現役東大生芸人・いぜんと潜るガチ中華紀行――「牙籤肉」「焼猪腰」「錫紙龍蝦尾」これ読めますか?

北京都人、襲来
――最近、女子の間で麻辣湯(マーラータン)が流行っていると思うんですけど、日本人からすると「食べてみたいけど、頼み方わかんねえ!」っていうことも多くて。
いぜん:確かに。この前、後輩芸人と一緒に行ったら、メニュー見て「您想要什么样的面?(麺の種類はどうしますか?)」って聞かれて「え……?」ってフリーズしてた(笑)。
――それそれ! しかも、辛さを選べたり、トッピングを選べたり、カスタム自由すぎてパニックになりがちなんですよね。
高:確かに。ガチ中華のお店はお客さんも店員さんも全員中国人だから、入るだけで「え、ここ場違いじゃない?」って不安になる人も多い気がする。
――なんか、初心者でも頼みやすいコツとかってあります?
高:中国人の友達と行くのが一番ですけど、最近はQRコードとかで注文できるお店とかも増えてきましたし、比較的頼みやすくはなった気がするんですよね。
いぜん:まあ、中国語がわからなくても、店員側は歓迎している立場なので、「おすすめは何ですか」とか聞いちゃってもいいと思います。中国人はみんな基本的に距離感が近いから、おすすめを聞いたら絶対喜んで話始めると思います(笑)。
――ちなみによく行くガチ中華の店とかあります?
いぜん:火鍋なら「海底撈火鍋」ですね。中国本土でも結構有名なチェーン店ですし、初心者にはおすすめです。東京だと新宿、上野とかにもあります。そこだったら日本語でも全然コミュニケーション可能ですし。
高:あとは、中国のSNSの「小紅書(レッド)」とかを活用してみるのもおすすめです。私もお店探す時によく使います。
――中国版Xみたいな感じ?
高:はい。InstagramとTikTokとXが混ざってるみたいな感じですかね。
いぜん:あとは、行ってみるのみですよ! 飛び込んじゃえばね、美味しいガチ中華の世界が広がっていますから。
――というか、せっかくなので好きなものとかあれば頼んでください。ここのフードコートは色々な地方の飲食店が集結しているらしいですよ。
高:本当だ。広東から東北から上海とか……。
いぜん:おい、北京ねえじゃん。やっぱり、北京差別じゃん!
――そ、そんなでかい声で……!
いぜん:いや、これは大丈夫。北京ジョークだから(笑)。
高:北京の人って、日本でいう京都人みたいな感じでプライド高めなんですよね。基本偉そうな感じだから、いじられることも多いです。
いぜん:そうそう! で、上海は東京っぽくて、北京人からすると「あいつら外国人に媚びすぎ」ってなります。もっと中国人であるプライドを持ってほしいなと。
――なるほど、関西vs東京みたいな構図?
いぜん:はい。お笑いだと、日本の関西にあたるのは中国だと東北地方かな。方言も面白いし、コント文化が根付いてるから。
高:漫才は天津が強いですね。中国の新喜劇なら東北、お笑いエリートなら天津って感じ。
――気を取り直して、注文しましょうか(笑)。
いぜん:うーん、「牙籤肉(ヤーチァンロー)」とかおつまみとかにちょうどいいと思います。ちょうど一口サイズの羊のお肉です。
――え、すごい! ザリガニもありますね。
いぜん:おお、ザリガニ好きです!

現地ではザリガニ料理専門店が軒を連ねるほどの大人気グルメで、
その味わいはエビに似ており、特に濃厚なミソの香ばしさが魅力。
高:ずっと前から四川省の方で夜食としてすごい有名だったのが、ここ10年ぐらいで他の地域に広がっていった感じです。ちょっと辛めの味付けが主流かな。
いぜん:そういえば、私が日本に来てすぐの頃に、ベランダを見たらザリガニが4匹ぐらいいたことがあって。
――いや待って、怖すぎる。
いぜん:4階に住んでるから登ってこられるわけないし、海とかも近くねえしみたいな。だから、隣の人に手紙で「すみません。ザリガニの忘れ物とかしましたか?」って聞いたりしたんですけど結局理由はわからずじまいで。
――そのザリガニってどうなったんですか?
