2025-05-17 09:00

【『持っている人』&『J-POP丸かじり』W刊行記念対談】川谷絵音×西寺郷太、音楽について語るときに僕達の語ること

川谷絵音(写真奥)と西寺郷太(写真手前)
川谷絵音(写真奥)と西寺郷太(写真手前)
撮影/廣瀬拓磨

なぜ書く/語るのか

――川谷さんは『持っている人』の中で小学生のころはJ‐POP博士と言われていたというエピソードを披露されていました。曲の背景を掘り下げたりするようなことは当時からしていたのでしょうか?

川谷:いやいや、ぜんぜん。本当にただただベストテンに入っていたような曲を借りて聴いていただけなので。昔と今のランキングを交互に紹介する『速報!歌の大辞テン』が大好きでしたね。あの番組を通じて音楽に詳しくなったみたいなところもあるので。

西寺さんの本の中で出てくるアーティストでは少年隊だったり、昭和の曲に関しては特にそうです。当時は最新の曲が好きで昔のランキングは早く終わってほしいと思っていましたけど(笑)。

――西寺さんの『J‐POP丸かじり』でライムスターの宇多丸さんが「評論する、作る、話すは全部一直線」とコメントしていたのが印象的でした。川谷さんも著作で「360度の円にはなくてはならない要素」と書かれていましたが、ご自身の表現活動の中で音楽の紹介や解説をどのように位置付けていますか?

川谷:やっぱりそれで知ることも多いというか、『EIGHT‐JAM』みたいな番組では深掘りしないといけないので必然的に詳しくはなりますね。やる前はいつも気がかりなことが多いというか、ファンの方が見るので変なことは言わないようにしようとか、そんなことばかり考えちゃってます(笑)。

もともと『EIGHT‐JAM』には普通にバンドとして出ていたし、最初は即興の曲作りみたいなことをずっとやっていたんですけど、どこかのタイミングで解説とかをするようなことになって。気づいたら音楽を解説する人みたいになっていましたね。毎年、年間ベストテンを発表するのはちょっと恥ずかしいんですけど、そのお陰でより曲を聴く動機が増えたので、自分にとってはプラスになってますね。

でも色々な音楽を掘り下げて語りたいみたいな強い欲求っていうのはあんまりないかもしれないです。仕事だからテレビの前で語っている側面が強いので。音楽を「好き」以外の言葉で表現するのって難しいじゃないですか。ただ、好きな音楽は本当にいっぱいあるから、それをインプットとして自分の作品に落とし込めればいいかなって。音楽の記事を読んだり、人が選んだランキングを見るのは好きなんですよ。SNSの音楽アカウントをいっぱいフォローしていて、その人たちの年間ベストとかを見るのはすごく好きです。レビューもよく読んでいましたね。学生時代から『PITCHFORK』はずっとチェックしていました。点数とかは僕は付けられないですけど、見る側としてはやっぱりわかりやすいじゃないですか。このアルバムはこんな点数なのか、みたいな。娯楽としての楽しさがありました。

西寺:僕が子供のころはまだインターネットがない時代で。小学生のころによくやっていたのが、自分の周りに音楽好きを増やしたかったからカセットテープに好きな曲を入れてみんなにプレゼントしていたんですよ。そうしたら周りの奴らがみんな音楽に詳しくなって。小学生でもプリンスとかめっちゃ好きになってるんですよ。

でも、彼らは結局僕からしか情報を得ていないから僕が教えたことで止まってるんです。僕が上京したのは自分より音楽に詳しい人に会いたいと思って出てきたところが大きくて。東京に行けば音楽が大好きで詳しいミュージシャン志望の仲間が必ずいるはずだ、バンドが組めるだろうと。だから、僕の場合は自分の周りに自分の好きな音楽を好きな人を増やしたい、というところから今に至る活動が始まっているんだと思います。

ただ、日本の音楽について書くことはずっと断っていたんですよ。自分も30年近くプロのミュージシャンとして活動してきたので比べて嫉妬したり、素直に受け止めてジャッジ出来る自信が無くて。それでも読みたいって言ってくれる人がいて、重い腰を上げて書いたものを集めたのが今回の本なんです。

だから僕も日本の音楽について喜んで語っているわけでもないというか、身を切ってしゃべっているところはあって。「お前、なんやねん!」ってなるじゃないですか。たとえば歌詞のことを話していてもお前はそれだけのことができてるのかって言われるかもしれない。でも、ASKAさんの話もそうだけど自分が聞かないと世に出なかったエピソードとかもたくさんあるんですよ。佐野元春さんがどうやって歌詞を書いているかっていう話だったり、筒美京平さんの曲作りのことも、さっき川谷さんが話していた長瀬くんのこともそうだけど、そういう使命感みたいなものはあると思っています。いまの僕なら書いてもいいかなって。そういうところにシフトした感じはありますね。

取材・文/高橋芳朗

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川谷絵音(写真左)と西寺郷太(写真右)
川谷絵音(写真左)と西寺郷太(写真右)
撮影/廣瀬拓磨

川谷絵音プロフィール

1988年、長崎県出身。indigo la End 、ゲスの極み乙女、ジェニーハイ、ichikoro、礼賛のバンド5グループを掛け持ちしながら、ソロプロジェクト「独特な人」「美的計画」、休日課長率いるバンドDADARAYのプロデュース、アーティストへの楽曲提供やドラマの劇伴などのプロジェクトを行っている。

西寺郷太プロフィール

1973年、東京生まれ、京都育ち。NONA REEVESのシンガー、メイン・ソングライター。音楽プロデューサー、作詞・作曲家としても活動。著書も多く、代表作に『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』(新潮文庫)、『プリンス論』(新潮新書)、自伝的小説『90’s ナインティーズ』(文藝春秋)など。2024年、公式YouTubeチャンネル『NGC』を開設。

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