黒沢薫×中西アルノが語る“景色が見える歌” 『Spicy Sessions』特別編で深まった表現の手触り

ゴスペラーズの黒沢 薫と乃木坂46の中西アルノがMCを務める音楽番組『Spicy Sessions(スパイシーセッションズ)』が、10月17日(土)夜11時30分から「TBSチャンネル1最新ドラマ・音楽・映画」にて放送される。10月20日(火)に東京・TACHIKAWA STAGE GARDENで開催される「Spicy Sessions -THE LIVE- 2026」を記念した特別編となる今回。ゴスペラーズをデビュー当時からよく知り、数々のアーティストのオフィシャルライターを務める音楽ライターの伊藤亜希氏によるオフィシャルインタビューが到着した。
――約1年ぶりのMCスペシャル、いかがでしたか?
中西アルノ:一つ一つが結構、難しかったですね。
――「WINDING ROAD」を歌い直していましたが、観ていて、どこが間違っているのか分からなかったです。
黒沢薫:あの曲は、ちょっとしたギミックがいろいろあるんですよ。例えば、ある部分だけ、拍が狭まっているとか。そこが最初のテイクではうまくいかなったんですよね。三声のハーモニーを二声でやるから、そっちに気持ちがいって、他のところがおろそかになるな……って思っていたんですけど、本当にそうなっちゃいましたね(笑)。でも、やり直せるっていうのを公言してるところも『Spicy Sessions』のいいところですから。ダメだったらやり直す!(一同笑)

――「WINDING ROAD」は、カントリーのイメージが強かったんですが、バンドのピアノがホンキートンクな感じで。ジャンルとして、ガンボ(ジャズ、ブルース、ファンク、R&Bなど、アメリカ南部の多彩な音楽を混ぜ合わせた、躍動感あふれる音楽スタイル)も入ってるんだと発見がありました。
黒沢薫:入ってる、入ってる。それは僕も思いましたね。カントリーっぽいって思うのは、きっとコブクロの2人にそのルーツがあるからで、意外とゴスペルとかそういう感じもあるんだよね。
――原曲は、男性2人、女性1人の三声ですが、男性パートの二声を黒沢さんが担うというミラクルな構成でしたね。下でハモっていたかと思えば上に、すぐまた下に……と、かなり変えてましたよね。
黒沢薫:そうですね。どの部分で、どの音を取捨選択するかってことは考えましたね。二声なんだけど、三声っぽく聴こえるように。
中西アルノ:さすがです!
黒沢薫:オリジナルでも、コブクロの2人は、上に行ったり下に行ったりしてるんだけど、その中で聴いた人が一番分かりやすいハーモニーに持っていくっていうのは考えました。
――“分かりやすいハーモニー”とは?
黒沢薫:「ここ、ハモってますね。響いてますね」ってすぐ分かること。そうなるように、実はオクターブを変えたりしてたんですよ。アルノさんが思い切ってパーンって歌ってくれるから、こちらも思いっきりハモりにいけた。
中西アルノ:私もこの番組でいろいろ経験してきて、自分なりに分かってきたところもたくさんあって。黒沢さんが2人分やるという時点で、絢香さんのあのグルーブ感とかも自分の中に落とし込みつつ、ガッツリ自分が歌っていかないとなっていうのは、すごくありました。
――「点描の唄」はいかがでしたか? この曲でも中西さんが、声を張って歌っていたのが印象的でした。
中西アルノ:この曲の歌詞に合わせることを意識しました。最後の<終わるな 夏よ、終わるな>は、きっと、願いであり、叫びであり、祈りだなって思ったんです。そういう自分の解釈を盛り込みつつ、歌いました。

――リクエストした「壊れかけのRadio」を目の前で聴いていかがでした?
中西アルノ:もう最高でした! 3人の時と、全く違っていました。違うだろうなって思っていましたけど、想像を超えて、歌の中に見えてきたものがあったというか。繊細で、でも、感情的になる……感情があらわになっていく中で、本当に景色が見えてきたんです。1人で歌われたのでよりこう……黒沢さん自身が思っているようなことのように、当に見えてきて。後半に向かって、パワーもすごくて。感情がとめどなくこぼれてくる感じとか、“こういうのが聴きたかったんだよね”という黒沢さんがいて、それが本当にうれしかったです。
黒沢薫:それは僕もうれしいなぁ。例えばカラオケで歌う時なんてさ、歌い散らかしてるわけじゃん。基本は「俺これ歌えるぜ」みたいな感じで歌ってるわけだから。

