黒沢薫×中西アルノが語る“ユニゾンの青春” ジャンルを越えて見えた『Spicy Sessions』の現在地

ゴスペラーズの黒沢 薫と乃木坂46の中西アルノがMCを務める音楽番組『Spicy Sessions(スパイシーセッションズ)』が、CS放送「TBSチャンネル1最新ドラマ・音楽・映画」にて毎月放送中。9月26日(土)放送の『Spicy Sessions with辰巳ゆうと』の収録を、ゴスペラーズをデビュー当時からよく知り、数々のアーティストのオフィシャルライターを務める音楽ライターの伊藤亜希氏が取材。今回、そのオフィシャルインタビューが到着した。
──黒沢さん、収録前に「今日は楽しい回になる」とおっしゃっていましたけど、どんな手応えを想像していたんですか?
黒沢薫:どんどんジャンルを越える感じになっているのがまず一つ。それから、いろんなタイプの曲を歌うから、これは大変さもあるけど歌い手としてはとてもうれしいし楽しい。ロック調の曲から、J-POP、演歌まで…って回だったから、今までにない感じになると思って。収録前から結構ワクワクしてたんです(笑)。
──今回、ユニゾンが多めでしたよね。黒沢さんからは「ユニゾンは青春」という言葉も出ました。
黒沢薫:そうだ、「ユニゾンは青春」。ハモるのもいいけど、ユニゾンもいいんですよ。絶対必要。みんなで声を合わせて歌うっていうのはいいものだから。
中西アルノ:これまでいろいろやってきたんですけど、ハモることが正しい時もあれば、正しくない時もある気がして。以前は「ハモりって、あればあるだけカッコいい」くらいに思っていたんです。でも、そうじゃない。それが効いてくる時と、それがないほうがいい時があるんだなっていうのを感じていて。「ボーイフレンド」で、ユニゾンでもめちゃくちゃカッコいいんだって思いましたね。

──アルノさんの中で、今「ハモる」ということはどういう存在になっていますか?
中西アルノ:そうですね。本当に曲によって違うんですけど、その曲が持っている色に、さらに深みを出してくれる存在なのかなって思っています。例えば、ずっとベタッとハモっていると、ちょっと重たく聴こえやすくなってしまう。そうじゃなくて、ポイントでハモりを入れた方が、この曲には効くんだな、とか。特に今年になってからは、ハモりにもいろいろな効かせ方があるんだなと思っています。
──最初のセッション曲はGRe4N BOYZの「キセキ」でした。黒沢さんが別ジャンルに挑戦するという意味では、過去回を振り返っても屈指の新鮮さがありました。
黒沢薫:この番組がなかったら、たぶん、歌ってなかったと思いますね。で、実際に歌ってみると、細かくハモリが入っていたりするし、ユニゾンを大事にしてる。それこそ最後はユニゾンを強くして持っていくというか。あのメロディーライン、みんなでユニゾンで歌うと、めちゃくちゃ気持ちいいのよ。みんなで一緒に歌うための音楽なんだなって思った。すごくフィジカルな音楽だなというのを、今回改めて思いましたね。そういう発見があったので、歌って、すごく得したなという気持ちになりました。
中西アルノ:余談なんですけど、弟の高校の卒業式に行った時、雨の中、野球部の子たちが傘も差さずに、みんなで肩を組んで「キセキ」を歌っていたんですよ。それがめっちゃいいなと思って。今日お二人が歌っているのを聴いていて「これがユニゾンの良さなんだな」って思いました。あの時の光景がすごくよく見えたのは、いろいろな要素があると思うけど、ユニゾンだったこともきっとあるんだろうなって思いました。
黒沢薫:そうなの。しかも、本当に絶妙にちょっとハードルが上がる譜割。全部真っすぐな譜割だったら、たぶん、唱歌みたいになっちゃう。絶妙にちょっと覚えにくくなっているんですよ。歌ったら歌い続けたくなるし、みんなでそろえて歌いたくなるなという曲。ユニゾンって、雑にしたらそろわないわけですよ。そこをぴったり合わせてくる辰巳くんはすごいなと思ったし、やっぱりハーモニーもしっかりできる人なんだな、と。パッと言ったらパッとできる人。

──普段はあまりされないとおっしゃっていましたけど。
黒沢薫:そうですね。演歌はハモらないからね。それこそ歌謡曲で男性と女性が歌う時も、ユニゾンだったり、オクターブユニゾンだったりすることが多いじゃないですか。そうじゃない形で、セッション曲にしていくのが、すごく楽しかったですね。
──続いて、aikoさんの「ボーイフレンド」をセッションしました。aikoさんの歌声には、独特の切なさや、少し鼻にかかったような甘く切ないニュアンスがあると思っているんですけど、アルノさんは今回、そこをどう表現しようと思いましたか?
中西アルノ:以前「カブトムシ」を歌った時(2024年11月放送/第11回)は、aikoさんとはまたちょっと違う方向性で歌おうと考えていました。でも今回、辰巳さんがセッション前の打ち合わせでちょっと歌ってくださった時に、もうaikoさんの「ボーイフレンド」とはまったく別物だったんです。辰巳ゆうとさんが持つ、スコーンと抜けるような、よく通る声で歌ってくださっている。だったら私は、aikoさんが持つエッセンスというか、ちょっと小悪魔的な…つかめない女の子の要素を入れたほうが面白くなるんじゃないかと思ったんです。そういう化学反応を期待して、aikoさんの要素を取り入れつつ歌ってみました。

