黒沢薫×中西アルノ、デュエットの“深化”と会場セッションが生んだ一体感『Spicy Sessions』特別編

ゴスペラーズの黒沢 薫と乃木坂46の中西アルノがMCを務める音楽番組『Spicy Sessions(スパイシーセッションズ)』第31回が、10月17日(土)夜11時30分から「TBSチャンネル1最新ドラマ・音楽・映画」にて放送される。10月20日(火)に東京・TACHIKAWA STAGE GARDENで開催される「Spicy Sessions -THE LIVE- 2026」を記念した特別編となる今回。ゴスペラーズをデビュー当時からよく知り、数々のアーティストのオフィシャルライターを務める音楽ライターの伊藤亜希氏によるオフィシャルリポートが到着した。
黒沢と中西のデュエットやソロ歌唱、さらに観客もセッションに参加する新企画「会場セッション」に初挑戦した今回。いつもとはひと味違う収録となった。
バンドメンバーによるアドリブセッションからスタート。各楽器が音を出し、互いのフレーズに反応しながら、音楽が形になっていく。セッションの楽しさを凝縮したような演奏に導かれて、黒沢と中西が登場する。
-THE LIVE- 2026
冒頭では「Spicy Sessions -THE LIVE- 2026」の話題に。黒沢から、初回(2025年10月開催)の2倍のキャパシティとなる会場で、昼夜2公演を開催することや、両公演ともチケットが完売していることが伝えられた。中西は「気合十分です。去年やらせていただいてから、さらにレベルアップした姿を見せないと」と意気込みを語る。番組から生まれた“音楽をもっと楽しむスタイル”が、さらに大きなステージへと広がっていく。その喜びと期待が伝わってきた。
「WINDING ROAD」

まずは、これまで番組の中で“お試し”として少し歌った楽曲を2曲、MC2人でデュエットする。「3人で歌う曲を2人でやるってだけで、だいぶ忙しいんですが」という黒沢の前振りから披露するのは、絢香×コブクロの「WINDING ROAD」と発表。歌割りを確認しながら、バンドとともにアレンジを組み立てていく。黒沢が2人分のボーカルとハーモニーをどのように表現したのか、さらに2人が見せた貴重なフェイク合戦の様子は放送でのお楽しみに。
「点描の唄」

2曲目は、中西が「どっちがメロでどっちがハモリか分からなくなる経験をした」と語った、Mrs. GREEN APPLE「点描の唄」。第8回の放送(2024年8月)では、黒沢と中西がピアノの伴奏だけで1コーラス歌ったが、今回はバンドアレンジでフルサイズ歌唱。空間に音を浮かび上がらせるように、中西が歌い出す。黒沢は平メロでファルセットを繰り出すなど、高音域に対する多彩なアプローチをみせる。ゴスペラーズの中で担うハイトーンというポジションと、『Spicy Sessions』で培ってきた、幾多のジャンルへの柔軟性を、高音域だけでしっかりと感じさせるあたりは、まさに彼の真骨頂といえるだろう。
“中西アルノの成長ドキュメント”が進化
番組がスタートした時には、“中西アルノの成長ドキュメント”という要素が色濃く出ていたが、1年半を過ぎた辺りから、そこに“選択肢を増やし続ける黒沢 薫”という別のドキュメントが加わった。黒沢は多くのジャンルを横断することで、これまで自分の中でなじみが薄かった音楽に触れ、おそらくその背景をしっかり深掘りし、自分の中に落とし込んできたのだろう。黒沢の歌に対する選択肢が、収録を重ねる度に増えている。百戦錬磨のボーカリストが見せる、柔軟性。この柔軟性こそ『Spicy Sessions』を支えているのだと思う。歌い終えた2人に客席から喝采が起こる。「この曲は音楽史に残るデュエットソングになると思います」と黒沢が明かす。
「壊れかけのRadio」

続いては、これまで2人が歌ったソロ歌唱曲の中から、互いに聴きたい曲をリクエストするコーナーへ。まずは黒沢の歌唱曲が一覧で紹介された。徳永英明の「レイニー ブルー」、サザンオールスターズの「いとしのエリー」、ポルノグラフィティの「アゲハ蝶」、藤井風の「帰ろう」など、さまざまな時代の楽曲が並ぶ。