――きっと、ものまね入ってきますよね(一同爆笑)。今回の収録にかかわらず、リハーサルでもちょいちょいものまねして場を沸かせてますし。
黒沢薫:出るよね、ものまねね(笑)。でもさ、やっぱり自分で向き合って「この曲どうやって歌おうかな」って思った時に、それこそアルノさんが言った通りだけど、聴いていて、その人の中に景色が浮かぶようにと思ったのは一つ。この曲の歌詞、情景が浮かぶ言葉がちょいちょい出てくるからね。
――<祭りの後>とか、こんな歌詞、入ってたんだと思いました。
黒沢薫:そこ、結構、重要なところなんです。叙情的な歌詞なんですよね。言葉の選び方に、和を感じるというか。ノスタルジーみたいな感じで歌いつつ、最後にやっぱりそれを生の感情に持っていこう……というのは考えて歌いました。
――黒沢さんが中西さんにリクエストしたのが、ミュージカル『レ・ミゼラブル』の劇中歌「On My Own」でしたね。
黒沢薫:この曲、第3回目の時は、アルノさんにとっては三重の挑戦があった。ミュージカルナンバー、英語、その上、テンポが一定じゃない曲を歌うという三重。それを自分に課して、心意気だけじゃないものがしっかり出ていたので、本当に素晴らしかったんですよね。そこからアルノさんは、歌い手としてどんどん変わっていって、もう今、僕からのエクスキューズもいらない人だと思っているんです。純粋に、自分がいいと思う歌い手が、今どういうふうに歌ってくれるのかなと。いちファンとしての興味で、この曲を選んだんです。今日聴いて、やっぱりちゃんと成長してるっていううれしさもありつつ、英語の曲でも世界観と情景が見えてくるのは、素直にすごいなと思いましたね。
中西アルノ:私、本当に『レ・ミゼラブル』が好きで。歌詞の意味とか、これを歌っていたエポニーヌの気持ちとか。そこの理解を今回はすごく細かくしてきました。エポニーヌにとって、恋がなくなったことを実感していく……歌う中で「ああ、もう終わってしまった恋なんだ」っていうのを実感していくので。そこはミュージカルの力を借りて、自分自身がエポニーヌになったくらいの気持ちで歌おうと思っていました。
黒沢薫:なるほどねぇ。いや、面白いね。エモーションと、切なさみたいなもののバランス。切なさ、憂いみたいなところは、第3回の時点でもう完璧だと僕は思ってたんだけど、今回はエモーションの部分もグワッって上がってきたから、憂いとのコントラストが前面に出てた。僕は、横からだから表情までは分からないんだけど、観客の皆さんがアルノさんに見入ってたから、そういう表情をして歌っているんだなと思ってた。

――そして、ライブがより待ち遠しくなった「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」。
黒沢薫:これはアルノさんの選曲。打ち合せで、番組のプロデューサーから「お客さんともセッションをしたい」って言われて。最初はどういうことでしょうかって思ったけど(笑)、一緒に盛り上がれる、一緒にコール&レスポンスやシンガロングで作り上げる楽曲が欲しいってことだった。アルノさんがいなかったら、もっとこう……昭和や平成感の強い曲になっていたんじゃないかなっていう(一同笑)。いろいろほかのアーティストの候補を出していく中で、やっぱないな、そっちもないなってなっていたところに、アルノさんが「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」を出してくれて。全員が「いいじゃん!」ってなった。で、原曲から掛け合いの部分を増やして、それを今日の収録でやったんですけど、僕の観客に向けての鬼コーチぶり、良かったでしょ?(笑)
中西アルノ:はい! 観客の皆さんの「愛と平和」のニュアンス、とても大事だと思いますし、言い方の勢いで、こちらもより上がるというか。

――「愛と平和」という言葉自体、ストレートでドメスティックな言葉ですからね。それを楽しんでレスポンスするって、演者の力量も問われる。
黒沢薫:そうなのよ。でも今「愛と平和」って言うことが、人として大事なことのような気もしてるんです。
――<何も変わらないんだぜ>というフレーズで、中西さんが見せた、スポークンワードからのシャウト、カッコよかったです。
黒沢薫:あれよかったよね。スポークン的なアプローチって、アイドルは結構やると思うんだけど。乃木坂46も結構やるんですよね。でも、アルノさんの<何も変わらないんだぜ>は、乃木坂46とは、違う感じだった。
中西アルノ:そうですね。ああいうのは、やったことないですね。
黒沢薫:だからすごく目立ったし、その後のシャウトもまた効いたんだよね。スポークンもやるけど、ちゃんと普通にシャウトもするっていうのが超かっこよかった。

――あとは、黒沢さんの絶叫も見どころでしょうか。
黒沢薫:あぁいう絶叫ができる人、R&Bとかソウル界隈では、あんまりいないらしいです。やっぱもうちょっとメロウだったり、ファルセットだったりって表現があるから。
――ジャンル文脈で、高音域のアプローチって本当に違いますよね。今回はロック文脈ですもん。もっと細かく言うとハードロック文脈。
黒沢薫:そうそう、ハードロック。そこはできるので、いけるなと思って思いっきりやりました。

――最後に「Spicy Sessions -THE LIVE- 2026」に向けて抱負をお願いします。
中西アルノ:『Spicy Sessions』へのきっかけ、入り口になるようにもしたいですし、もっと自分自身の音楽の可能性を広げられるようなライブにもしたいです。
黒沢薫:去年のライブが、テレビの収録とライブの中間だと思うんですよ。今回もそこは変わらないけど、もっとライブ寄りにしたいなって思ってます。躍動感とか、イレギュラーをこちらもお客さんを楽しめるような。そういうものをちょっとでも増やして、よりライブ感を出したいと思ってます。
中西アルノ:ライブだともっとこう演奏・歌はもちろん、お客さんともダイレクトにぶつかり合えそうな感じが。
黒沢薫:そうだね。お互いぶつかり合い、支え合う感じにできればと思ってます。
放送情報
<放送日時>
『Spicy Sessions 黒沢 薫&中西アルノSP 2026』
2026年10月17日(土)夜11時30分~深夜0時30分
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