2023-09-04 06:00

すべての球団は消耗品である「#11 1984年の関根(長島)大洋編」byプロ野球死亡遊戯

すべての球団は消耗品であるbyプロ野球死亡遊戯
すべての球団は消耗品であるbyプロ野球死亡遊戯

勝っても、負けても、いつの時代もプロ野球球団はファンに猛スピードで消費されていく。黄金時代、暗黒期、泥沼から抜け出せない低迷期。ファンは、そして僕たちはいい時も悪いときもそんな刹那の瞬間に快楽を求めているのかもしれない。

本題まで少しあります 壮大なナガシマ狂想曲

80年代のプロ野球は、“E.Tコンビ”時代へ。

もちろんエッチューさんこと越中詩郎とタイガー戸口……ではなく、巨人の江川卓と原辰徳のことである。1981(昭和56)年に怪物・江川は20勝を挙げ、新人王の原はCM出演料が1年で6億8000万円だと父親が講演会でぶち上げ、藤田巨人も8年ぶりの日本一に。キン肉スグルやキン肉タツノリが登場する人気漫画『キン肉マン』は、ステカセキングと東京タワー下で戦う7人の悪魔超人編に突入。翌82年1月には松田聖子の『赤いスイートピー』がヒットして、年末に日本公開された映画『E.T.』が当時の歴代最高興行収入を記録。ちなみに目白でレンタルビデオ屋を経営していた浅野秀則は、『E.T.』でデリバリーピザが出てくるシーンを見た瞬間、ビビビッときて日本で宅配ピザ屋を始めようと思いつく。やがて出店されたのが、日本生まれのゴジラのように愛されるピザ屋を目指した『ピザーラ』である。

そんな新しい価値観とライフスタイルが芽生えつつあった80年代前半、戦後日本を体現したひとりの男の動向が注目されていた。「そのネクタイが、実は1本2000円ぐらいのありきたりのそのへんの安物であっても……。オレにとっては、それがスーパーで売っていたのか、イタリア製なのかということは問題ではない。このオレ様が気に入っているんだから、高級品なんや、という理屈である」、なんて自著で書いちゃう元近鉄のビッグワンこと鈴木啓示……のわけがなく、永久に不滅の長嶋茂雄である(なお当時は「長島」表記)。

80年秋に「男のケジメ」で巨人監督を辞任したミスターは、浪人生活中も球界復帰の噂が絶えなかった。81年正月に早くも大洋本社の中部藤次郎社長が「ナガシマ君を大洋入りさせたい」と宣言。『週刊ポスト』では「『長島茂雄は早くユニフォームを着ろ』大洋入団決定か!」ってみんな張り切って飛ばしすぎだよっ!“キャノンボール”堤義明率いる、金満新興球団の西武ライオンズに天下のミスタープロ野球を奪われたらセ・リーグの恥だと、セの巨人以外の各オーナーが団結。81年9月3日付スポニチは「大洋を選択・長島」と大々的に報じ、横浜球場の年間指定席には予約が殺到。地元では派手な新聞広告や署名運動にまで発展して、「長島茂雄氏を横浜大洋に招く会」まで設けられた。

もはや、81年秋には就任決定的という雰囲気も、アメリカの大リーグ視察旅行から帰国したミスターは、大洋監督を引き受ける意思のないことを球団側へ伝えたのだった。それでも、重役の久野修慈が水面下で動き、大洋新監督には巨人長島政権時の参謀役を務めた関根潤三を据える。その就任会見では、関根本人が「ナガシマ君が大洋にくるといえば、いつでも彼に(監督の座を)お譲りする」なんて異例のラブコールだ。過去に例がない繋ぎの人事、超ワンポイント監督がここに誕生したのであった。

「ボクは長島君が監督に就任してくれるまでに、チームを少しでもよくしておくのが役目。オープン戦を入れて150試合かけて、大洋というチームを長島さんに見てもらう。そして秋にはミコシを上げていただく」

あくまで、かませ犬的な“第二の男”に徹する仕事人・関根だけでなく、旗揚げしたばかりの大洋OB会も「大洋をよみがえらせてくれるのはミスター以外にない」と衆議一決。まるでUインター時代の髙田延彦のようにみんなで最強・長島神輿を担ぐ気満々だ。本命監督を待ったまま開幕した異例の82年シーズン中もナガシマフェスは続いた。開幕直前の『週刊宝石』82年3月20日号は「長島大洋内閣の顔ぶれが密かに決定!」と関根をヘッドに土井正三、秋山登らの入閣をスクープって、だからみんな強引すぎるから!強引と言えば、3月30日に横浜スタジアム左翼側スタンドに地元有志による「Mr.90 COME BACK」と書かれた看板広告が姿を現す。さすがにいきすぎということで球団から中止の要望が出され、「Mr.90……」だけ残したが、4月1日には全撤去された。

――まだまだ続くインタビューは、発売中の「BUBKA10月号コラムパック」で!