いぜん:可愛かったので、食べないでちゃんと飼いました。名前は全員ニニです。
高:ニニ?(笑)
いぜん:ザリガニのハサミがどっちもピースしてるから、ニニ(笑)。
――他に、おすすめありますか?
いぜん:これかな。今日バレンタインだしね。
高:ああ、これは確かに(笑)。
いぜん:草食系な日本人男性には、「焼猪腰(カオジュウヨ)」がおすすめです。豚の「マメ(腎臓)」でキドニーと言うんです。栄養をつけてもらって、今夜は頑張ってくださいってね。
高:味は、レバーに近い感じでちょっと生臭いかも。まあ、人によって結構好みがあるかもしれません。
いぜん:多分「味」を一番感じる内臓ですよね、やっぱり集まってるというかね(笑)。
――お、料理きましたね。この「牙籤肉」は、爪楊枝で食べるんですかね。
高:そうです。味付けはすでにつけている状態なのでそのままパクっと。ちなみに「牙籤」は、中国語で爪楊枝という意味なんですよ。
――これは、どこの料理なんですか?
いぜん:これは結構どこの地域でもよく食べられている大衆的なおつまみですね。
――あ、美味しい。全然癖とかなくて食べやすいですね。今後、ガチ中華のお店に行って食レポするみたいな仕事とかも増えるような気がします。
いぜん:実はもう考えていたりします。シメの一言で「美味しいぜん!」とか言おうと思ってました。色々な分野に進出したいので、先回りして色々考えてます。ドラマとかもね、いつか……っておい、ザリガニ私のニニじゃねえかよ!
一同:あははは!
いぜん:ニニの食べ方って結構コツがいるんですよ。手袋をつけて、ここをちょっと引っ張って……どうですかね。
――おお! すごい!
いぜん:まあ、ザリガニ検定とかもあるぐらいですし。
――へえ〜! そうなんだ、知らなかった。
いぜん:ああ、いや、すみません。これ北京ジョークです。
――ボケって言われなかったら、私みたいな中国初心者は「そうなんだ!」ってなっちゃいますよ!
いぜん:あるあるですよ。それ含めて北京ジョークですから(笑)。でも、これはちゃんと本場の味ですね。
――そうなんだ。“ガチ中華”の判断基準とかあったりするんですか?
いぜん:ええ、どうですかね。やっぱり辛いものはちゃんと辛いかどうかかなあ。例えば、日本のお店で提供される激辛中華とかって辛いだけで、深みがないんですよ。
高:確かにあの人工的な辛さはエセ中華かも。本場の中華は、大量のにんにくと生姜はデフォで、さらに山椒とかクミンも都度入ってる感じなのでバランスがいいんですよね。あの味は、癖になりますよ。
いぜん:あと、中華はあんまり好きじゃない人がよく言う「油っぽい」ってやつですけど、実は上海料理は全然油っぽくなくて、逆に甘い風味だったりするんですよね。
――それでいうと、日本の町中華的なのとかって食べたりします? 炒飯と餃子のセットとか。
いぜん:いや、あんまり町中華は食べないですね。
高:というか中国では、炒飯orラーメン+餃子セットとかで食べる文化がないんです。中国では、餃子は主食という認識なんです。
いぜん:そうそう。だから、中国では餃子だけなのに、日本では急にチャーハンの隣に置いてる。もともと本命彼女なのに、日本に来たら都合のいい女みたいになってて、餃子の気持ちを考えると悲しいなと。
高:そうですね。やっぱ中国だと水餃子が定番なんですよ。
いぜん:で、水餃子は残ったら、翌日の朝ご飯として焼き餃子にして食べるんです。炒飯も同じく、前日残ったご飯で作るイメージです。
取材・文/編集部
――まだまだ続く日中女子座談会では、いぜんの恋愛観も明らかに! 続きはこちらから!
(取材は2025年2月に実施)
いぜん、プロフィール
1998年04月23日生まれ。中国・北京出身の東京NSC27期生。『千鳥かまいたちアワー』(日本テレビ系列)の出演をきっかけに注目を集めた現役東大院生のピン芸人。最近家系ラーメンにハマっている。
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