KAZ(GENERATIONS/数原龍友)のルーツが躍動した名曲セッション 黒沢薫&中西アルノと挑んだ『Spicy Sessions』

CS放送「TBSチャンネル1最新ドラマ・音楽・映画」にて毎月放送中、ゴスペラーズの黒沢 薫と乃木坂46の中西アルノがMCを務める音楽番組『Spicy Sessions(スパイシーセッションズ)』。8月22日(土)夜11時30分からは『Spicy Sessions with KAZ(GENERATIONS/数原龍友)』が放送される。今回、ゴスペラーズをデビュー当時からよく知り、数々のアーティストのオフィシャルライターを務める音楽ライターの伊藤亜希氏によるオフィシャルリポートが到着した。
『Spicy Sessions』は、ゲストのルーツや音楽観を掘り下げながら、生バンドとともにその場でセッションを作り上げていく音楽番組。歌割りやアレンジをゲスト、バンドと話し合い、音楽を立ち上げていく過程から見せることが、この番組ならではの魅力であり、そのシーンが楽しみという番組の熱心なファンも多い。
第29回は、GENERATIONSのボーカリスト・数原龍友が、ソロアーティスト・KAZとして出演。黒沢との面識は、音楽番組で顔を合わせた程度、中西とはほぼ初対面という中で、3人はどんな音楽を作り上げるのか。KAZの音楽的ルーツをたどりながら、その歌声の現在地に迫る収録となった。
MCに呼び込まれてKAZが登場。「憂鬱な朝。そんな時に自分を高めるのが音楽だった。皆さんの朝をすてきにできるようにと思って作った」と紹介し、アコースティックギターを弾きながら披露したのは、ソロ曲「Beautiful Sunrise」。2000年代以降のサーフミュージックを思わせるアップチューン。リズムを捉えながら、フレーズによって声の強弱やニュアンスを細やかに変えていく歌唱に、観客も手拍子で参加しながら聴き入る。グループのボーカリストとして培ってきたものと、自らの音楽を追求するソロアーティストとしての感覚。その両方を見せる歌唱だった。

KAZは『Spicy Sessions』での黒沢、中西の歌唱映像を見かけたことをきっかけに、出演してみたいと思ったという。番組について語るKAZの言葉から、ここで繰り広げられてきたセッションに惹かれていたことが伝わってきた。

トークでは、改めてKAZの歩みを振り返る。2012年にGENERATIONSのボーカルとしてデビューした彼は、2019年に「Nostalgie」でソロ活動をスタートさせた。2024年にソロ名義を“KAZ”とし、アメリカで制作したオリジナルアルバム『STYLE』をリリース。さらに47都道府県を巡る『KAZ Acoustic Live』を開催するなど、自身の歌を追求してきた。そのルーツを黒沢が中心になり、丁寧にひも解いていく。
親が好きだった影響で、物心がついた頃には家でEXILEの音楽が流れていたというKAZ。やがてR&Bやヒップホップへとたどり着いた。Brian McKnight、BOYZ II MEN、K-Ci&JoJoなど、KAZの口から次々とアーティスト名が挙がっていく。事務所からEXILEのルーツとなった楽曲が収められたiPodを渡され、そこからさらに音楽を掘り下げていったというエピソードも明かされた。自分が好きな音楽を聴くだけではなく、自分が歌う音楽の源流をたどっていく。そんなKAZの音楽との向き合い方を知ったところで、最初のセッションへ。
KAZが黒沢とのセッション曲に選んだのは、Marvin Gaye「What’s Going On」。彼がオーディションの課題曲として歌った、思い入れのある1曲だ。この曲が生まれた背景に触れ「今の時代に選曲すべき曲ですね」と言った黒沢。KAZは「いろんな想いが詰まっている。爽やかに歌うことで、メッセージ性がより強くなる」とコメント。
スタッフから譜面が配られると、KAZ、黒沢、バンドメンバーが歌割りやアレンジについて話し始める。「せっかくなのでKAZさんに歌割りをお任せしちゃおうかな。言うことを聞きます」という黒沢の言葉に「えぇ! 大先輩!」と恐縮するKAZ。そんな会話に観客もリラックスしていく。