中溝康隆なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)|1979年、埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。ベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)など著書多数。『プロ野球新世紀末ブルース 平成プロ野球死亡遊戯』(ちくま文庫)が好評発売中!

キヨハラに会いたくて 限りなく透明に近いライオンズブルー Kindle版
Amazonで購入

BUBKA(ブブカ) コラムパック 2023年10月号 [雑誌] Kindle版
Amazonで購入

Twitterでシェア

MAGAZINE&BOOKS

BUBKA2025年5月号

BUBKA 2025年5月号

BUBKA RANKING23:30更新

  1. SKE48荒井優希、伊藤麻希選手のベルトに初挑戦するも完敗
  2. SKE48荒井優希、山下実優選手とのシングルマッチ!試合に集中しメンバーの存在は「すっかり忘れていました」
  3. SKE48荒井優希、宮本もか選手とのタッグで準決勝進出「この勢いで次の試合でも頑張りたい」
  4. エレガントな装いの乃木坂46池田瑛紗が華を添える「JRA70周年特別展示『世界一までの蹄跡』」9月20日より開催
  5. SKE48荒井優希、プロレスデビュー5戦目で初勝利
  6. SKE48荒井優希&赤井沙希、プリンセスタッグ第10代王者のベルトを手にして号泣
  7. SKE48荒井優希&山下実優組がアジャコング&宮本もか組に勝利!!リング上ではSKE48のミニライブも
  8. マジカルラブリー・野田クリスタル「ネットを疑え!」“マッチョ芸人”が語る、忙しい毎日でも成長する体づくりの心構え
  9. 【プロ野球】気鋭の中日ファン“赤味噌”が立浪ドラゴンズを語りに語る!「中日が久しぶりに強いところを見たいんです」
  10. SKE48荒井優希、Finallyで渾身のフォール勝ち
  1. 「笑う門には姫奈がいる」乃木坂46 岡本姫奈、祝22歳! 挫折を乗り越え、光る坂を駆け上がって掴んだ連続選抜の道のり
  2. 乃木坂46 池田瑛紗、“推しメン”を公言の後輩と“推し作品”の展示会へ「これはデートですか⁉」「初号機と戦えるビジュアル」
  3. 乃木坂46“魂”のアンダーライブ特集インタビュー|TBSテレビプロデューサー・竹中優介「乃木坂46って選抜が一軍、アンダーが二軍なんじゃないです。一軍が2つあるんです」
  4. 【卒業セレモニー】櫻坂46 井上梨名「“チーム櫻坂”ならどのメンバーも輝ける、そんなグループになっています。それは私が証明していると思います」
  5. 乃木坂46“魂”のアンダーライブ特集インタビュー|五百城茉央が語る”純粋”とは? 「この世界って、いろんな人の言葉を聞くことがあるじゃないですか」
  6. オードリー春日×サトミツ×松田好花の三人相撲、再び!? 日向坂46卒業後の松田がさらに「ありのままの自分」をさらけ出す『春日ロケーション』復活に期待大
  7. 乃木坂46“魂”のアンダーライブ特集インタビュー|林瑠奈×矢久保美緒、「過去に固執するなと言われたら、それはその通り」アンダラの変化に抗おうとした過去を語る
  8. 櫻坂46『Buddies感謝祭 2025 EX』開催! 出張ラジオ企画×ライブパートで観客を湧かす
  9. 乃木坂46“魂”のアンダーライブ特集番外編|アンダラに注入された”違う成分”とは? 全メンバー取材から見えた変化を考える
  10. ラフ×ラフ初のアルバム発売!齋藤有紗「“円盤化”本当にうれしい…ドキドキとワクワクが止まらない」

関連記事