2023-10-02 10:00

型破りディレクター・マッコイ斉藤がつづる「非エリートの勝負学」

「BUBKA11月号」BOOK RETURNに登場しているマッコイ斉藤氏
「BUBKA11月号」BOOK RETURNに登場しているマッコイ斉藤氏
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ブブカがゲキ推しする“読んでほしい本”、その著者にインタビューする当企画。第59回は、『非エリートの勝負学』の著者であるマッコイ斉藤氏が登場。高卒、コネなし、知識なし。型破りディレクターが初めて明かす、反骨のバックヤード──。無難なバラエティなんて面白いわけがない。

誰もが驚くふざけ方

――本作は、マッコイさんの仕事論や勝負論を綴るとともに、どのようなキャリアを歩んできたかを開陳した自叙伝的な一冊でもあります。

マッコイ斉藤 以前から、こうした本を書かないかといったオファーはあったのですが、ずっと断っていたんですよ。自分の人生に説得力があると思ってないし、お笑い崩れみたいな僕が、「何を偉そうに語ってんの?」って。でも、時代が変わってバラエティのあり方も変わってきた。SNSや動画配信サービスが台頭して、テレビがトップじゃなくなった。僕らの時代にまかり通っていた方法が「古い」と言われるようになる、と。だったら自分たちが通ってきたやり方……自分の経験を1冊にまとめる意味はあるのかなと思ったんですね。僕自身、ちょうど50歳を過ぎたこともあって、区切りとしてちょうどいいのかもしれないなと。今のディレクターや、業界の人たちに伝えておきたいという気持ちがあったんですよね。

――マッコイさんは、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』を制作していたIVSテレビ制作に入社し、キャリアをスタートさせます。AD時代のエピソードを読むと、あの時代のバラエティがいかにピーキーだったか伝わってきます(笑)。

マッコイ斉藤 死ぬほど辛かったですからね。昭和のパ・リーグみたいな世界だった。自分が一番面白いと思っているような連中ばかり集まっているから、とんがりまくっていました。それもそのはずで、『元気が出るテレビ!!』は、日本一お笑いが好きな人たちが見ている番組で、その中心に日本一のお笑い芸人であるビートたけしさんがいた。自分の考えた企画でたけしさんを笑わせたい――その熱量って異常だった。

――マッコイさんは、そのネーミングからテリー伊藤さんをリスペクトしていると思われがちですが、当時ディレクターをされていた宗実隆夫さんをリスペクトしていたと明かしています。

マッコイ斉藤 僕の基礎を作ってくれたのは、ムネさんのおかげです。20歳でADになって、25歳でディレクターに昇格できたのは、師匠であるムネさんがいてくれたから。「責任は俺が取るから、お前は責任を持って面白いものを撮ってこい」なんて言ってくれる理想の上司でした。ムネさんからはいろいろなことを学びましたけど、テリー伊藤からは何も教わってない(笑)。そもそも末端のADを相手にするような人じゃないし、末端のADなんて当時はゴミみたいに扱われていましたから。一つだけ覚えているのは、「ダンス甲子園」の撮影をするためにステージの床を拭いていたら、いきなり「お前、殺すぞ」って言われたことくらい。ツカツカツカってステージに上がってきて、突然、「お前、殺すぞ」ですよ。掃除してんのに、なんで殺されなきゃいけねぇんだよって。あのときから嫌いですね。

――ははははは! “マッコイ”という名前は、極楽とんぼが名付け親なんですよね?

マッコイ斉藤 極楽のライブVを作ったら、そのエンドロールで僕の名前が何の前触れもなく「マッコイ斉藤」になっていた。たしか山本さんが言っていたと思うんですけど、「テリー伊藤みたいな有名な業界人になれ」ってことらしくて。それはそれで面白いなと思って、結局、その名前で活動して今にいたる。でも、あこがれてはいない(笑)。

――25歳でディレクター。異例の抜擢に応えるように、番組でも結果を出していきます。しかし、日テレの社員だったADと揉めてIVSを辞めることに……。

マッコイ斉藤 今思えば、そりゃクビになるよなって思います。自分が山形の小さな村から出てきた、何にも持っていない人間だったっていうコンプレックスもあって、「負けるか」って気負いもあった。あの時代って武闘派ばっかりで、タレントのマネージャーさんたちも武闘派が多かった。たとえば、集合場所を伝える際にFAXで地図を送るんですけど、潰れちゃって分かりづらくなる。「手書きで書けよ、バカ」とか普通にすごまれる世界で、手書きで送ると「分かりづらいんだよ、バカヤロー!」とか怒鳴られる理不尽な現場ですよ。ところが、1~2年と経っていくと優しくなって、「お前がやるときは、うちのタレントを使っていいからな」とか言ってくれたりする。信頼関係を築くまでのプロセスが、自分を鍛えることと直結していた時代というか。

――フリーのディレクターとして活動する中で、極楽とんぼの加藤浩次さんやおぎやはぎさんの矢作兼さんと交流を持つようになります。そして、『めちゃ×2イケてるッ!』でブレイクした加藤さんから誘われる形で、『飛び蹴りヴィーナス』(のちの『飛び蹴りゴッデス』)をスタートします。しかも、総合演出という飛び級のポジションです。

マッコイ斉藤 僕は、本当に運がいい人間なんです。テレビ局の局員さんからしたら、僕は大嫌いなタイプの人間の一人だと思いますよ。高卒のくせに、「俺が一番お笑いが分かる」みたいな顔をして、大した実績もないのに番組の総合演出をやる。局員は、いい大学に入って狭き門をくぐり抜けてようやく勝ち取るのに、俺たちみたいな非エリートから上から目線で言われる。納得がいかなかったと思います。

――とは言え、『飛び蹴りヴィーナス』は、深夜番組の中でも突出した人気を誇るようになります。僕も欠かさず見ていた一人ですが、天狗の格好をしてチェーンソーでゴルフ場の木を伐採するなど、気が触れたような企画ばかりしていたイメージです(笑)。

マッコイ斉藤 あれはゴルフ場の責任者が、「切っていい」って言ってくれたので切ったんですけど、テレビ局には毎回ロケの内容を伝えずに出かけていました。ですから、放送後に局からしょっちゅう怒られていましたね。当時は、今みたいにコンプライアンスもうるさくない時代でしたから、なんだかんだでやりたい放題できたんですよね。当時、テレ朝のエース女子アナだった丸川珠代さんに、発声練習と称して「のどちんこ」を連呼させるとか、今やったらセクハラでしかない。現・国会議員にそんなことやらせていたんだから、すごいよなぁ(笑)。

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取材・文=我妻弘崇

マッコイ斉藤|テレビディレクター。演出家。「株式会社 笑軍」代表取締役。お笑い番組『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』でディレクターデビュー。深夜番組を中心に活動後、『とんねるずのみなさんのおかげでした』の総合演出に抜擢されると、「全落・水落 シリーズ」「男気ジャンケン」などのヒット企画を世に送り出す。YouTubeでは『貴ちゃんねるず』、AbemaTVでは『芦澤竜誠と行く ぶらり喧嘩旅』『格闘代理戦争』などを演出。

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