ここで中西は、一覧にはない曲をリクエスト。それは、第3回の放送(2024年3月)で、Penthouseの浪岡真太郎、大島真帆と黒沢が披露した、徳永英明の「壊れかけのRadio」。中低音の柔らかな響き、言葉を丁寧に置いていくフレージング、そしてサビに向かって広がっていく声のスケール感。黒沢の歌唱は、原曲が持つ郷愁や繊細さを大切にしながらも、単なる再現にはとどまらない。長年にわたり歌声を磨いてきたシンガーならではの深みが、メロディーの一つ一つに宿っていた。
「On My Own」

今度は中西のソロ歌唱を振り返っていく。椎名林檎の「丸の内サディスティック」、ONE OK ROCKの「Wherever you are」、aikoの「カブトムシ」、松田聖子の「SWEET MEMORIES」など、こちらも実に幅広い。この一覧は、中西がこの番組を通じてさまざまな楽曲に挑み、歌い手として表現の幅を広げてきた軌跡だ。黒沢が選んだのは、ミュージカル『レ・ミゼラブル』の劇中歌「On My Own」。前述した第3回で中西が歌った楽曲を、黒沢は今の中西の声でもう一度聴いてみたいとリクエストした。

「On My Own」は、登場人物エポニーヌの報われない恋心を描いたナンバー。単に美しく歌うだけではなく、人物の心情をどのように声に乗せるかが問われる楽曲だ。中西はその世界に入り込み、静かな歌い出しから少しずつ感情を積み重ねていく。柔らかな声の中に孤独や切なさをにじませ、メロディーが大きく展開する場面では、内側に秘めていた気持ちを解き放つように、伸びやかでクリアな声を響かせる。繊細な表現と力強い歌唱を行き来しながら、一つの物語を描いていく中西。過去に歌った楽曲を現在の声で歌い直すことで、その間に積み重ねてきた経験や表現の変化が、しっかりと浮かび上がっていた。
「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」

ラストは新企画「会場セッション」。これまでも観客がコールなどで演奏に加わる場面はあったが、今回はさらに踏み込み、客席も含めた会場全体で一つのセッションを作り上げようというものだ。曲は、中西からの提案で、サンボマスターの「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」。ライブやフェスで観客とアーティストが一体となる楽曲としても知られる、エネルギーに満ちたロックナンバーだ。客席に歌詞カードが配られ、参加するパートの説明が始まる。黒沢が客席を巻き込みながら練習を進行。いつもはステージ上の音楽を受け取る側だった観客が、一緒に音楽を作る側に。場内の空気が、熱を帯びていく。

そして迎えた本番。バンドがダイナミックなビートを鳴らし、演奏を始めると、黒沢と中西もエネルギッシュな歌声で応えていく。そこに客席からのコールが重なり、スタジオは一気にライブ会場のような雰囲気に。観客の声もセッションを構成する大切な音の一つ。演奏者と観客という境界を越えて、同じ楽曲を共有していく。『Spicy Sessions』が、番組を通して、セッションに新たな息吹を吹き込んでいく。曲が進むにつれて、会場の一体感はさらに高まっていく。

2人の歌声、バンドの演奏、客席からのコール。それぞれが呼応しながら、一つの大きなグルーブを生み出していく光景は、まさに『Spicy Sessions』が大切にしてきたマインドそのものだ。初めての試みを終えた中西も、その熱気を実感した様子。黒沢が思わずお腹が空いたと口にするほどのパフォーマンスとなった。
収録の最後に、改めて「Spicy Sessions -THE LIVE- 2026」への意気込みがMCから語られた。これまで積み重ねてきたセッションの数々が、今度は大きな会場でどのような音楽へと発展していくのか。今回は、その期待を一層膨らませる内容となった。観客も音楽の担い手となった「会場セッション」。歌う人、演奏する人、聴く人。その全てが音楽を介してつながり、予想もしなかったスペシャルな瞬間が生まれる。『Spicy Sessions』の原点と、これからの可能性を同時に感じさせる特別編だった。
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