歌割りの最中に、黒沢が“こんな感じ?”とばかりに軽く歌う。「やばいですね。上がりますね!」とKAZ。ここで黒沢から中西へ、コーラスでの参加を提案。急な展開に中西が素直な反応を見せると、会場に笑いが起こる。中西はこの後、楽譜をのぞき込み「1Bの後半のところからですか?」と確認。話が早い、というような表情で黒沢が頷く。歌唱前「適当にやるけど、あまり気にしないで」という黒沢の言葉に「スパイシーだな~!」とKAZ。この日だけの「What’s Going On」が形になっていった。
歌い終えた後、KAZが「感慨深いですね。(この曲を)初めて人前で歌ったんで」としみじみ。原曲へのリスペクトを土台にしながらも、単なる再現にはならない。互いの歌を聴き、その瞬間に生まれたニュアンスを受け取りながら、次のフレーズへとつないでいく。KAZのルーツにあった1曲が、黒沢、中西、バンドとの出会いによって、新たな表情をまとう。まさに『Spicy Sessions』という番組の在り方が提示されたセッションだった。

続いて、KAZと中西によるセッション。KAZが選んだのは古内東子「誰より好きなのに」だった。「女性の気持ちを知るために女性アーティストを聴いた」というKAZ。女性アーティストの曲を聴いていく中で「愛が生む幸せと憎しみは表裏一体」と思ったと話す。KAZの選曲に「古内東子さんは、アルノさん声合うよね」と黒沢。KAZも「そういう印象でした」と続ける。中西は「女の子のもどかしい気持ちをKAZさんが歌ってくれることにびっくり」と、選曲の感想を伝える。

本番。イントロでステージの照明がパープルに変わる。KAZと中西、それぞれの声の個性が鮮やかに浮かび上がった。R&Bを自身の根として持ち、艶っぽい歌声でフレーズを運んでいくKAZ。

一方の中西は、言葉とメロディーを丁寧にすくい上げながら、楽曲の切なさを透明感のある歌声で描き出していく。2人の声が交わった瞬間に新しい景色が生まれる。古内東子が描いた恋の情景に、新たな陰影が生まれていった。間奏でのバンドの美しい転調も、聴き逃せないポイントだ。

今度は黒沢から「KAZさんと一緒に歌いたい」とリクエストが。その曲は、中西保志の「最後の雨」だった。MCの中西は「『最後の雨』は、『Spicy Sessions』でずっと聴きたいと思っていて。念願がかなってうれしい」とコメント。同曲をKAZ自身もカバーしており、そのバージョンを聴いて黒沢がセッション曲に選んだのだと言う。歌割りはKAZが担当し、「最後の雨」が披露された。

歌唱後、「歌い手のアプローチの違いが明確になって。KAZくんのちょっとリズムを後ろに置きに行くのも良いし、僕は中西さんリスペクトでがーっと歌っていって」と黒沢が振り返る。中西は「黒沢さん印、KAZさん印がちゃんとあって。でもユニゾンもハモもぶつかることがない」と目を輝かせながら感想を話し、最後にこう締めくくった。「ぜひ音源化してほしい」。この言葉に観客からも大きな拍手が起こった。同じメロディーでも、歌い手が変わればその表情が変わる。そして異なる個性を持った歌い手が互いの声を受け取り合えば、そこに別の音楽が生まれる。KAZというボーカリストの個性を改めて浮き彫りにすると同時に、黒沢との声の相性を存分に味わえるセッションとなった。
この日、最後は中西のソロ歌唱コーナー。選んだのは松田聖子の「SWEET MEMORIES」。ベーシストがウッドベースに持ち替え、特別なアレンジで中西が歌い始める。息を飲んでその歌声を追いかける観客。スタジオが“BLUE NOTE TOKYO”や“Billboard Live TOKYO”のような空間に変わっていく。空間を司る歌声。中西の歌唱、そして楽曲に対する解像度が、『Spicy Sessions』を通して何段階も上がっていることを実感させるパフォーマンスだった。「大人~!」と言いながら中西に歩み寄る黒沢。「声を張るのを封印。それに合わせたバンドの大人な演奏」と、黒沢が中西とバンドにそれぞれ賛辞を贈った。

今回も音楽の魅力をさまざまな角度から示した『Spicy Sessions』。そして、2度目の開催となる番組発のライブイベント「Spicy Sessions -THE LIVE- 2026」についても、先日詳細が発表された。2026年10月20日(火)に、TACHIKAWA STAGE GARDENで昼と夜の2公演が行われ、昼公演に松崎しげる、私立恵比寿中学の真山りか&安本彩花、夜公演にK、家入レオがゲスト出演する。目の前で生まれる音楽に気持ちが高まる、『Spicy Sessions』らしいステージに期待したい。
■『Spicy Sessions with KAZ(GENERATIONS/数原龍友)』
8月22日(土)夜11時30分~深夜0時30分
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