2026-08-21 16:00

“昆虫ハンター”牧田習、東南アジアでの密漁問題と気候変動を報告 エコツーリズムが鍵に

昆虫ハンター(昆虫博士)として世界を股にかけて活躍する牧田習氏
昆虫ハンター(昆虫博士)として世界を股にかけて活躍する牧田習氏
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2025年、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了、東京大学総合研究博物館ならびにオスカープロモーションに所属し、“昆虫ハンター”としてテレビでも活躍している昆虫博士・牧田習(まきた しゅう)氏が、8月1日~9日にかけて行った海外調査と国際学会での研究発表について語った。

兵庫県宝塚市出身の牧田氏は、昆虫分類学や環境昆虫学を専門とし、東南アジアを中心に10年以上フィールド調査を続けてきた。今回の取材会では、インドネシア・グヌンハリム・サラク国立公園での昆虫調査、そしてタイ・プーケットでの国際学会発表という2つの活動を報告した。

インドネシア・グヌンハリム・サラク国立公園での昆虫調査

牧田氏が訪れたのは、ジャカルタから車で5~6時間ほど山道を進んだ先にあるマラサリ村。原生林と里山が混在する地域で、昼は蝶やトンボの調査、夜はライトトラップによる昆虫採集を行った。

昼間の調査では、目玉蝶やアゲハの仲間、森の環境によって姿を変える多様なトンボなど、豊かな昆虫相を確認。夜間のライトトラップでは、日本でも人気の高い「コーカサスオオカブト」や、黄金色に輝く「オウゴンオニクワガタ」など、希少種を含む多くの昆虫が集まったという。

「ジャカルタ近郊ということで、正直ここまで多様性が残っているとは思っていませんでした」と牧田氏は驚きを語る。

取材に応じた牧田習氏
取材に応じた牧田習氏

浮かび上がった“密漁”の実態

しかし調査の中で、深刻な問題も見えてきた。現地の聞き取り調査によって、現在もカブトムシやクワガタの“密漁”が続いていることが判明した。

1頭当たりの売買価格は約1500円。現地の平均月収が3万円ほどであることを考えると、村人にとって大きな収入源となる。時期によっては1日に何十頭も採れることもあり、密漁は“やめられない状況”になっているという。

さらに、密漁された昆虫の多くが 日本へも流れている可能性が高いことも分かった。「日本は世界でも有数の“昆虫好きの国”。需要がある以上、違法採集された昆虫が流入してしまう可能性は高い」と牧田氏は指摘する。

密漁を止めるために必要なのは「エコツーリズム」

牧田氏が提案するのは、昆虫を“売る”のではなく、昆虫を観察し、環境を学ぶための“エコツーリズム”へ転換すること。

「マラサリ村は首都圏から近いのに、驚くほど豊かな昆虫が見られる。ここを“環境教育の場”として訪れる人が増えれば、村の経済が潤い、密漁に頼らない生活が可能になるはずです」

昆虫を守ることが、村の未来を守ることにもつながる。牧田氏は、マラサリ村が“世界の密漁問題を解決するモデルケース”になり得ると期待を寄せた。

取材に応じた牧田習氏
取材に応じた牧田習氏

タイ・プーケットでの国際学会発表

インドネシアでの調査を終えた牧田は、タイ・プーケットで開催された国際学会「SAGE2026」に参加。「南日本におけるチョウ相の変動と将来予測」をテーマに口頭発表を行った。

牧田氏が研究対象とするのは「迷チョウ」と呼ばれる蝶。台風や偏西風などの大気現象によって、本来の分布域とは異なる地域に飛来する蝶のことだ。

過去60年分、5万件以上の記録を解析した結果、多くの蝶が南から北へ分布を拡大していることが判明。さらに将来予測モデルでは、地球温暖化の影響により、今後も分布域が北上する可能性が示された。

「蝶は環境変化に敏感な生き物。分布の変化は、気候変動の“見える化”にもつながります」

生物多様性を守るために

インドネシアでの密漁問題、そして日本で進む蝶の分布変化。牧田氏の調査と研究は、どちらも“生物多様性の危機”を示している。

「昆虫は小さな存在ですが、環境の変化をいち早く教えてくれる大切な指標です。東南アジアでも日本でも、持続可能な自然との向き合い方を考えていく必要があります」

牧田氏は、研究者として、そして昆虫ハンターとして、これからもフィールドに立ち続ける。

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