2021-12-01 05:00

プロ野球界において、「落合博満」こそ、最高のエンタメだ。〈ノーカット版〉

――その行間を読ませるという部分ですが、落合は確信犯的にそれをやっているんですかね? たとえばキャンプイン初日に紅白戦(※9)をやったりとか、川崎憲次郎の開幕投手(※10)とか。勝利至上主義的に書かれてるけど、実は半分ぐらいエンタメを意識してるところあるんじゃないですかね?

中溝 所々にフックを入れてきますもんね。

伊賀 でも、やることにロジックがちゃんとある。球団のどこから情報漏洩するかを1年かけて探ったり。

――あれもすごい話ですよね。開幕投手を秘密にすることで、それを撒き餌にしてスパイを炙り出すって、そんな監督いないですよ。例の山井から岩瀬(仁起)への継投も、今までの8イニングの過程を除いて、9回裏という1イニングだけを見て考えたら、抑える確率が高いのは絶対に岩瀬だよねっていうのは、誰にでもわかることだけど、それを実際に行うと、あまりにも合理的すぎて逆にエンターテインメントになる。

中溝 落合はUWFですよ。どんどんシュートに近づけていったら、それがプロレス的なエンタメになっていったというのに近い。落合はもしかしたら、UWFの系譜にあるのかもしれない。「落合、Uはお前なんだよ!」(笑)。

伊賀 あははははっ! いやぁ、何度も言いますけど、やっぱり落合にはもう1回、監督やってほしいっすね。横浜みたいなファンサービスが売りの球団の監督を落合がやったら、すげぇ面白くなると思う。中日には立浪(和義)がいるし。

中溝 そして、タツノリとの危険なマッチアップ。

伊賀 落合をブレンドするだけで、セ・リーグの激アツなスパイスになるんすよ。

――それにしても、巨人ファンのお二人にこんなにも落合博満と『嫌われた監督』が刺さっているとは思わなかったので、今日は少し驚きました。

中溝 落合本、本当に面白いですからね。この2カ月くらいで落合系の本の値段が一気に上がってるんですよ。『嫌われた監督』効果で、軽いブームになってる。『なんと言われようと俺流さ』っていう80年代の本が、今ヤフオクで2万円するんです。

中溝 あと、最初に伊賀さんが『戦士の食卓』とセットで読んでほしいって言ってましたけど、たしかに落合本は続けて何冊か読むと、もっと面白いんですよ。いろいろ見えてくる。たとえば、『戦士の食卓』に落合は映画館で映画を観るときは、後ろの席の両端のどっちかに座るって話が出てくるんですよ。理由は視線を動かしたくないから。

伊賀 それってアレですよね。

中溝 「定点で見続ける」ってやつです。アライバの微妙な変化に気づいた話は、映画館で見てた経験を落とし込んでる。

――なるほど! 『嫌われた監督』の中で、落合が度々語る「毎日、選手を定点で見続けることの重要性」の原点は、学校をサボって通っていた映画館にあったんですね。

中溝 そうそう。そういうのが見えてくるんです。落合本は何冊か続けて読むことをオススメします!

(対談日:2021年11月12日)

キャンプイン初日に紅白戦(※9)
2004年就任初年度のキャンプイン初日に異例の紅白戦を敢行。降雨で5回終了となったが主力10投手が登板した。当時は前代未聞と騒がれた。

川崎憲次郎の開幕投手(※10)
2001年にヤクルトからFA権を行使して中日に移籍してきたものの、右肩痛のため、3年間も一軍のマウンドから遠ざかっていた川崎を開幕投手に指名した。

いが・だいすけ
1977年、東京都生まれ。22歳でスタイリストとしての活動を開始。映画『ジョゼと虎と魚たち』『モテキ』『バクマン。』『ハード・コア』『おおかみこどもの雨と雪』『宮本から君へ』などの作品を始め、演劇、広告、ミュージシャンなど幅広く活動中。また、音楽や映画、印刷物にも造詣が深いことでも知られる。WEB連載『文春野球コラム ペナントレース2020』の巨人担当としてコラムの執筆も行っていた。

なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)
1979年、埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。ベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、初の娯楽小説『ボス、俺を使ってくれないか?』(白泉社)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)など著書多数。『令和の巨人軍』(新潮新書)が好評発売中!

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