──それはすごく伝わってきました。辰巳さんのパートとのコントラストを考えながら、アルノさんの中でいろいろなアプローチを探して、それを当てていったということなんですね。
中西アルノ:そうですね。いろいろやる中で、相手が持つものに寄り添っていくのがいい時もあるし、相手が持っているものと真逆に行くことで、違う景色が見える時もある。どっちもすてきだし、素晴らしいなと思うんです。これは『Spicy Sessions』を続けてきたからこそ、自分の中に出てきた視点だと思います。
──『Spicy Sessions』って、収録を観ているだけで、ルーツに対する解像度も上がりますし、楽曲に対する解像度も上がるんですよね。
中西アルノ:私も同じことを思います。この番組で鍛えられて、ものすごく視野が広くなっている実感があります。

──「天城越え」では、黒沢さんもこぶしを入れていましたね。
黒沢薫:入れました。あれは辰巳くんと歌って、辰巳くんが入れてきたので、「これは入れないと」と。今回の「天城越え」は、「俺はゴスペラーズではない」と思って歌いました(笑)。新人演歌歌手だっていう気持ちで歌っていますから。苦節何年、メジャーデビューまで時間がかかった新人演歌歌手、みたいな(一同爆笑)。とても楽しかったし、収録を見に来ていたボイストレーナーの知り合いに「黒沢さんは演歌を歌った方がいい。演歌デビューをした方がいい」と、お褒めの言葉を頂きました。本当に辰巳くんがすごく引き上げてくれたんです。歌っていて、「あ、こういうふうに歌えばいいんだ」って見本を見せてくれるから、それをなぞっていくと、「演歌、歌えてる、俺!」っていう感じ(笑)。キーが一緒だったらアルノさんにも歌ってほしかった。

──アルノさんは隣で聴いていて、『Spicy Sessions』で演歌を歌ってみたいと思いました?
中西アルノ:思いましたね。黒沢さんが演歌を歌われるのは初めて見ましたけど、辰巳さんと一緒に歌われている時に、辰巳さんの隣でいろいろつかんで、それを自分の懐に入れているというか。そういう姿を見ていたので「あ、手数って、こうやってどこまででも増やしていけるんだな」って思ってました。
黒沢薫:やっぱり勉強になるよね、本当に。演歌には独特の表現法があるもんね。
──「天城越え」の最後の絶唱も、ユニゾンがぴったり重なっていました。
黒沢薫:ぴったりユニゾンはね、ここにいる、中西アルノさんから学んでいるので(笑)。アルノさん、本当にうまいから。ゴスペラーズでは、どちらかというと、ユニゾンしながらも自分を曲げない、というやり方なんだけど。他とはちょっと違うやり方。

──マイクリレーで次に受け渡す時も、自分の色を出したまま渡しますしね。
黒沢薫:そう。そうじゃなくて、ちゃんと寄り添うことも必要だなと思うのは、中西アルノさんを参考にしてやらせていただいてます(笑)。
──アルノさんのソロ歌唱について伺います。あいみょんさんの「恋をしたから」を選んだ理由について、MCでも「言葉を届ける歌を歌っていきたい」とおっしゃっていました。そうを思うようになったきっかけは?
中西アルノ:それこそ『Spicy Sessions』でたくさんの音楽を聴いてきて、自分自身、音楽が大好きですけど、もう1個ステップアップしたいって思って。「じゃあ、自分はどういう歌を歌いたいんだろう?」って考えたんです。そうしたら、人の胸に届くような、聴く人にとって、身に覚えのあるような、とても身近なことを歌いたいなって思うようになって。今まで自分が歌ってきた曲もそうですし、ここで本当にいろいろな曲を教えてもらったので、自分がやりたいことの方向性の一つとしてこの曲を選びました。昨年の「Spicy Sessions -THE LIVE-」にゴスペラーズの村上(てつや)さんがいらっしゃっていて。その時私に、「すごく歌詞が聴こえた。それってすごいことだよ」って言ってくださったんです。それを自分の一つの強みというか…歌詞がしっかり聴こえるなら、もっと届けられるんじゃないかなって思うようになったんです。究極は、しゃべるみたいに歌うというか、しゃべっているようにさえ聴こえるような歌を、自分の中でやってみたいなと思っています。
黒沢薫:まさに「シング・ライク・トーキング」ですね。自分の歌をこう届けたいっていうのがあるから、バンドにもそこを伝えて、いろいろリクエストしてる。セッションって歌う人同士だけじゃなくて、バンドともするわけだから。そこはもうできていると思うんです。でもね、この前番組のプロデューサーが、すごいことを言っていて。「お客さんともセッションしたいですね!」と。え、どうするの? と思ったんですけど、さっそく次の回(10月17日放送)で形になって、お客さんと一緒に盛り上がったので、それにも期待してほしいですね。
■『Spicy Sessions with辰巳ゆうと』
9月26日(土)午後11時30分~深夜0時30分

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