を開始。 

(注27)横山健…69年生まれ。Hi-STANDARDのギターとしてデビュー。PIZZA OF DEATH RECORDS代表取締役社長。

(注28)佐藤タイジ…67年生まれ。86年にTHEATRE BROOKを結成。野外フェス「中津川THE SOLAR BUDOKAN」を主宰している。 

(注29)フランク・ザッパ…40年生まれのアメリカのミュージシャン。非常に多作。93年に死去。 

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